ニベ、アラ、ハタ、クエなど、海底近くに棲息する大型で白身の魚。身だけでなく、ホホやクチビルなど頭部分、内臓も使う
部位ごとに分け、それぞれに塩をしてゆでたり塩水でゆでる。冷水で冷ました後、切って盛りつける
ネギや、もみじおろしなどの薬味と一緒に、三杯酢で食べる。添えられていることが多い、竹田特産のカボスを絞って食べても美味しい
「このあたりは竹田の城下町で、『うおん棚』、その後『魚町』とも呼ばれていました。今は静かですが、魚屋が並ぶにぎやかな通りだったんですよ。うちも岡藩の時代から商いを始め、魚屋を営みましたが、祖母の時代から、食堂になりました。食堂になってから私で3代目なんです」。
店主・友永修治さんは、大阪・京都で修行して1996年に竹田に戻り、『友修』の暖簾を守られている。『頭料理』についてうかがった。
「昔、海で獲れた魚は山間の竹田まで、馬や馬車で運ばれてきました。小さい魚はそのままではすぐに傷んでしまいます。当時、魚と言えば、きつく塩をしていたのです。刺身のことを『無塩(ぶえん)』と呼んでいたくらいですからね。傷みにくく、塩をしないで届く大型の魚は大変貴重なものでした。生で食べられる部分もありましたが、生で食べられない部分もありますし、身以外の部分も捨てるにはもったいない。それで“生で食べられないところをどうやって食べようか。身以外の部分をどうやって食べようか”ということから生まれたのが『頭料理』なんです。胃袋、浮き袋、肝臓、腸、クチビルなど、普通は食べない部分も、ゆでて三杯酢などで食べるようになったのです。骨とウロコ以外はすべて食べてしまう感じですね。アゴの内側の皮、口のまわりの身、アゴの下の身、クチビルなど、“頭”がメインの料理でもありますね。そして『頭料理』は、元々は魚屋さんが作っていたものなんですよ。私の祖母の時代くらいまでは、とてもごちそうだった料理ですが、昔に比べれば食べることも少なくなりました。今、竹田の街で『頭料理』を作れる人は10人くらいではないでしょうか。昔も今も、大型の底物の魚(海底付近にいる魚)を使うのですが、ばらし方が部位ごとに違いますし、ばらす技術が必要です。さらに部位ごとにゆでる時間も違いますね。『頭料理』に使える魚は、アラ、クエ、ハタ、キョウマス、ニベなどで、どれも白身の魚です。今は、ほとんどがニベですね。ちなみに、10kg以上のでかい魚の方が仕事はしやすいですね。小さくても大きくても手間は同じですから。小さい魚は全部の部位が小さいし。魚の仕入れの関係もあって、3日前までに、できれば1週間くらい前までに予約をいただくのが確実ですね」。
厨房で、それぞれの部位や、ゆで方についてのお話もうかがった。
浮き袋、胃袋、白子、真子、あごの肉、エラ、あごの下の肉や腹の身…解体したものだけを見ても、どんなものになるのか想像がつきませんよね(笑)。ウロコがついている部位と、ついていない部位に分けて、ウロコがついていない部位から先にゆでます。ウロコがついている部位は、ゆでている最中にウロコがはがれて鍋の中に漂ってしまうからです。
身の部分はカットして、塩をしてからゆでますが、それ以外の部分は塩水でゆでます。
その他、真子は、そのままゆでると弾けてしまうので、巻きすを巻いてゆでますし、エラは網にのせた状態でゆでます。それぞれに、ゆで方が違うんですよ」。
さらに、ゆでる時間も部位ごとに異なっている。
「真子は10分くらい、皮は、ゆで過ぎるとドロドロになってしまうので、さっとゆでるぐらいですね。浮き袋はゆで過ぎると溶けてしまうので、透明になるくらいまでほどよくゆでます。完全に火を通すことは必要ですが、どの部位も程よいゆで方があるんです。
ゆでた後は、水にさらし、冷水で冷やします。
この時、ウロコがついているものは水の中でウロコを取り除きます。
そして30分ほど冷蔵してから切ります。ゆでてすぐのものは切りにくいのです」。
皿に盛付けられた『頭料理』に特製のポン酢をつけて食べた。コリッ、シコシコ、プニュ…どれも不思議な食感だ。
「昔から『頭料理』は、醤油、酢、みりんで作る三杯酢で食べられていました。三杯酢のことを『御三品(ごさんぴん)』と呼んでいたようですよ。私がこちらに帰ってきてからは、ユズと竹田の特産品であるカボスを使ったポン酢を添えています。ネギと、もみじおろしも一緒にどうぞ! カボスは秋に何百kgも仕入れ、自分たちで絞って、絞り汁を冷凍しています。使う直前に解凍して、カツオや昆布を漬け込んだ醤油と合わせています。だから、より香りもいいですね。『頭料理』は部位ごとに、それぞれ異なる食感を楽しめる料理です。
浮き袋はコリッとするけど、噛んでいるうちに溶けてなくなりますし、皮の部分はゼラチン質、“マツゲ”とも言われるエラの部分のコリコリした食感もおもしろいですよね。アゴの内側の皮など、独特の香りや味わいがする部位も、つまみには最高ですね。私は、見た目が苦手で子どもの時はあまり食べていませんでしたが、真子だけは好きでしたね。焼酎が飲めるようになってから、つまみになるいい料理だなと思うようになりましたよ」。
ニベなど底物の大型魚をばらし、浮き袋、胃袋、白子、真子、あごの肉、エラ、あごの下の身や腹の身などあらゆる部位を使う
各部位を程よくゆで、氷水にさらして冷蔵した後、切って盛りつける。身は塩をしてゆでるが、その他は塩水でゆでる
ユズ、竹田特産のカボス、醤油などを使った特製ポン酢で食べる。ネギと、もみじおろしの薬味も付く
地元の食材を中心に使った日本料理がベースの店だが、ランチ営業もあり気軽に利用できる。人気メニューは、えのはの塩焼き・背ごし・唐揚げ(各630円)。竹田の清らかな水と厳選したそば粉を使った、手打ち蕎麦(630円〜)も美味だ。『頭料理』はユズ、カボス、醤油などを合わせた特製のポン酢で食べる(要予約・要問合せ)。
住所 | 大分県竹田市竹田町284 |
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電話 | 0974-63-2254 |
営業 | 11:30〜14:00/17:00〜OS21:00 |
休み | 不定(月曜か火曜のことが多い) |
席 | 101席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.tomosyu.jp |