九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

出汁

『雉子めし』をつくる時、雉子ガラから出汁をとることが欠かせない。鶏ガラとは異なる雉子ならではの濃厚な旨味を持つ

具材

雉子肉以外の具材としては、しいたけ、ニンジン、タケノコ、ゴボウなどが一般的。コンニャクや油揚げを使うこともあるようだ

作り方

雉子ガラ出汁を甘辛く味付けし、具材を煮込む。その具材を米と一緒に炊く作り方と、炊いた白ごはんと混ぜ合わせる作り方がある

語り へ屋傳六 井上孝親の「雉子めし」

店主・井上孝親さん

国道212号線を走り、奇岩や紅葉で知られる中津市耶馬渓町に入ると、国道沿いに『へ屋傳六(へやでんろく)』への案内看板が見える。国道から少し西側に行くと趣のある店舗。迎えてくださったのは店主・井上孝親さんだ。
「私たちは、佃煮屋から始まりました。25年ほど前から、母が作っていた味をベースにしたちらし寿司の素、釜めしの素、巻柿、栗や柿を使ったゼリーなども手がけるようになったのです」。

店内には、五目ちらしをはじめとした5種類のちらし寿司の素、しいたけやアユなど十数種類の佃煮が並ぶ。巻柿は種やヘタを取り除いた干し柿を巻き重ね藁で包んだもので、この地で500年以上の歴史を持つお菓子だ。そして、釜めしの素は浅利、地鶏、松茸、雉子の4種類だ。

『雉子めし』の素をはじめとした釜飯の素

「『雉子めし』はとても美味しいものですから、たくさんの方に食べていただきたいと思ったのが作るようになったきっかけです。私も食べたいですから(笑)」

『雉子めし』の素づくりは、雉子出汁をとるところから始まる。
「さばきかたなどは鶏と特別に変わりません。ガラを弱火で半日ほどじっくりと炊いて、ガラ出汁をとります。鶏ガラスープを作る時と同じようにアクを丹念にとることが大事ですね。このガラからいい出汁が出ます。出汁だけでも美味しいですよ(笑)」。

出汁を味付けし、具材を煮込む。
「雉子出汁にカツオ出汁を加え、砂糖、みりん、薄口醤油、日本酒を合わせた煮汁で雉子肉、タケノコ、しいたけ、ニンジンを煮込みます。タケノコは食感がいいですし、ニンジンは彩りを華やかにします。しいたけからは出汁も出ますね。重量と塩分をチェックしながら1時間半ほど煮込んでできあがりです。200〜300人前を作れる大きな釜で大量に作ることも美味しさの秘密ですね」。

その後、袋詰めして高温殺菌すれば完成だ。美味しい作り方・食べ方を教えていただいた。
「お米2合を研いで通常の水加減で仕込み、そこに1パックを加えて炊くだけです。具材を少し追加しても美味しいですね。『雉子めし』としての香りを損ねない、油揚げなどがおすすめです。雉子肉は鶏肉とは味わいがまったく異なります。クセがなくてさっぱりとしながら旨味の強い味わいですね。『雉子めし』でも感じていただけると思います」。

雉子肉にクセがないからこそできる『雉子酒』のお話もうかがった。

「雉子肉を炙って酒に入れて飲む、『ヒレ酒』ならぬ『雉子酒』という飲み方があるんですよ。中には生の雉子肉を酒に入れて飲む方もいらっしゃいますね。かつて、雉子は希少で高価なものでした。山の中にいるのですが、簡単には獲れないんですよ。年に一度食べれるかどうかでしたね。鶏も祭りの時などしか食べることはできませんでしたが、雉子は鶏よりもさらに食べられないものでした。肉を醤油に漬け込んで焼いて食べたりもしていましたが、雉子料理の中心は『雉子めし』だったと思います。昔食べていたものは野生の雉子でしたが、今は養殖された雉子を使っていますね。私たちは常に、お客様に喜んでいただける美味しいものを作りたいと思っています。『雉子めし』もそんな想いから生まれたものですから」。

『雉子めし』の素を使えば誰でもどこでも簡単に『雉子めし』を食べることができるが、昔は雉子はなかなか食べられない貴重な食材だったのだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

出汁

雉子のガラを弱火で半日ほどじっくりと炊いて出汁をとる。鶏ガラスープを作る時と同じようにアクを丹念にとることが大事とのこと

具材

具材は、雉子肉、食感がよくなるタケノコ、いい出汁の出るしいたけ、彩りが華やかになるニンジン

作り方

雉子出汁にカツオ出汁を加え、砂糖、みりん、薄口醤油、日本酒を合わせた煮汁で具材を煮込む。この“素”と仕込んだ米に入れて炊く

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へ屋傳六簡単に食べられる『雉子めし』の素

佃煮屋から始まったというお店にはしいたけやアユなどの佃煮をはじめ、ちらし寿司の素、釜めしの素、干し柿を使った菓子『巻柿』(9〜4月販売)などが並ぶ。『雉子めし』の素は雉子のガラ出汁をベースにした甘辛い煮汁で雉子肉、タケノコ、しいたけなどを煮込んで作る。この素をごはんを炊く時に加えるだけで『雉子めし』を簡単に楽しむことができる。

『雉子めし』の素(2合用) 865円(税込)を使って炊いた『雉子めし』。米2合を普通の水加減で仕込み、素を1袋加えて炊くだけだ
『雉子めし』の素865円(税込)、『松茸めし』の素1080円(税込)、『地鷄めし』の素540円(税込)、『浅利めし』の素540円(税込)
新商品である『黒豚 極上の肉みそ』865円(税込)。そのままでもつまみになるが、パスタやお茶漬けにのせたり、おにぎりの具にしても美味
干し柿を使った『巻柿』(9〜4月の販売)は1本1945円(税込)
店内では商品販売のみが行なわれている。しいたけ佃煮、鮎佃煮、木くらげ佃煮、鮎佃煮など佃煮はすべて325円(税込)
お店は近くに山国川が流れる静かな位置にある

へ屋傳六(へやでんろく)

住所 大分県中津市耶馬渓町小友田338-1
電話 0979-27-8855
営業 10:00~17:00
休み 水曜
カード
駐車場 あり
URL http://www.heyadenroku.com/
※記載した内容は2016年6月20日現在のものです。
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