九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

料理する前に三枚におろしておく。ウロコはないが、表面の皮をはがさないように丁寧にさばくことが必要だ

タレ

いわゆる天ぷらのツユではなく、醤油ベースの甘辛いタレが使われる。作り手の個性と工夫が一番現われるところだ

作り方

さばいて適当な大きさに切った太刀魚の身に衣をつけて油で揚げる。それをごはんの上にのせてタレをかければできあがりだ

語り 道の駅たのうら お食事処 たばくまん 高上慎二の「太刀魚丼」

高上慎二さん

2003年にオープンした『道の駅たのうら』。敷地内には、『物産館 肥後うらら』『お食事処 たばくまん』、魚屋などが併設されている。支配人の高上慎二さんにお話をうかがった。

「『たばくまん』とは“3時のおやつ”を意味するこの地方の方言で、食事や休憩をする時にも使われる言葉なんですよ。うちはオープン時から料理人はいなくて、地元のお母さんたちがすべての料理を作っています。素朴な手作り料理ですね。オープン前に『どんな料理を提供しようか』とみんなで相談しました。この地方にある昔からの家庭料理をひもといたり、地元の食材を見つめ直したり…。そんな中から生まれたのが、太刀魚を使った料理でした。おだやかな不知火海の太刀魚は美味しいんですよ。気候も温暖で海流がゆるやかな内海なので、プランクトンが多くて魚介に栄養が行き届いているようですよ(笑)」。

特産品を使った様々なメニューが並ぶ中、こちらには太刀魚を使った丼料理が4種類ある。初めは『太刀魚丼』だけだったが、『銀太刀丼』、『太刀魚重』、『太刀魚蒲焼丼』という順番で提供するようになったとのこと。すべての料理を作っていただいた。

下ごしらえされた太刀魚

●さばき方
「『太刀魚』は三枚おろしにしますが、体が長いし皮が薄いのでなかなか面倒です。強く触ると皮がはがれたり触った跡がついてしまいますから。刺身にする場合などは表面が見えますから、特に丁寧に扱わないといけないですね」。

『太刀魚丼』は切り身に下味をつけて片栗粉をまぶす

●太刀魚丼
「さばいて適当な大きさに切った太刀魚を、醤油や生姜などをあわせツユに通して、軽く下味をつけます。その後、片栗粉をまぶして油で揚げます」。

油で揚げる

「天ぷらというよりも、唐揚げとか竜田揚げに近いかもしれないですね。」

盛りつけてタレをかけて『太刀魚丼』のできあがり

「丼にごはんをつぎ、キャベツ、ネギ、大葉の順にのせ、その上に揚げた太刀魚を立体的に盛付け、タレをかけてゴマをふりかけてできあがりです。タレは醤油、酒、みりん、砂糖などを合わせた甘辛い味わいですね。『太刀魚丼』はうちで1番の人気商品なんですよ」。

●銀太刀丼
「太刀魚をもっと打ち出したい、もっと太刀魚料理のバリエーションを増やしたいということで考えたものです。『銀太刀』とは、田浦漁港に揚がる太刀魚のなかでも、大きさ、美しさの基準をクリアした太刀魚のことを言います。普通の太刀魚漁は網を使いますが、銀太刀は一本釣りです。この銀太刀を生で食べていただくのが『銀太刀丼』なんです。太刀魚は生で食べてもおいしいですから。

『銀太刀丼』は一口大に切って、薬味とタレを合わせる

銀太刀は三枚におろした後、刺身のように一口大に切り、ネギとタレを加えて和えます」。

ごはんの上に錦糸卵をのせ、太刀魚の身をのせてタレをかけて『銀太刀丼』のできあがり

タレは『太刀魚丼』に使うものと同じですね。器にごはんをつぎ、錦糸卵をたっぷりのせ、その上に先ほどの太刀魚の切り身をのせてゴマをふりかけます。漬け丼のような感じですかね。すりおろしたやまいもを添えますのでお好みでどうぞ」。

●太刀魚重

『太刀魚重』は切り身を天ぷらの衣液にくぐらせて揚げる

「太刀魚の切り身を油で揚げるのですが、小麦粉を使った天ぷらの衣ですね。ほどよく揚がったら、タレにくぐらせてからごはんにのせます。このタレは、刺身醤油やハチミツなどを合わせたコクのある濃いめのものです。仕上げにゴマをふりかけます」。

●太刀魚蒲焼丼
「太刀魚の切り身に太刀魚重のタレをつけてからこんがりと焼きます。それをごはんにのせるんです。味がしっかりつきますし、中がふわっとして美味しいですよ」。

太刀魚の食感であったり甘味であったり、料理ごとに太刀魚の魅力が感じられる。料理方法によって様々な味わいが楽しめるのは、太刀魚の身が、くせのない淡白でやさしい味わいを持っているからこそだ。
「地元では、塩焼きや煮付けにして食べることも多いですね。太刀魚を使ったメニュー開発をいつも考えているんですよ。一度出したこともありますが、太刀魚の身を酢でしめた押し寿司も美味しいですよ」。

太刀魚を使ったメニューはこれからもまだまだ増えていきそうだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

三枚におろして切る。『太刀魚丼』に使う場合は、生姜や醤油などを合わせたツユに入れて軽く下味をつけておく

タレ

『太刀魚丼』に使うのは醤油、酒、みりん、砂糖などを合わせた甘辛い味わいのタレ。『太刀魚重』にはさらに濃厚なタレを使う

作り方

『太刀魚丼』は下味をつけた切り身に片栗粉をまぶして揚げる。ごはんとキャベツが入った丼に盛付け、甘辛い味わいのタレをかける

このページを共有・ブックマークする

道の駅たのうら お食事処 たばくまん太刀魚を使った4種類の丼料理を

『道の駅たのうら』に併設されたレストラン。地元の海の幸・山の幸を使い、地元のお母さんたちが作る素朴でやさしい味わいの料理を食べられる。特産の太刀魚を使ったメニューも豊富で、丼系の料理としては、『太刀魚丼』、『銀太刀丼』、『太刀魚重』、『太刀魚蒲焼丼』、の4品。それぞれの丼は、淡白でやさしい太刀魚の味わいを違った形で引き出している

盛付けが豪快な『太刀魚丼』690円
生の太刀魚の瑞々しい歯応えを感じられる『銀太刀丼』690円
いわゆる天丼のスタイルである『太刀魚重』690円
濃厚な味わいの『太刀魚蒲焼丼』750円
広々とした店内。注文して支払い後、料理ができあがったら自分で受け取るセルフスタイルだ
お店は『南九州西回り自動車道』の田浦ICを降りてすぐの場所にある

道の駅たのうら お食事処 たばくまん

住所 熊本県芦北郡芦北町大字田浦657
電話 0966-87-2230
営業 11:00~15:00(土曜、日祝日~18:00)
休み 第2水曜
87席
カード 不可
駐車場 120台
URL http://www.otachimisaki.com/
お店情報をプリントする