九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

料理する前に三枚におろしておく。ウロコはないが、表面の皮をはがさないように丁寧にさばくことが必要だ

タレ

いわゆる天ぷらのツユではなく、醤油ベースの甘辛いタレが使われる。作り手の個性と工夫が一番現われるところだ

作り方

さばいて適当な大きさに切った太刀魚の身に衣をつけて油で揚げる。それをごはんの上にのせてタレをかければできあがりだ

語り つなぎ温泉 四季彩 レストラン 丸山弘の「太刀魚丼」

丸山弘さん

津奈木(つなぎ)町は甘夏やデコポンなど柑橘類が豊富に採れる温暖な町。この町に1994年にオープンした『つなぎ温泉 四季彩』は専用のモノレールで行く露天風呂でよく知られる温泉施設。レストランも併設されている。
「津奈木は自然豊かでのんびりしていていいですね。小高い場所にある露天風呂は見晴らしがよくて九州新幹線も見えるんですよ。海も見えて、夏の夕暮れは最高ですよ」。

そうお話してくださるのは所長・丸山弘さん。八代海(不知火海)は美しい海であり、豊穣の海でもある。
「不知火海では様々な魚介類が豊富に獲れますが、太刀魚は1年中安定して獲れるので、料理に使いやすいですね。海で育つ太刀魚は身がやわらかいし、くせのないやさしい味わいで美味しいですよ。外海の太刀魚は荒い波の中で育つので、皮が厚かったりするそうです。田浦(たのうら)で揚がった特に品質のいい太刀魚は“銀太刀”とよんでいますね。レストランで太刀魚を食べて『太刀魚はこんなに美味しい魚だったんですね』と言ってくれる方もいらっしゃいます。刺身、塩焼き、煮付け、酢漬け、みりん干し、天ぷらにしてごはんにのせる『太刀魚丼』など色々な食べ方がありますね」。

三枚におろした太刀魚の半身を適当な大きさに切る

名物の一つである『太刀魚丼』を作っていただいた。
「下ごしらえをしますが、仕入れた太刀魚はまず三枚におろします。ウロコもないし、頭を落として切るだけだから簡単ですよ(笑)」。

そう言って笑う丸山さんだが、実は細かな気配りをされている。ウロコのない太刀魚の表面の皮は薄くてデリケートだからだ。「銀色に輝く皮はとても薄くてはがれやすいので、強く触ったり、まな板に押し付けたりするとはがれますので、注意してさばいています。特に刺身にするのものは注意が必要ですね」。

三枚におろしたら、半身を3~4等分して塩コショウする。
「大きさによって切り方は変わります。このあたりでは、太刀魚のことを『太刀(たち)』と呼ぶことも多いのですが、体長50~60cmくらいの小型の太刀魚を『小太刀(こだち)』、それよりひと回り大きいと『中太刀(ちゅうだち)』、『大太刀』とあり、冬場、特に脂が乗った『大太刀』を『とろ太刀』と呼んでいます。太刀魚は細長い魚で、尾に向かうにつれ細くなっていきます。腹のあたりの肉厚な部分は塩焼や刺身にして、やや細くなっている部分を『太刀魚丼』用の天ぷらにしています。天ぷらにもできないくらい細くなっている部分はすり身にしています。残さずすべてを使っていますよ」。

切り身を、青のりを合わせた天ぷらの衣液にくぐらせて油に投入

天ぷらの衣にもひと工夫。小麦粉を使った通常の衣液に青のりを加えている。
「衣液に青のりを入れるのは、うちのオリジナルですね。高温で揚げると真っ黒になってしまうので、初めはやや低温でじっくりと揚げ、最後は高温にして表面をサクッとさせます。丼にごはんをついで、タレをかけて、天ぷらをのせてさらにタレをかけ、ゴマをのせて昆布の佃煮をのせてできあがりです。タレは 甘辛い秘伝のタレ、タレが少ない時は言っていただければたっぷりかけます」。

中まで火が通り表面がカリッとなるまで揚げる

天ぷらは、衣はカリッ中の身はふわっとしている。

特製のタレをまわしかける

甘辛いタレが天ぷらとごはんを結びつけ、香ばしい青のりの風味も絶妙だ。ボリュームも満点。

『ボリュームもあり太刀魚をたっぷり楽しめる『太刀魚丼』

「量で言うと、『太刀魚丼』の太刀魚は通常のサイズのものの半身以上はありますからね。美味しいでしょう?淡白な白身魚で食べやすくもあります。いつの時期でも美味しいですね。天ぷらもいいですが、刺身や塩焼きも太刀魚そのものの味が楽しめて、私は好きです」。

2人で訪れたなら、『太刀魚丼』とともに、太刀魚の刺身と塩焼きが付く『四季彩定食』も注文すれば太刀魚三昧を楽しめる。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

太刀魚の皮がはがれないように注意しながら三枚におろす。三枚におろしたら、半身を3~4等分して塩コショウする

タレ

『太刀魚丼』にしか使わない甘辛い秘伝のタレ。やや濃いめの味つけで、太刀魚の身の味わいを引き立てている

作り方

太刀魚の切身を油で揚げる。衣液に青のりが加えられているのが特徴。ほどよく揚がったらごはんの上にのせてタレをかける

このページを共有・ブックマークする

つなぎ温泉 四季彩 レストラン温泉でくつろいだ後、太刀魚料理を

温泉施設に併設されたレストラン。『太刀魚丼』をはじめ、塩焼き、刺身、みりん干しなど、特産の太刀魚を使った様々な料理を味わえる。『太刀魚丼』は天ぷらの衣に青のりが入っており、その香ばしさと特製タレが太刀魚の味わいを高める。専用モノレールで行く露天風呂は高台にあって、眺めも抜群。のんびりと湯につかった後、ゆっくりと食事を楽しみたい。

『太刀魚丼』は、味噌汁、サラダなどがついて700円
『太刀魚の塩焼き』500円。ごはん、味噌汁などが付く定食は1000円
『四季彩定食』1300円。太刀魚の塩焼きと刺身を食べられる
温泉につかった後、ゆっくりとくつろげるレストラン店内

つなぎ温泉 四季彩 レストラン

住所 熊本県芦北郡津奈木町大字岩城435
電話 0966-78-4126
営業 11:00〜15:00/16:30~18:30
(土曜、日祝日~19:30)
休み 毎月第一水曜日
40席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www14.ocn.ne.jp/~shikisai/index.html
お店情報をプリントする