九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

南関揚げの味付け

湯で煮るなどして油抜きをしてから、出汁、醤油、砂糖などで味付けする。煮込み時間と絞り方で味の染み込み方が左右される

具材

いわゆる巻寿司の具材と同じで、卵焼き、シイタケ、桜でんぶ、キュウリやホウレンソウなどの野菜がよく使われている

巻き方

南関揚げは海苔と違ってすし飯がくっつきにくいので、南関揚げの上に広げるすし飯ののせ方や、巻き方に工夫がなされている

語り 生活協力グループ 片山カツ子の「南関揚巻寿司」

片山カツ子さん

『生活協力グループ』会長・片山カツ子さんは、南関地区で昔から食べられている郷土料理を守り、多くの人に伝える活動を続けられている。『南関揚巻寿司』も南関の大切な郷土料理だ。
「『南関揚巻寿司』は、お祝いごとの時によく食べます。運動会の時のお弁当に入っていると豪華さが増しますね。今日は一番定番な形の『南関揚巻寿司』を作りますね」。

すし飯の味付けは砂糖と酢と塩。よく合わせておく

すし飯づくりから教えていただいた。

ごはんが熱いうちに、合わせておいた砂糖と酢と塩を入れて混ぜる

「ごはんは少しかために炊いておいたほうがいいですね。砂糖と酢を1:1に合わせたものを、米一升に対して1.5カップくらいかな。ごはんが熱いうちにそれを入れて切るように混ぜたら、ふたをしてしばらく蒸します。こうすると、ごはん一粒ずつの中に味が染み込むんですよ。これは先輩たちから厳しく教えられました。やっぱり木桶じゃないとだめみたいですね」。

巻きすに南関揚げをのせ、すし飯を広げる

海苔の代わりに使う南関揚げの準備にも手間がかかる。

「南関揚げは、お湯に入れて10分ほど火を通し、しっかりと油抜きします。そして、昆布、干しシイタケ、カツオを使った出汁に、砂糖、醤油、みりんなどを加えて10分ほど煮て味を染み込ませます。味が染みた南関揚げを巻きすにのせて、くるくると巻いてからほどよく絞るんですが、この絞り具合が難しいんです。絞り方が弱いと、びちゃびちゃになってしまうし、絞りすぎると味がぬけてしまうんですよね」。

絞られた南関揚げには巻きすの跡が少しだけ残っていた。これも微妙な絞り具合がなせる技だ。

具材をのせていく。野菜は自家製野菜が中心とのこと

中に巻く具材は既に下準備がされていた。

「具は5種類くらいかな。今日は定番的なもので、ホウレンソウ、カンピョウ、ニンジン、シイタケ、卵焼きです。ホウレンソウは塩ゆでして薄口醤油をかけて絞っておきます。カンピョウとシイタケは南関揚げの煮汁で煮て、ニンジンは別に煮て味付け。塩と砂糖を入れてちょっと甘めに焼いた厚焼き卵は1cm角にしておきます。どれも手間がかかっていますね。具の味はわりと濃くしています。薄味だと物足りないですから。夏はキュウリや漬け物を入れたりもしますよ。キュウリだけのかっぱ巻きみたいなのも作りますね」。

素早く巻く

次に巻く作業。

「巻きすの上に南関揚げをのせて形をととのえます。南関揚げは、ひっぱったら、いくらでも伸びますよ(拡がりますよ)(笑)。南関には南関揚げを作るところが何軒かありますが、伸びが違ったりします。伸びがいいと巻きやすいですね。そして、すし飯をのせていきます。私は南関揚げ1枚に1合くらいのせているかな。海苔と違って南関揚げにはごはんがくっつきにくいので、すし飯を広げる時に、南関揚げに押し付けるようにしておくといいですね。具をのせる順番は好き好きかな。そして、しっかりと巻いていきます。特に巻き終わりをしっかり巻かないとはがれてしまいますからね。ここが海苔とは違って難しいところなんです」。

しっかりと巻く

巻き終わったら、1本を8個に切り分ける。ボリュームもある太巻きは、手作りのやさしい味わい。もちっとした食感の南関揚げと、それぞれに違う味わいの具材、すし飯が口の中で広がる。
「美味しい?私は味見しないから(笑)。焼酎飲みながらでも合う味ですよね」。

断面も華やかな『南関揚巻寿司』

『生活協力グループ』の務めは、郷土の味を広め、次の世代に伝えていくこと。小学校や保育園に教えに行かれる。

「『南関揚巻寿司』などの料理を、作ってもらって食べてもらっています。そうしたら、ちびっこたちが、『美味しいからお母さんに教えるね』と言ってくれるんですよ。『南関揚巻寿司』は美味しいけん長続きしよるとでしょう。子どもたちも好きですからね」。

その他料理教室や、毎年2月に、南関に伝わる料理を見て食べる会なども手がけていらっしゃるとのことだ。

すし飯に梅酢を加えて細巻きを作る

また、郷土料理をベースに新たな創作料理も考えたりされるとのこと。『南関揚巻寿司』をアレンジしたオリジナル料理を一つ教えていただいた。

卵焼きと細巻き5本を巻くと…

「すし飯に梅酢をかけて軽く色づけ、細巻きを5本作ります。揚げにすし飯をひいて、真ん中に玉子焼きを入れて5本の細巻きと一緒に巻きます。断面が梅の花の形に見える『梅の花寿司』です!」。

『梅の花寿司』のできあがり

なかなかの太さだが、あっさりさっぱりした味わいなので、箸もすすむ。

ボリュームも満点の『梅の花寿司』

昔から伝わってきたものを見据えながら、新しいことにもチャレンジするという片山さんの活動は、これからも続いていく。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

南関揚げの味付け

南関揚げを油抜きして、昆布他を使った出汁に、砂糖、醤油、みりんなどを加え、10分ほど煮て味を染み込ませた後、ほどよく絞る

具材

ホウレンソウ、カンピョウ、ニンジン、シイタケ、厚焼き卵他。それぞれ別々に下味がつけられている。キュウリや漬け物を使うことも

巻き方

南関揚げは海苔とは違い、すし飯がくっつきにくいので、すし飯を広げる時に南関揚げに押し付けようにする。最後は、しっかりと巻く

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