九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

南関揚げの味付け

湯で煮るなどして油抜きをしてから、出汁、醤油、砂糖などで味付けする。煮込み時間と絞り方で味の染み込み方が左右される

具材

いわゆる巻寿司の具材と同じで、卵焼き、シイタケ、桜でんぶ、キュウリやホウレンソウなどの野菜がよく使われている

巻き方

南関揚げは海苔と違ってすし飯がくっつきにくいので、南関揚げの上に広げるすし飯ののせ方や、巻き方に工夫がなされている

語り 関所亭 井上美佳の「南関揚巻寿司」

井上美佳さん

2011年にオープンした『関所亭』は、うどんを中心に提供しているお店。前日までに予約をすれば『南関揚巻寿司』も作っていただける。店長・井上美佳さんにお話をうかがった。

「私は鹿児島出身なのですが、『南関揚巻寿司』を初めて見た時、海苔の代わりに揚げを使うのはおもしろいし、切ると断面がきれいだと感じました。県外の方で初めて目にされる方も、珍しいので驚かれますね。スーパーなどにも売っていますし、このあたりでは普通に食べられているお寿司です。どこの家庭でも作っているわけではないと思いますが、南関揚げそのものは、保存もきくし、ほとんどの家庭にあるのではないでしょうか。地元の方が、南関揚げは全国どこにでもあると思っていたのに、そうではなくてびっくりしたという話もよく聞きますよ(笑)」。

『南関揚巻寿司』の作り方を教えていただいた。まずは南関揚げの味付け。 南関揚げはしっかりと油抜きして、薄口醤油、砂糖、酒で煮込んで味付けします。薄口醤油を使っているので色が濃くならずに上品な色合いに仕上がりますね。揚げの準備だけで2時間くらいかかりますよ(笑)」。

具を一つずつ丁寧に置いていく

続いて具材について。

「ごはんに酢や砂糖を合わせたすし飯と一緒に巻く具材は、今日は、ニンジン、キュウリ、厚焼き卵、ゴボウ、シイタケ、桜デンブ、ゴマです。キュウリがホウレンソウになることもありますね。ニンジンは下ゆでして、出汁、醤油、砂糖などで煮て味付けします。出汁はうどんにも使う自慢の出汁ですから美味しいですよ。シイタケは濃口醤油を使って煮て、ゴボウはまた別の味付けで煮ています。具材は全部別々に料理していますから、なかなか手間がかかります。このあたりでは甘いものが好まれるので、全体に甘めの味付けですね」。

巻きはじめは素早く

材料がすべて準備できたところで、巻きの作業だ。

「味が染み込んだ南関揚げをほどよく絞って巻きすの上にのせます。その上にすし飯を広げます。1本につきすし飯は400gくらいですね。すし飯は揚げの全面に広げずに、端から数センチ残すんです。こうすると、きれいに巻けるんですよ」。

形を整えながら巻く

巻きの作業はかなり手早い。
「具材を並べたら、はじめは素早く巻きます。具が大きいし、量もたくさんなのでゆっくりだとバラバラと落っこちてしまうんですよ。素早く巻くことがコツですね。そして、しっかりと巻きます。海苔と違って巻くのがなかなか難しいですね」。

しっかりと巻いてフィニッシュ

できあがった『南関揚巻寿司』は、やや甘めの味付けの具材と、上品な味わいの南関揚げ、すし飯のバランスがいい。ボリュームがあるので、2切れほどいただくと、かなり満足だ。

すし飯もたっぷりの『南関揚巻寿司』

「『南関揚巻寿司』に使っている味付けした南関揚げは、少し歯応えがあってもちもちしているのが美味しいですよね。出汁の味も染み込んでいますしね。すし飯も具材もたっぷりなので太巻きよりもさらに太いかもしれません(笑)」。

重さを測ると、1本730gだ。
「恵方巻きとしてお出ししたこともあるのですが、その時は普通の1本では大きすぎるので、半分にしましたよ」。

うどんと言えばいなり寿司だが、こちらのいなり寿司は、よく見るいなり寿司とは少し違うようだ…。
「普通のいなり寿司のようにすし飯を揚げの中に詰め込むのではなくて、軽くにぎって形を整えたすし飯に、味付けした南関揚げを巻いているんです」。

このいなり寿司は、メニューにもあるし、持ち帰りもできる。また、南関揚げが使われている料理は他にもある。
「きつねうどんの揚げは、南関揚げですよ。やはり南関の特産品である南関そうめんを使ったにゅうめんの上にも、味付けした南関揚げをのせています。小鉢に使う小松菜の煮浸しに使ったり、炊き込みご飯に入れたりもします。味付けした南関揚げを卵でとじてごはんの上にのせた『南関揚げ丼』もありますよ」。

そのどれもが通常の油揚げを使ったものとはひと味違う、個性的な味わいとなっている。南関で“揚げ”と言えば、南関揚げ。様々な料理で食べられているのだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

南関揚げの味付け

油抜きして、薄口醤油、砂糖、酒で煮込んで味付けをする。薄口醤油を使っているので色が濃くならず、上品な色合いに仕上がる

具材

ニンジン、キュウリ(またはホウレンソウ)、厚焼き卵、ゴボウ、シイタケ、桜デンブ、ゴマなど。味付けにはうどん用の出汁も使う

巻き方

具材を並べたら、具かバラバラにならないように、はじめは素早く巻く。さらに、しっかりと巻いておくのも必要とのこと

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関所亭うどん用の出汁が使われる『南関揚巻寿司』

新鮮な地域特産物の展示販売なども行なう「南関町ふるさとセンター」の一角にある、うどんを中心に提供している食事処。『南関揚巻寿司』は前日までに予約すれば食べられる。その他、南関揚げを使ったメニューには、特製いなりやきつねうどんなどがある。特産の『南関そうめん』を使ったにゅうめんの上にも、味付けされた南関揚げがのっている。

『南関揚巻寿司』は1本(8コ)980円。前日までに予約のこと
南関そうめん使用の『にゅうめん』780円。味付けされた南関揚げものる
南関揚げを使った『特製いなり』180円。持ち帰りも可
窓からは緑も見える広々とした店内
お店は県道5号線沿いにある

関所亭

住所 熊本県玉名郡南関町上長田654(南関町ふるさとセンター)
電話 0968-53-6288
営業 11:00〜19:00
休み 月曜日(祝日の場合は火曜日)
50席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.furusato-n.com/
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