九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

大豆

呉豆腐の味の決め手となるのは大豆。各店とも厳選した大豆から美味しい豆乳をつくることを心がけている

デンプン

北海道産の馬鈴薯デンプン。葛を使わずデンプンだけを入れてじっくり練ることにより、こちらならではのトロトロ感ともちもち感を引き出す

つくり(練り方)

かつては完全な手づくりだったが、今ではミキサーも導入されている。しかし、重要なポイントでの手作業は欠かせない

語り 久保田岩雄商店 久保田誠の「呉豆腐」

久保田誠さん

久保田岩雄商店の呉豆腐には『笹雪』という名前がつけられている。白くてやわらかな呉豆腐が揺れるさまを、風に揺られてゆらゆらする笹と真っ白な雪にたとえてそう名付けられた。代表取締役・久保田誠さんは三代目、呉豆腐は昭和51年くらいから本格的につくり始めたとのことだ。
「じいちゃんが戦前の昭和3年に豆腐屋を始めました。法事の時などに家庭ごとにつくられていた呉豆腐を、初めは注文があればつくっていたくらいだったようです。今は呉豆腐をつくっている家庭は少ないですね」。

全体が均一になるように釜の角度は時折変える

毎朝、午前3時から豆腐づくりは始まる。「水につけた大豆を粉砕して煮てしぼって…豆乳までは普通の豆腐づくりと同じですね。豆腐も呉豆腐も同じですが、味は素材がすべてです。工夫の仕様がないんですよ。呉豆腐の材料は、大豆と水とデンプン。美味しい豆乳をつくり、呉豆腐の場合はそこにデンプンを入れて練る、それだけなんです。ですから、材料にはとても気を使っています。大豆は佐賀産の丸大豆。『フクユタカ』の一等大豆で、伊万里や武雄で栽培されているまさに地場のものです。デンプンは北海道産の馬鈴薯デンプンです。安心安全な材料しか使っていません。2つしかありませんけれど(笑)。国産大豆で作った豆乳はやはり色が濃くていいですね」。
工房の奥の倉庫には1袋30kg入りの大豆の袋が積まれていた。

練り具合は、手に感じる重さによって判断される

いい材料にゆだねられた豆乳ができあがった後は、そこにデンプンが加えられ、練る作業が職人の技にゆだねられる。練りの工程だけは久保田さんが一人で担当している。

練りあがったら型に入れる

豆乳が入る釜は、モーターで回る羽根が上から入るミキサーのようなつくりになっている。羽根はゆっくりと回転しているが、釜の角度を変えたり、“柄のないひしゃく”のようなものを使って手作業で混ぜたりと、久保田さんが休む暇はない。
「全体をムラのないように均一にするためです。普通の豆腐と違って、呉豆腐はとても手間がかかりますね」。

型に入れられた呉豆腐と、表面をなめらかにするヘラ

“柄のないひしゃく”にくっついた、呉豆腐になりつつある豆乳を時折ヘラで落としつつ、久保田さんは作業を続ける。
「呉豆腐に対して私たちができるのは、かたさとかやわらかさとか食感の部分だけです。練り具合によって食感が変わってしまうし、職人の技が必要で、呉豆腐づくりで一番難しいところですね。できあがり具合は、手で混ぜた時の重みで判断します。温度などその日で状況が変わるのでいつも同じように練っているというわけではないんですよ」。

静かに水槽に沈められる

練りあがったものは型に入れて表面をならし、水の中で冷やす。まず大きなバケツの中へ入れ、粗熱がとれたらさらに大きな水槽の中へ移し、流水で冷やしていく。
「乱暴にやると型から飛び出してしまうので注意しながら丁寧に扱っています」。

固まったら、特製の器具で切る。1つの型から20丁の呉豆腐が生まれる

かたまったら、障子の枠のような特製の器具で一気に切る。型の中でひとかたまりだった呉豆腐が20丁に分かれる。切る時にぷるぷると揺れる呉豆腐は、見るからにやわらかそう。やはり出来たてが一番なのだそうだ。
「豆腐づくりしている工房の横が私の家ですから、いつ買いに来ていただいてもいいですよ(笑)」。

こわれないように手ですくった後、パッケージする

呉豆腐に久保田さんが手づくりしている特製ゴマ醤油『笹雪のタレ』をかけていただく。吟味したゴマと佐賀の老舗醤油屋の醤油を使ってつくったものだ。呉豆腐独特の食感の中に、大豆の甘味と香りがふわりと漂う。ゴマ醤油の味がさらにそれを引き立てる。
「きなこと黒蜜でも美味しいですよ。もちもち感があってもちみたいだけど、するっと中に入っていく。呉豆腐は一回食べてみないとわからない味ですね。夏の暑い時や食欲がないで時でも、するすると食べられます。カロリーも低いし、ヘルシーで栄養豊富な豆腐です。私も毎日食べているからか、2:30に起きた時からすぐに、いつもやる気が出てくるんです(笑)。美味しい呉豆腐を食べていただけるようにがんばります!!」

この料理人こだわりの「味のキーワード」

大豆

「豆腐の味は素材で決まる」と、佐賀産の丸大豆を使用。『フクユタカ』の一等大豆で、伊万里や武雄で栽培されている地場のものだ

デンプン

北海道産の馬鈴薯デンプン。葛を使わずデンプンだけを入れてじっくり練ることにより、こちらならではのトロトロ感ともちもち感を引き出す

つくり(練り方)

毎回同じように練るわけではなく、その日の状態によって練る時間なども変える。最終的なできあがり具合は、手で感じる重みで判断する

このページを共有・ブックマークする

久保田岩雄商店佐賀産の丸大豆を使うやわらかな呉豆腐

昭和3年の創業以来、佐賀産の丸大豆を使うなど、素材に気を配った豆腐づくりを行なっている。昭和51年くらいから本格的につくり始めたという呉豆腐には『笹雪』という風流な名前も付けられている。自家製ゴマ醤油『笹雪のタレ』をかけていただくと、大豆の甘味がより口の中で広がる。『にがり豆腐』も大豆の味がストレートに伝わる一品。

呉豆腐は1コ約100g。1コ80円、2コ入150円、3コ入り180円、5コ入り300円の4つのタイプがある。自家製ゴマ醤油『笹雪のタレ』は1本70円(33ml)

※いずれも久保田岩雄商店で直接購入した場合の価格

大豆本来の甘味とコクを楽しめる『にがり豆腐』120円をはじめ、どれも素材に気を配った商品だ。『厚揚げ』100円、『田舎揚げ(一口揚げ)』130円、『木綿』100円、『絹』100円

※いずれも久保田岩雄商店で直接購入した場合の価格


久保田岩雄商店

住所 西松浦郡有田町黒川丙690-8
電話 0955-46-3046
営業 要問合せ
休み なし
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.kubota-tofu.com/
お店情報をプリントする

お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧