ちゃんぽんや太麺皿うどんにも使う、鶏ガラスープとトンコツスープをブレンドしたスープを使う店が多い
キャベツ、モヤシなどの野菜に豚肉と魚介類が入る。夏場はアサリ、冬場はカキを入れる店が多い。タマネギは好みが分かれる具材だ
具材を炒め、スープを入れ、味を整えて最後にとろみをつけるが、スープを入れるタイミングなどは各店で異なる
昭和51年、22歳の時から料理を始めた専務の劉済文さん。戦時中までさかのぼる京華園の歴史、当時のことを教えてくださった。
「お店は昭和19年から始まり昭和26年に今の場所に移ってきたそうです。戦後すぐは食材がなくて、ちゃんぽんの具材も、もつ、豚の胃袋、砂ずりなどを入れていたと聞いています。やがてちゃんぽん・皿うどんが県民食になって、大人から子どもまで食べられるものとして今の食材になってきたようですね。今は、キャベツ、モヤシ、タマネギ、ネギ、キクラゲ、豚肉、はんぺん(カマボコ)、アサリ(冬場はカキ)を使っています。これらの具材はチャンポンと同じですね」。
かんすいの代わりに唐灰汁(とうあく)を使うのが長崎独特の麺の製法。小麦粉、水、唐灰汁の材料はちゃんぽんと変わらないが、細くして蒸した生麺が麺屋から届く。それを油で揚げたものが皿うどんの麺だ。
「私たちの細麺は、以前は今よりも太かったのですが、時間が経つと固くなるということで今のものまで細くしました。ただ、長崎全体で見ればやや太めですね。生麺は、自家製の唐灰汁で麺をつくる長崎で一番古い製麺所にお願いしています。小麦粉も、より甘味のある粉を使っていらっしゃいますし、自信をもっておすすめできる麺ですね。厳選した材料を使うことは大切です。材料が美味しくないと美味しいものはできませんから」。
スープもまた、劉さん入魂のものだ。
「トンコツと鶏ガラのブレンドで白濁色のスープは、ちゃんぽんと同じものです。旨味は鶏ガラスープのほうがありますが、濃厚な感じはトンコツスープを入れないとできません」。
具材、麺、スープがそろえば、皿うどんはできるが、それらを一つにまとめるのがプロの料理人の仕事だ。
「ラードを入れて、まず野菜を軽く炒めます。次に、スープ、その他の具材、上白糖、地元のうす口醤油の順に投入していきます。魚介類は炒めません。魚介からは旨味が出るので煮込んだほうがいいのです。すべての具を炒めるわけではないんですよ。醤油は1人前につき大さじ1くらいですが、とても味を左右しますね。醤油を投入したところで、野菜の食感を残すため、2/3は鍋から出して皿に盛られた麺の上にのせます。1/3がそのままなのは、後でデンプンを入れた時にとろみがつきすぎないようにするためなんです」。
最後にデンプンを入れ、とろみをつけたものを麺にかけて完成だ。
「デンプンのかたまり具合がポイントですね。どろどろにもさらさらになり過ぎないようにしないと美味しくないですから。途中で状態を確認することが重要です。素材の状態によって、水分量も異なり、スープの蒸発の加減もかわってくるので味見しながら鍋ごとに毎回調整しないといけません。そこは、味見が必要ではないラーメンやうどんと根本的に違うところですね」。
具材を包み込んだとろみのある“あん”はやはり甘い。それが長崎の皿うどんの味だ。
「昔に比べると甘味を少し控えてはいますが、それでも十分に甘い。ちゃんぽんは全国区になりましたが、皿うどんがそうならないのは甘すぎるからかもしれません。かつて東京にいた時に、まわりの人間に作って食べさせたら「これはお菓子ですか?」と言われたこともありますから(笑)。だから、それにソースをかけて食べるのがいいんです。うちのソースは『金蝶ソース』。少し辛めで皿うどんに合うように作られていますね。私のおすすめは、2/3はそのまま食べて、残りの1/3にソースをかけて食べることです」。
皿うどんの麺を、パリパリなうちに食べるのが好きなのか、とろとろになってから食べるのが好きなのかは好みによって分かれるところだ。
「1日経った皿うどんを温め直しても実は美味しいんですよ。私をはじめとろとろ派の意見です(笑)。皿うどんのルーツは中華ですが、長崎の風土に根ざしていて、中華料理とはまた違う郷土料理に違いありません。中華料理で冷めても美味しいものはないですが、皿うどんは冷えても美味しいですからね(笑)」。
劉さんとの皿うどん談義は尽きることがない…
濃厚なコクを持つトンコツスープと、深い旨味を持つ鶏ガラスープをブレンドしたもので、白濁色のスープ。ちゃんぽんにも使う
キャベツ、モヤシ、タマネギ、ネギ、キクラゲ、豚肉、はんぺん(カマボコ)、アサリ(冬場はカキ)。タマネギから出る甘味も旨い
野菜の食感を残すためととろみがつきすぎないようにするため、具材をスープで煮込む途中で野菜の2/3を取り出し麺の上に盛りつける
昭和19年創業、昭和26年に現在の中華街に移転した中華料理店だ。長崎で一番歴史ある製麺所から仕入れるという麺(ちゃんぽん麺・皿うどんの麺)は、厳選した小麦粉の甘味が引き立っている。ちゃんぽんも皿うどんも、麺そのものの味も楽しみたい。平日の11:00〜15:00はスーパイコ定食(840円)他のランチメニューも。
住所 | 長崎市新地町9-7 |
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電話 | 095-821-1507 |
営業 | 11:00〜15:15/17:00〜21:00 |
休み | 不定月1回 |
席 | 300席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.kyokaen.co.jp |