家庭ではブリ、マグロ、アジなど季節の魚を一口大に切ったものを使うことが多いが、飲食店ではマグロの赤身を使うことが多い
おからと一緒にまぜられるのは、刻んだネギやすりおろしたショウガ。カイワレ大根を入れる店もある。カボスの絞り汁も欠かせない
きらすまめしに使われる唯一の調味料で、この中に魚を入れてヅケにする。醤油のみ、三杯酢など、各店・各家庭ならではの味だ
初代・小手川金次郎が味噌・醤油つくりを始めたのは文久元年(1861年)。現在は『フンドーキン』の名で味噌・醤油つくりを行なっている。そして、創業時に建てられた建物で、食事を提供したり味噌・醤油の販売を行なっているのが『小手川商店』だ。
料理は、長期熟成させたまろやかな味の味噌を使った自慢のみそ汁と郷土料理の数々。その中の一品に『きらすまめし』がある。スタッフの平尾桂子さんにお話をうかがった。
「『きらすまめし』には臼杵の生のおからを使っています。準備としておからをボールの中に入れ、あとで魚とよく混ざるように押して少しねかせておくんですよ」。
使う魚は一口大に切ったマグロ。味噌・醤油の店だけに、魚を漬け込むのに使うのはシンプルに醤油だけだ。
「元々は魚の切れ端を使っていた料理ですが、今はマグロのいいところの身を使っています。臼杵の魚は新鮮だし、素材そのものの味を大切にしたいと思っています。味付けには『うすくち白しょうゆ』を使います。一口大に切った後、30分ほど漬け込んでおくんです」。
次におからの上から材料が入れられ、まぶされていく。
「先ほどのおからにカボスの絞り汁を入れて軽く押さえます。すったショウガを入れ、ネギを入れ、魚を少しずつまぶしながら入れていきます。魚をくずさないようにやさしく混ぜていくのがコツですね。全体がまざったら、味をなじませるために軽く押して15分ほどねかせておきます」。
その後、器に盛りつけて、切ったカボスを添える。添えられたカボスを軽くしぼってから口の中へ。爽やかなカボスの香りとともに、マグロの甘味とおからの風味、上品な醤油の旨味が広がる。マグロは口の中でとろけるようだ。
「私たちが使っているのは臼杵の南津留(みなみづる)という場所で採れるカボス。カボスをしぼると香りがフワーっとひきたちますね。ショウガの味も効いていて、アクセントになっているでしょう?マグロの動物性タンパク質とおからの植物性タンパク質が含まれていますから、健康にもいい料理だと思います。倹約料理であり身体にいい料理ですよね。シンプルだけどつくるのはむずかしい料理ではありますが(笑)」。
とても素朴な味わいの『きらすまめし』だが、臼杵にはなくてはならない味なのだという。
「お酒の肴にもごはんのおかずにもなるので、パックに入ってスーパーなどでも売っています。臼杵にはふぐ料理を食べさせる店も多いですが、料亭でもきらすまめしは小鉢として出されているようです。けれど、元々は各家庭で作られて食べられていたものです。ですから家庭ではブリやアジなど季節の魚を使うことが多いですし、砂糖を使ったり酢を使ったり、濃口の醤油を使ったりと味わいも各家庭ごとに違いますね。私も、小さい頃は1週間に2〜3回は食べてました。その頃は、まだ父親の夕食は一品多くというような時代でしたから、父親に刺身を食べさせて、その残りを家族みんなできらすまめしにして食べるという感じだったでしょうか(笑)。私は、実家を離れた子どもたちが帰ってきた時には、必ず家で作りますよ。『懐かしい!!』と言って食べてくれますね」。
『きらすまめし』は過去から今に続く、臼杵の故郷の味なのだ。
一口大に切った新鮮なマグロを使う。魚を漬けるタレも、具材・薬味もシンプルなのは、新鮮な臼杵の魚の味わいを最大限に引き出すため
おから、マグロと一緒にまぶすのは、カボスの絞り汁、すったショウガ、ネギ。盛りつけられた器には切ったカボスが添えられる
味噌・醤油屋だけに、シンプルに『うすくち白しょうゆ』のみを使う。『うすくち白しょうゆ』は店内で販売もしている(1リットル375円)
文久元年(1861)に味噌・醤油つくりを始め今に至る(現フンドーキン)。創業当時と同じ歴史を持つ趣深い建物でいただけるのは、味噌汁他、味噌を使った料理と臼杵の郷土料理の数々。マグロを使った『きらすまめし』、くちなしの実で黄色く色づけた『黄飯(おうはん)』、けんちん汁のような『かやく』、甘めの醤油タレがかかる『ごま豆腐』など臼杵の味を堪能できる。
住所 | 臼杵市浜町一組 |
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電話 | 0972-62-3333 |
営業 | 8:30〜17:00 食事は10:00〜15:00 |
休み | なし |
席 | 70席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.fundokin.co.jp/ |