エツそのものの味が一番わかるのは刺身。料理人がもっとも気を使う一品だ。通常、オリジナルのごま醤油が添えられる
塩焼き、南蛮、唐揚げなどをする下準備として、骨切りをする。細かな仕事は変わらないが、骨切りの角度など料理人によって異なる
オーソドックスな料理の他、エツの旨さを引き出そうと、料理人は、自慢のエツ料理に工夫を凝らしている
「エツは鮮度が命、穫れたてが格別に美味しい魚です。そのまますぐに冷蔵庫に入れて冷やしたとしても身のくずれが早いんですよ。仕入れたエツはすぐにウロコをとって氷でしめます。その状態にして、お客様を待つのです」。
明治9年創業の『料亭・旅館 三川屋』の六代目女将・大和寿子さんは、エツ料理を提供できる5月1日〜7月20 日(エツ漁が解禁になる期間)の間、最高のエツ料理を提供するために奮闘している。
「エツは流し刺しあみ漁という漁法で獲りますが、船が川の漁場に行くと、網を仕掛けては引き揚げるという作業を何度もしてから港に戻るんです。何度も仕掛けているうちに、初めに穫れたエツは弱ってしまうので、私たちは、2回目の仕掛けを引き揚げたところで持ってきてもらうようにしています。潮の流れもありますが、エツは静かな朝に獲れる事が多く、漁師さんに『朝5時に持って来るけん』と言われれば、その時間から私がさばいています」。
氷でしめられたエツを身に対して直角に薄く切ったエツのあらいは、さっぱりとしていて甘味をも感じる味わい。すりゴマに醤油と刺身醤油を合わせた特製ゴマ醤油がその味を引き立てる。
「エツは産卵のために海から筑後川をのぼっていくのですが、海にいるエツは甘くないんですよ。川にのぼってくると背中が金色になりますが、そうなったら食べ頃です。他の魚の刺身と比べてさっぱりしているので、どれだけでも食べることができますね。うちにいらっしゃる方で、あらいと白ごはんしか食べない人もいるくらいですよ。最高、7匹分のあらいを食べた方もいらっしゃいます(笑)」。
あらいをはじめ、様々な料理にできるエツの味を楽しんでもらおうと、大和さんは現在24種類ほどのエツ料理を用意している。
「一つの種類の魚でこんなにたくさんの料理ができる魚はあまりないですね。淡白で上品な味わいの魚だからできることです。旬のいい素材を使っているので料理自体はオーソドックスなものが多いですね。3000円からご用意していますが、13000円のコースだと全24種類を食べていただけます。それは、10数匹のエツを食べていただくことにもなりますね(笑)」。
その中には、白子、真子の甘露煮、肝の佃煮といった肴にぴったりの珍味もある。
定番でもある『エツの唐揚げ』は料理法としては基本的なものではあるが、頭、お腹、身の上のほう、身の下のほうと、4つに分けてそれぞれ揚げる時間を変え、さらに二度揚げしている。それはどの部位も同じようにカラッと揚がるようにするためだ。もちろん、揚げる前には、あらいの切り方と同様、身に対して直角方向にしっかりと骨切りもされている。そんな細かな配慮は、料亭の心意気でもある。
「三川屋は料亭。本物を出すのが仕事です。5月から7月20日まではエツ、その後は川あんこう(天然なまず)や旅出しうなぎ(天然うなぎ)。旬の天然ものをご用意しています。それは有明海と筑紫二郎(筑後川)のおもてなしです(笑)」。
氷でしめたエツを身に対して直角に薄く切ったエツのあらいは、さっぱりとしていて甘味をも感じる。特製ゴマ醤油がその味を引き立てる
塩焼きなどにする時は細かな骨切りを行なう。エツの両方の面に、身に対して直角に包丁を入れていく
肴にぴったりの白子(手前左)、真子の甘露煮(手前右)、肝の佃煮(奥)。エツのすべてを余すところなく料理している
有明海と筑後川の恵みから生まれるここならではの魚介料理や郷土料理を味わえる。5月1日〜7月20日はエツ、6〜12月は旅出しうなぎ(天然うなぎ)、7〜12月は新名物の筑後川アンコウ(天然ナマズ)と、旬の素材を使った料理の味わいは格別だ。食事だけの利用(エツ料理も食べられる)3000円〜、郷土料理と宿泊コースは8500円〜。
住所 | 福岡県大川市大字向島2222 |
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電話 | 0944-87-3155 |
営業 | 11:00〜22:00 |
休み | なし |
席 | 220席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://mikawaya-okawa.com/index.html |