ニベ、アラ、ハタ、クエなど、海底近くに棲息する大型で白身の魚。身だけでなく、ホホやクチビルなど頭部分、内臓も使う
部位ごとに分け、それぞれに塩をしてゆでたり塩水でゆでる。冷水で冷ました後、切って盛りつける
ネギや、もみじおろしなどの薬味と一緒に、三杯酢で食べる。添えられていることが多い、竹田特産のカボスを絞って食べても美味しい
『ホテル岩城屋』は、竹田市出身の版画家・秋山巌氏の版画50作品あまりがロビーや客室などに飾られた“木版画の宿”。すぐそばには竹林もある静かな宿だ。この静かな雰囲気の中で、竹田に伝わる伝統料理『頭料理』を食べることができる。
厨房で料理長・安部豊喜さんにお話をうかがった。部位ごとに料理された魚が鉢に盛られていく。
「『頭料理』は、アラなどの大型魚の食べられるところはすべて食べる料理。一つの食材を残さず使い切る料理です。身だけではなく内臓も食べますね。うちでも使っている魚は基本的にアラです。大型魚ですからさばいて部位ごとに分けるのはなかなかの力仕事です。90kg級の魚をさばくこともありますよ。さらに、細かな下ごしらえも必要になります。例えば、エラの部分にある血を、包丁でこさぎとることもやってますよ。昔から伝わっているのは、部位ごとにほどよくゆでて食べるというもの。私は、その伝統的な手法も残しつつ、少しアレンジを加えています。表面を焼き締めてタタキにしたものや、エラはゆでたままの形だと苦手な方もいらっしゃるので唐揚げにしたりしています」。
盛付けられていく鉢の中は徐々に華やかになっていく。
「『頭料理』は色味が地味なので、野菜をたくさん入れています。ニンジン、白ネギ、キュウリ、大根、大葉、カイワレ、サニーレタス、海草、モヤシ…彩りもきれいになりますし、サラダ感覚でも食べていただけますね。『頭料理』自体も、それぞれの部位をゆでるため、脂分が少ないヘルシーなものですが、たっぷりの野菜でよりヘルシーになりますね。また、彩りも含めてより楽しんでいただけるように、鉢の中には刺身もあしらえています。この鉢は、会席の中で考えると、“刺身”や“酢の物”としての位置づけですね」。
できあがった『頭料理』は、特製のポン酢で食べる。
「薬味の、もみじおろしを加えても美味しいですよ。合間に野菜を食べていただくと、魚の味もより楽しめます。食感もおもしろいですね」。
皮にも胃袋にもコリコリ感があるが、同じものではない。カラッとした表面の中に不思議な歯応えがあるエラの唐揚げも他にはないもの。「なるほど」「へぇ〜」など、仲間で鉢を囲めば会話も弾みそうだ。
「『頭料理』は1人分は作りにくいので、最低5人前くらいからですね。魚の仕入れのこともありますし、準備に手間と時間がかかるので、できるだけ早い予約をお願いします」。
料理人になられてから『頭料理』に出会ったという安部さん。
「『頭料理』は、魚を少しでも無駄にしないように、骨とウロコ以外はすべて食べてしまいます。普通の料理には使わない、頭や内臓まで食べます。私は料理人になってから初めて『頭料理』を食べ、そして作るようになったのですが、食材を本当に大切にしている料理だと思います。山間で海の魚が貴重だった時代に、生活の知恵や、もったいないという思想から生まれたものですね。昔は祝いの席や寄りごとがあった時に必ずあった料理でしたし、家で作っていた方もいたようです。しかし、食べる物が豊かになってきたので、今は、需要は減ってきているようです。私は、『頭料理』は大分の大切な料理として続けていかなければいけないと思っていますよ。焼酎飲みながら食べると美味しいですしね」。
基本的に使うのは大型魚のアラで、身以外の様々な部位も使う。彩りがきれいな野菜をたっぷりと使うのはこのお店ならでは
部位ごとにゆでるという伝統的な手法に加え、表面を焼き締めてタタキのようにしたものや、唐揚げのようなアレンジを加えた料理もある
特製のポン酢で食べる。薬味の、もみじおろしを加えても美味しい。合間に野菜を食べると魚の味がより楽しめる
『レストラン樹林』は『ホテル岩城屋』の食事処。『竹田弁当』800円や『岡藩殿様椀御膳』3,500円など、竹田の食材を使った和食、洋食を食べられる。『頭料理』(要予約・要問合せ)は、昔から伝わる伝統的なものに加えて、刺身や食べやすくアレンジされたものも合わせて提供。野菜もたっぷりと添えられ、華やかに盛りつけられている。
住所 | 大分県竹田市拝田原161 |
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電話 | 0974-62-2211 |
営業 | 7:00〜9:00/11:30〜14:00/17:30〜OS20:00 |
休み | なし |
席 | 40席 |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.hotel-iwakiya.com/ |