九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

スープ

中華料理は鶏ガラスープが基本だが、『ちゃんぽん』には、鶏ガラと豚骨から作ったスープを使う

具材

キャベツ、モヤシなどの野菜に豚肉と魚介類が入る。夏場はアサリ、冬場はカキを入れる店が多い。タマネギは好みが分かれる具材だ

作り方

具材を炒め、スープを入れ、味付けをしてから麺を入れる。一煮立ちさせることで具材の旨味がスープに移り、麺もそのスープを吸う

語り 中国名菜 京華園 劉 済昌の「ちゃんぽん」

劉 済昌さん

昭和19年に開店した『中国名菜 京華園』は、昭和24年に新地中華街に移転した。代表取締役・劉済昌さんに『ちゃんぽん』についてお話をうかがった。
「長崎の『ちゃんぽん』の特徴は、まず麺ですね。かんすいの代わりに唐灰汁(とうあく)を使うのが長崎独特の麺の製法です。麺の材料は小麦粉、水、唐灰汁。唐灰汁は長崎の製麺所以外では使えないもので、麺に独特の風味を与えるものなのです。長崎には製麺所はたくさんありますが、うちの麺は、自家製の唐灰汁で麺を作っている、長崎で一番古い製麺所にお願いしています。小麦粉も、より甘味のある粉を使っていたり、幾つもの粉をブレンドしていたりと、私が『旨い』と思う麺ですね。麺のコシもいい具合です。生ではなくて、製麺して軽くゆでたものが届きます」。

『ちゃんぽん』の魅力の一つである具材は、ご苦労された時期もあったのだそうだ。
「戦後すぐは食材がなくて、ずいぶんと苦労したと聞いています。モツや砂ずりなどを入れていたこともあったようです。今は、『ちゃんぽん』も『皿うどん』も具材は同じで、キャベツ、モヤシ、タマネギ、ネギ、キクラゲ、豚肉、はんぺん(カマボコ)、アサリかカキを使っています。カキが入る12月、1月、2月は、アサリの時とは違うスープの味わいも楽しめますね。『並ちゃんぽん』は800円なのですが、2010年から『特製ちゃんぽん』にはアワビ、ホタテ、大きいエビなどを入れて、1,550円という値段にしました。『少し高いから売れないかもしれないけど、豪華にしてみよう』と思ってメニューにのせたのですが、これが意外と注文される方が多いんですよ(笑)。観光の方も多いからかもしれませんね」。

「通常の中華料理に使うスープは鶏ガラスープですが、『ちゃんぽん』のスープは、鶏ガラと豚骨を一緒に炊いて作る白濁したスープです。旨味は鶏ガラスープのほうがありますが、濃厚な味わいを出すために豚骨は欠かせませんね。このスープは、『ちゃんぽん』、『皿うどん』や麺類に使っています」。

麺、具材、スープのことを教わったところで、作り方を見せていただいた。まず、麺を軽くゆでる。

独特の色を持つ麺は、あらかじめゆでておく

「スープの中に麺を直接入れる作り方もありますが、うちでは、麺をあらかじめ軽くゆでておきます。こうしたほうが食感やコシが良くなって美味しいんですよ。また、スープの中に直接麺を入れると、スープを吸いすぎてしまうんです。うちの麺は美味しいですから、麺そのものの味を味わっていただきたいということもありますね」。

鍋にラードを入れ、モヤシ、タマネギ、キャベツを炒める

麺を引き上げたら、大きな中華鍋が熱せられ、そこから『ちゃんぽん』は一気にできあがる。鍋でラードを熱し、モヤシ、タマネギ、キャベツを炒める。

スープを入れ、薄口醤油で味付けする

そこにスープ、薄口醤油が加わり、その他の具材を投入する。

その他の具材を入れて少し炊く

少し炊いて味見をして、味を調整した後、さきほどの麺を入れて少し炊く。

麺を入れて少し炊く

その後、丼にまず麺だけを入れ、上に具材をのせ、最後に丼にスープを注いでできあがり。あっという間だ。

まず、麺だけを丼に入れる

「スープは、鶏ガラと豚骨を炊いた寸胴鍋のものを一度漉してから使っています。炊いた寸胴鍋に入っているスープをそのまま使うと、味や濃厚さが変わることがあるからです。そして、うちは具材をすべて炒めているわけではないですね。炒めずにスープに入れると魚介から、より旨味も出ますしね。味付けは薄口醤油だけで塩は入れません。塩を入れると塩の味が立ちすぎてしまうからです。うちで使っているのは塩分が少し多い、特別なブレンドで作ってもらっている薄口醤油。長崎の薄口醤油は色が特に薄いんですよ。皿うどんの味は甘さ控えめになってきましたが、『ちゃんぽん』の味はあまり変わっていませんね。全体を通して、とにかく早く作ることが大切です。時間が命ですね。それぞれの具材の味がからみ合っての『ちゃんぽん』ですが、麺や具材を炊き込んでいるわけではないんですよ。新鮮な具材であれば2/3くらい火が通ればいいですからね。途中の味見も重要ですよ。素材の状態によって、水分量も違うし、スープの蒸発の加減も変わってきますから、鍋ごとに毎回調整しないといけません。毎回、しっかりと手を入れて作っていますよ」。

具材をのせて形を整え、スープを注ぐ

丼の中央に具材が小さな山のように盛られた『ちゃんぽん』。具材、麺、スープのそれぞれの味が感じられる中、すべてが一体化している。テーブルの上に置かれたコショウを少しかけて食べるのも美味しい。
「具材としてタマネギを入れる店と入れない店がありますが、タマネギを入れると甘味が出ますね。お客さんの中には、『タマネギ抜きで』とか『ネギ抜きで』という注文をする方もいらっしゃいます。ベジタリアンの方がいらっしゃったこともあるのですが、スープはどうしようもないので、ベジタリアンの方には対応できませんでした(笑)」。

毎年、『ランタンフェスティバル』が行なわれる2月と、お盆の8月が忙しいという劉さん。その他、中華街は、秋のお月見シーズンもイベントが行われ賑わうそうだ。
「2005年から9月中旬くらいに『長崎中華街 中秋節』というイベントを開催しています。中華街の各店で、1,000円のお得なセットメニューを食べられたりもするんですよ。ランタンフェスティバルも、私たち中華料理店から始まったもの。みんなライバルではありますが仲間なんです!」。

『長崎ちゃんぽん』が多くの人の心をつかむのも、各店が切磋琢磨し結びついているからに違いない。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

スープ

鶏ガラと豚骨を一緒に炊いた白濁スープ。鶏ガラスープの深い旨味と豚骨スープの濃厚なコクが融合している

具材

キャベツ、モヤシ、タマネギ、ネギ、キクラゲ、豚肉、はんぺん(カマボコ)、アサリ(冬場はカキ)。タマネギから出る甘味も旨い

作り方

モヤシ、タマネギ、キャベツを炒め、スープを入れ薄口醤油で味付け。その他の具材を入れ、あらかじめゆでた麺を入れて少し炊く

このページを共有・ブックマークする

中国名菜 京華園麺も具材も…厳選した素材でつくる中華料理

昭和19年創業、昭和24年に現在の中華街に移転した中華料理店。長崎で一番歴史ある製麺所から仕入れるという麺(ちゃんぽん麺・皿うどんの麺)は、厳選した小麦粉の甘味が引き立っている。独特の香りとやわらかな甘味を持つ、麺そのものの味も楽しみたい。平日の11:00〜15:00はスーパイコ定食(840円)他のランチメニューも。

『ちゃんぽん』800円。具材が豪華になる『特製ちゃんぽん』は1,550円
『皿うどん(細麺)』800円。あんのかからない『皿うどん(太麺)』800円、『ちゃんぽん』800円
ハナニラを炒めて切ったものをたっぷりかける『ニラパンメン』800円。麺は『ちゃんぽん』と同じだ
『角煮どんぶり』1,100円。角煮は煮込んだあと蒸すことで、形を残したまま、やわらかくする
5階建てのビルには個室や大広間も完備。写真はカジュアルな1階のレストランスペース

中国名菜 京華園

住所 長崎市新地町9-7
電話 095-821-1507
営業 11:00〜15:15/17:00〜21:00
休み 不定月1回
300席
カード
駐車場 なし
URL http://www.kyokaen.co.jp
お店情報をプリントする

お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧