闘鶏用として生まれた『薩摩鶏』の血筋を持つ地鶏がよく使われている。部位は、ムネ肉、モモ肉、砂ズリなどだ
鹿児島では、皮面だけを炙ってそぎ切りにしたものが多い。湯や酒にくぐらせるなど表面だけを処理した鶏肉を使うこともある
タレは鹿児島で好まれる甘口の醤油が使われる事が多い。薬味はおろしニンニク、おろしショウガ、柚子こしょうなど
多くの飲食店が立ち並びにぎわいを見せる鹿児島市中心部の繁華街・天文館(てんもんかん)。『松坂』は1969(昭和44年)の創業当初から、厳選した鹿児島県産の黒毛和牛・黒豚を使った焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶの名店として知られている。また、1971(昭和46年)に誕生した地鶏『さつま若しゃも』を提供する1号店としても歴史を刻んでいる。
現在、『さつま若しゃも』は刺身、たたき、ごて焼きといった料理で食べることができる。
店主・横山径子さんにお話をうかがった。
「『さつま若しゃも』は1972年(昭和47年)に開催された鹿児島『太陽国体』の時に多くの方に楽しんでもらおうと開発されました。『さつま若しゃも』の父方は『薩摩鶏』。今から300年ほど前の江戸時代初期に、軍鶏と小国(しょうこく・闘鶏の一種)を交配して作られたと言われ、鹿児島県を中心とする南九州で広く飼われていた鶏です。『薩摩鶏』はもともと闘鶏用の鶏として飼われていましたが、姿は美しく、肉質もとてもすぐれているということが知られていました。『薩摩鶏』を父方に、『ホワイトプリマスロック(卵肉兼用種として開発されたアメリカ原産の鶏)』を母方に交配して生まれたのが『さつま若しゃも』なのです。とても美味しいですよ」。
厨房で料理長・二之形俊二さんに刺身とたたきの作り方を見せていただいた。
●刺身
「刺身に使うのは基本的にはササミです。酒、水、塩を合わせた玉酒(たまざけ)にくぐらせてから筋を取り除き、切っていきます」。
「刺身と同じように生のササミを使った『鶏にぎり』では、刺身よりも身を厚めに切っています」。タマネギスライスと大葉が置かれた上に瑞々しいササミが置かれ、ネギとすりおろしたショウガが添えられる。甘口の醤油につけて食べる。
●たたき
「たたきはまずムネ肉の皮面を炙り、裏返して両面を炙ってから切ります」。
「中はレアな感じですね」。
「ちなみに鹿児島では、完全な生ではなくて、一般的にはたたきと呼んでいるものを鶏の刺身と言うことも多いですね」。タマネギスライスと大葉が置かれた上に置かれ、ネギともみじおろしが添えられる。添えられたポン酢と合わせて食べる。
刺身のササミはとろけるようなやわらかさで甘口の醤油がよく合う。たたきはやわらかさの中にもほどよい弾力を持つ。どちらも濃厚な味わいだ。
「毎日新鮮なものが届きますし、どちらも肉質の良さをそのまま楽しんでいただけると思います。肉は締まりがよくて味は濃厚ですね。うちで使っている『さつま若しゃも』は薩摩川内市の竹林で放し飼いされ、80日以上飼育されています。そこから、まるみのある深い味わいと締まりのある肉質が生まれるのです。モモ肉は『ごて焼き』でどうぞ!!」。
鹿児島ではモモのことを“ごて”と呼ぶとのこと。ぶつ切りにされたモモ肉を自分でほどよく焼き、添えられる塩か抹茶塩をつけて食べる。刺身、たたきとは違うジューシーな食感が楽しめる。
「鶏肉は、小さい頃、祖父の家でよく食べていました。鶏を締めるのも見ていましたが…食べてました(笑)。刺身をはじめ、かしわごはん、筑前煮で食べるのも好きでしたね。昔の肉は少し硬かったですが、今は当時よりもずい分食べやすくなっていますね。そんな鶏肉の味が一番よくわかるのは『地鶏の刺身』だと思います。今は鶏を家で締めて食べるという方はほとんどいないと思いますが、鹿児島の方は鶏肉が好きですね。ヘルシー志向なのか、お店でも男性で鶏肉を食べる方が以前より増えていますよ。刺身とたたきは焼酎にとても合うからかもしれませんが(笑)。年配の方は刺身と合わせてお湯割りにして飲む方が多いですね」。
天文館に店を構えて半世紀近く。お客さんは口コミで少しずつ増えていったのだそうだ。「人と人とのつながりをずっと大切にしてきましたし、いつも肝に銘じているのは、安全で安心できる心からのおもてなし。来てくださるお客さんはいい方ばかりでうれしいですね。みなさんが食べて美味しかったと喜んでいただけるようなお店でありたいと思っています」。リピーターが多く、親子三代で訪れるお客さんも多いとのこと。横山さんの想いは多くの方に届いている。
1971年に誕生した地鶏『さつま若しゃも』を使用。薩摩川内市の竹林で放し飼いにされた鶏を取り寄せている
刺身はササミを玉酒にくぐらせた後、筋を取り除きスライス。(タタキはムネ肉の両面を炙りスライスする)
刺身のタレは甘口の醤油。薬味としてショウガが添えられる。(もみじおろしが添えられるタタキはポン酢で食べる)
1969年創業、鹿児島県産の黒毛和牛・黒豚を使った焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶの名店として知られている。1971年に誕生した地鶏『さつま若しゃも』を提供した1号店でもあり、ササミを使った『刺身』と『鶏にぎり』、ムネ肉を使った『たたき』、モモ肉を焼く『ごて焼き』がメニューに並ぶ。肉のほどよい締まりと濃厚な味わいを堪能したい。
住所 | 鹿児島県鹿児島市千日町9-3 天文館Kビル2階 |
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電話 | 099-225-2929 |
営業 | 12:00〜OS14:00/17:00〜OS23:00(日曜祝日OS22:00) |
休み | 火曜昼(夜は年中無休) |
席 | 78席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.matsusaka-group.com |