家庭ではブリ、マグロ、アジなど季節の魚を一口大に切ったものを使うことが多いが、飲食店ではマグロの赤身を使うことが多い
おからと一緒にまぜられるのは、刻んだネギやすりおろしたショウガ。カイワレ大根を入れる店もある。カボスの絞り汁も欠かせない
きらすまめしに使われる唯一の調味料で、この中に魚を入れてヅケにする。醤油のみ、三杯酢など、各店・各家庭ならではの味だ
店は平成7年に国宝となった『臼杵石仏』の入口にある。
「石仏は竹やぶの中にあって、近所の人しか知らなかったようです。明治43年に京都帝国大学の小川琢治教授が訪れた時、石仏の重要性に気づかれたようなのです。そして、『この石仏は必ず世に広まるから』と教授を案内した初代に茶店をやることを勧めたのだそうです。ですから、私たちは石仏がまだ観光地化してない頃から店をやっているんですよ。創業時からも料理も出していたと聞いています。臼杵の産物と味覚の店としてやらせていただいています」。
臼杵石仏と店の関係を4代目の宇佐美裕之さんはそう語ってくれた。
場所がら、県外からも多くの観光客が訪れるが、やはり「きらすまめしって何ですか?」とよく尋ねられるとのこと。
「『臼杵の郷土料理で刺身におからをまぶしたものです』とお応えしますし、そこから会話が生まれるのもうれしいことです。『きらすまめし』は郷土料理の中では、中心というよりもはしっこの一品かもしれませんが、それにひかれる人が必ずいるみたいですね」。
その『きらすまめし』は、昔と変わらない素朴な作り方だ。
「使う魚は臼杵港で水揚げされた旬の魚ですが、彩りもきれいなのでマグロの赤身を使うことが多いですね。もちろん刺身でも食べられる新鮮なもの。これを切ってボールに入れ、酢、砂糖、醤油などで作った三杯酢をふりかけます。そこに近所の豆腐屋から仕入れているおからを入れて、ほぐしながら混ぜます。『きらす』はおからのことで、ほぐすことが『まめし』ということですね。マグロは赤身だから華やかですが、タイ、アジ、カンパチなどを使う場合は、彩りづけに紅しょうがを加えます」。
魚の切り身とおからがほどよく混ざったら仕上げの薬味〜ネギ、しょうが汁、カボスの絞り汁〜を加えながら、それらが一体になるように混ぜていく。そして、丸く形を作って盛りつけ、カイワレ大根をのせてできあがり。マグロの赤色がおからの白色の中でひきたっている。
「きらすまめしは江戸時代の臼杵の質素倹約の精神を伝えるものです。地元の人はよく食べます。特に臼杵人の酒の肴には欠かせないものですね(笑)。家庭でも作られますが、魚屋にも売ってますし、スーパーの惣菜or総菜コーナーでも売られていますよ」。
陶芸家でもある宇佐美さんが焼いた器に盛られたきらすまめしをいただくと、そのやわらかな味わいになんとも落ち着く。おからと刺身ならば、どんな場所でも作れたはずだが、これは臼杵の郷土料理。臼杵の先人たちの知恵に思いを馳せた。
最後に宇佐美さんからこんな言葉をいただいた。
「春は桜、夏は蓮、花も変わりますし、石仏は季節によって違う表情を見せてくれます。大分には石の仏さんはいっぱいありますが、技術、美しさともにすばらしいものだと思います。私たちもこの場所でやるからには、負けないように郷土料理の味に磨きをかけていきたいと思っています」。
基本的には臼杵港で水揚げされた旬の魚を使うが、おからと合わせた時に彩りがきれいなマグロの赤身を使うことが多い
しょうが汁、カボスの絞り汁、ネギ、カイワレ大根。魚にタイ、アジ、カンパチなどを使う場合は、彩りづけに紅しょうがを加える
酢、砂糖、醤油などで作った三杯酢がペースだが、後からふりかけるしょうが汁やカボスの絞り汁も、味付けに欠かせないもの
国宝『臼杵石仏』の入口にある飲食店&土産屋。きらすまめしをはじめ、黄飯、茶台寿司、だんご汁など、臼杵や大分ならではの料理を味わえる。7、8月は近くの『古代蓮の里』に約1万本の蓮の花が咲き、蓮根や蓮の実を使った蓮料理(3150円)も提供。料理が盛られている味わいのある器は、陶芸家でもある店主・宇佐美裕之さんの作品だ。
住所 | 臼杵市深田833-5 |
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電話 | 0972-65-3333 |
営業 | 8:00〜17:00 ※時間外でも予約があれば営業 |
休み | なし |
席 | 300席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://sekibutukankocenter.com/ |