殻から身を外し、よく洗って身を適当な厚さに切る。食べやすいように、切る前に、身に切れ目を入れることもある
麦味噌や米味噌に、醤油・砂糖・みりんなどを加えて味付けした、作り手自慢の特製味噌が使われている
殻に身と肝をのせて特製味噌を塗って焼く。身の食感や甘みを引き出すため、焼き方にも工夫が施されている
地元の魚介を使った寿司を中心に、地元ならではの料理を提供している『寿司処 八千代』。玄関先にある生簀には『ながらめ』も入れられている。
「魚介は南種子の島間港(しままこう)に水揚げされた魚を仕入れに行っています。『ながらめ』は生命力が強いので、生簀の管理がよければ、しばらくは元気ですよ! 5月〜8月が漁の時期でもありますし、美味しい時期ですね」。
そう教えてくださったのは、お父様と厨房に立たれている二代目・八汐航さんだ。
八汐さんが生簀から取り出した『ながらめ』は、アワビに似ている一枚貝。
「『ながらめ』はアワビの仲間ですが、まず、アワビとは大きさが違います。『ながらめ』のほうが小ぶりですね。そして、アワビの方が、身がかたいです。『ながらめ』はアワビよりも身がやわらかくて、食べた時に甘味を感じられますね。ちなみに値段も『ながらめ』の方が高いです(笑)」。
アワビと言えば、東北地方などでは干しアワビが作られるが、どうやら『干しながらめ』は作られていないようだ。
「東北の干しアワビは冷たい風にさらすことによってできるものですから、暑い種子島では『干しながらめ』を作ることはできないのでしょうね。5月から8月の暑い時期に獲れる貝でもありますしね」。
身が収縮する新鮮な『ながらめ』で、『ながらめの味噌焼き』を作っていただいた。
「まず、塩でもんでよく洗います。汚れを取る意味もありますが、塩でもむことで身を締めるんです。水で洗うよりも身の締まりがよくなりますね。
真ん中あたりに殻と身をつなぐ貝柱があるので、そこに包丁を入れて身と殻を切り離します。
身の端についている口と食道のところには、砂など余分なものが入っていますから切り落とします。そして身をさらに洗います」。
次に身を切る。
「身は切れ目を入れてから、適当な厚さに切ります。切れ目を入れるのはできあがった時に食べやすいようにするためです。
切った身と肝を殻にのせて特製味噌を塗ります。味噌は自家製の麦味噌に、みりん、醤油などを加えて作ったものです。『ながらめの味噌焼き』専用の特製味噌ですね。
ガス台に網をのせ、殻を下にして下火で焼きます。刺身でも食べられるものですし、私は下火で軽く焼くのがいいと思っているんです。
上にフライパンをかぶせて蒸し焼きのようにします。
最後にバーナーで表面の味噌を炙って焦げ目をつけたらできあがりです。レアな感じが美味しいですね」。
種子島でよく知られているタケノコ『苦竹』(にがだけ)の佃煮と、種子島でも栽培されているアイスプラントが添えられた『ながらめの味噌焼き』。塩で締められ、コリコリ感がより増しているようだ。特製味噌の甘味と焼き目の香ばしさに焼酎もすすむ。肝も濃厚な味わいだ。
「肝は、たいてい争奪戦になります。だから『ながらめの味噌焼き』を食べる時は、1人1コずつ頼まれるのがいいかもしれません(笑)。肝も焼酎にとてもよく合うので、肝をなめながら飲むというのもいいですね。焼く以外に、ゆでる、生でそのまま、といった肝の食べ方もあります」。
『ながらめの握り寿司』も作っていただいた。
「刺身の時は小さめに切りますが、握り寿司の時は食べやすいように隠し包丁を入れて大きめに切り、シャリの上にのせます」。
コリコリとした『ながらめ』の身にシャリがからみつく、ぜいたくな一品だ。『ながらめ』は、その他に塩焼きや、ゆでたものを味噌漬けにしたものも美味しいのだそうだ。
「『ながらめ』は値段的には安くはありませんが、観光の方が『種子島ならではの味を!』と言われた時には、おすすめしますね。実は、私も恐れおおくてなかなか食べられません(笑)。昔はたくさん獲れていたようで、漁師以外の人も海で獲って食べていたようです。昔は塩辛もあったのですが、それはすぐには食べきれないほど獲れていたということなんでしょうね。今は数が少なくなったので保護もしているし、不正な漁が行なわれないように監視もされています。稚貝の放流などもしていますね」。
東京で仕事をされて種子島に帰ってこられた八汐さんは、昔はわからなかった地元の豊かさに気づかされているとのこと。
「帰ってきて改めて思うのは種子島が平和でおだやかな島だということ。小さい頃から魚は食べていましたが、種子島は食材が本当に山ほどある場所ですね。海のものも山のものも…。島間港に水揚げされる魚は種類も豊富です。かつてはまったく知られていなかった『ながらめ』は、最近では東京でも知られるようになってきました。このあたりでは『水イカ』と呼ばれているアオリイカも、東京でも『水イカ』として認知されるようになってきました。魚介以外でも、苦竹や安納芋といった美味しい野菜類もあります。地元の食材をもっとお伝えしていきたいですね」。
身を締めるために塩でもんで良く洗う。殻から身を外し、食べやすいように身に切れ目を入れてから適当な厚さに切る
自家製の麦味噌に、みりん、醤油などを加えて作った特製味噌。『ながらめの味噌焼き』専用の味噌だ
網にのせ殻を下にして下火で軽く焼く。フライパンをかぶせて蒸し焼きのようにした後、バーナーで表面の味噌を炙って焦げ目をつける
生簀に泳ぐ魚介は、南種子の島間港(しままこう)に水揚げされたもの。種子島の旬の魚介は、その姿をまず目で楽しんだ後、一品料理や寿司で味わうことができる。『ながらめの味噌焼き』は、生簀から取り出した『ながらめ』を切り、自家製味噌に味付けした特製味噌を塗ってレアに焼く。味噌が焼けた香ばしさと身の甘味が絶妙な加減だ。
住所 | 熊毛郡中種子町野間5297-47 |
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電話 | 0997-27-0066 |
営業 | 11:30〜14:00/17:00〜23:00 |
休み | 火曜(※7・8・11・12月は無休) |
席 | 120席(2階は宴会場) |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://8chiyo.com/ |