フグの皮をはぎ、よく洗って三枚におろした後、一口大のぶつ切りやそぎ切りにしておく
湯引きした後、氷水に入れて身を引き締め、水気を切る。湯引きの時間によって表面の色と歯ごたえが変わる
ポン酢で食べる。薬味にネギ、もみじおろし、梅肉、おろしニンニク、フクシュ(ニンニクの葉)などが添えられる
湧水の街・島原。道端の堀に鯉が泳ぐ街としても知られている。『天下の味処 ほうじゅう』は、昼間は遊歩道となる道に面したお店。店内に入ると聞こえてくるのは店主・宮川豊寿さんの「いらっしゃい」という声と水の流れる音。店内の中央には小川が流れているのだ。
「島原は湧水が豊富やけん、その水がもったいないと思いまして(笑)、小川を作りました。外の堀には90cmクラスの鯉が50匹、50cmクラスの鯉が30匹くらいおるようですよ」。
カウンターに立つ宮川さんが作るのは、有明海の新鮮な魚介や地元の旬の野菜を使った料理の数々。『具雑煮』、『いぎりす』(海草の練り物)、『がね炊き』(フグを炊いた料理)、『がんばの湯引き』など島原ならではの味がそろう。
「『がんばの湯引き』は子どもの頃からよう食べよったですよ。自分らのじいちゃんの時代はフグが豊富に揚がりよったんです。大きいのだけで、小さいフグは食べよらんかったですもんね。島原ではフグを食べる時は『てっさ(刺身)』よりも湯引きが多かですね。刺身はフグ以外の魚のものをよう食べよります」。
『がんばの湯引き』作りを見せていただいた。今日使うのはコモンフグだ。
「皮をはいで三枚におろします。もちろん刺身にもできますよ。それをそぎ切りにします。三枚におろした身が大きくて厚いフグは包丁をまっすぐに入れるけど、身が薄いフグは包丁をねかせて切り、厚みを出すようにしよります。島原では厚めの身が好まれるけんね」。
湯引きする前にひと手間加える。切られた身に塩をふりかけて軽くもむのだ。
「表面に皮膜を作る感じ。こうすると湯引きした時に表面が白くなり過ぎなくてきれいになるんよね」。
湯引きは数秒、その後、すぐに冷水に入れる。
「うちの料理は湧水を使っていて、具雑煮などは湧水じゃないとうちの味は出らんのですよ。でも、湯引きするのは湧水じゃなくてもいいかもしれんね(笑)。もちろん湯引きに使う水も湧水やけどね(笑)」。
できあがった湯引きは、薬味として添えられるネギ、もみじおろし、梅肉、フクシュ(ニンニクの葉)をからめて特製のポン酢で食べる。
「『てっさ』には、梅肉やフクシュはつかんよね。梅干しは昔から毒消しということで、『がんばの湯引き』と一緒に食べよるよ。効いとるのかどうかはようわからんけど(笑)」。
半透明な白色の身にポン酢と薬味をからめて口の中に入れると、プリプリの歯ごたえだ。
「『がんばの湯引き』は、味は淡白やけど、食感がいいよね」。
宮川さんは、この歯ごたえのいい湯引きを使ったオリジナルのメニューを考案。お店の人気メニューとなっている『ガンバずし』だ。
「『がんば』を使った寿司がなかったので考えんたんよ。寿司めしに『がんばの湯引き』をのせ、梅干しと、梅干しと一緒に漬けとるしそを合わせた押し寿司です。そのまま食べてもおいしいよ。どうしてももの足りない人は醤油をつけたらいいけど、梅干しと醤油は実は相性があんまりよくないんよね。あとね、島原ならではのがんば料理もあるよ。フグの身に梅干しとフクシュを合わせて炊く『がね炊き』とか、『焼きふぐ』と呼びよるフグのたたきとかね。どれもいいつまみ。焼酎に合うよ(笑)」。
2階席までも聞こえる小川のせせらぎと、気風のいい宮川さんの声と、島原ならではの味…なごみの時間を過ごせる場所だ。
皮をはいで三枚におろす。そぎ切りにした後、湯引きした後の色合いをきれいにするため身に塩をかけて軽くもむ ※写真はコモンフグ
色が変わる程度に数秒湯引きした後、氷水に入れて身を引き締める。水気をよく切って盛り付ける
薬味として添えられるネギ、もみじおろし、梅肉、フクシュ(ニンニクの葉)をからめて、特製のポン酢で食べる
扉を開けると中央に小川が流れているというユニークな店内。有明海の新鮮な魚介や地元の旬の野菜を使った料理の数々や、『具雑煮』、『いぎりす(海草の練り物)』、『がね炊き(フグを炊いた料理)』、『がんばの湯引き』など島原ならではの味もそろう。湯引きしたフグに梅肉などを合わせて押し寿司にした『ガンバずし』はオリジナルの人気料理だ。