活きドジョウをよく洗って表面のぬめりを落とした後、さばいて開き、骨を取り除く。そして、素焼きを行なう
味付けに使うのは特製の割下で、『柳川鍋』専用に作られたものだ。仕上げに山椒と一味唐辛子をふりかける
土鍋にささがきしたゴボウと素焼きしたドジョウを並べて割下を注ぎ、火を入れた後、溶き卵を2回にわけて入れる。最後にネギをちらす
水郷・柳川の観光名物として知られる川下り。どんこ船と呼ばれる船で掘割(ほりわり/柳川城築城の際、治水や農業用水のために作られた堀)を巡る船旅だ。鰻料理や『柳川鍋』を提供する『楠川』はこの川下りの終点近く、掘割に面した場所で平成7年にオープンした。
「店の前に楠があって、後ろは川(掘割)だから、店名は『楠川』なんですよ」と、店主・江口廣徳(えぐち ひろのり)さん。柳川では甘味が強く濃厚なタレを使った『鰻のせいろ蒸し』を出す店舗も多いが、江口さんがつくる『鰻のせいろ蒸し』はさっぱりとした味わいだ。『鰻のせいろ蒸し』は持ち帰りもできるが、「やはり、ここで食べていただきたいですね。持ち帰りだと7〜8割位の美味しさしか味わっていただけないと思うのです。それに、見た目の感動や、蓋を開けた時にふわっと立ちのぼる香りも楽しんでいただきたいですからね。『柳川鍋』も同じです。目の前に運ばれ、蓋を開けた瞬間を感じていただければと思います」。
『柳川鍋』の作り方を教えていただいた。まずはドジョウの下ごしらえについて。
「ドジョウは小さいことと表面にぬめりがあるのでちょっと手間のかかる食材です。関東では、ドジョウをまるごと使うこともあるようですが、まるごとだと骨が多いので、さばいて開いて骨を取り除きます。
それもなかなか大変なんですよ(笑)。そして、素焼きをしますが、使うのはやはり活きドジョウじゃないとダメですね。素焼きし焼いた状態でもわかるものなんです。冷凍物など、焼いてもへたっているというのでしょうか、一目見ただけでわかりますよ」。
土鍋にささがきしたゴボウと割下(わりした/煮物料理などに使う調味した煮汁。出汁・醤油・砂糖・ミリンなどを合わせるのが一般的)を入れ、そこに素焼きしたドジョウを放射状に並べ、火をつける。
「割下は『柳川鍋』専用の特製ですね。ドジョウは5匹分です。頭や尾の部分を落とすので、実際に食べていただくのは、仕入れた量の半分くらいになってしまうんですよ」。
その後、溶き卵を2回に分けて入れ、山椒、一味唐辛子をふりかけ、ネギをちらしてできあがり。蓋をして特製の木枠にのせ、テーブルに運ばれる。
蓋をあけると立ちのぼる香りと、表面のグツグツ感が食欲をそそる。
「有田焼の土鍋を使っているのですが、保温性が高くてグツグツ感が続きますね。中には開店当初から使っているものもあります」。
卵がたっぷりと入った『柳川鍋』はほどよい甘みと醤油の風味がやわらかなドジョウの身を包む。「ドジョウを卵とじした料理ですから、ごはんの上にのせて、丼みたいにして食べていただいても美味しいですよ。一年中食べられますが、脂がのっている寒い時期がより美味しいと思います」。
入口の外に置かれた木製の献立表に書かれているメニューは3つ。『鰻せいろ蒸し』『蒲焼定食』、そして『柳川鍋定食』だ。
「鰻料理を食べられるお客さんが多いですが、『柳川鍋』が好きな方も多いですね。初めて食べた方にも『美味しかった』と言っていただいていますよ。雛祭り、桜、藤、新緑、(秋の)白秋祭、など柳川はどの季節もいいところです。ぜひ来ていただきたいですね。一緒に『柳川鍋』もぜひ!!(笑)」。
活きドジョウをよく洗って表面のぬめりを落とした後、さばいて開き、骨を取り除く。そして、素焼きを行なう
味付けに使うのは特製の割下で、『柳川鍋』専用に作られたものだ。仕上げに山椒と一味唐辛子をふりかける
土鍋にささがきしたゴボウと素焼きしたドジョウを並べて割下を注ぎ、火を入れた後、溶き卵を2回にわけて入れる。最後にネギをちらす
川下りの終点近くの掘割の横にあり、窓の外には掘割の四季折々の風景や行き交う船の姿を見ることができる。柳川らしい雰囲気を感じながら食べられるのは『鰻のせいろ蒸し』をはじめとした鰻料理と『柳川鍋』。『柳川鍋』は、骨を取り除き開いて素焼きにしたドジョウとささがきしたゴボウを特製の割下で煮込み、たっぷりの卵でとじる。