九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

カニの下ごしらえ

カニはゆでる前に、目打ちなどで中央部を突いて一瞬で絞めなければならない。絞め方は料理人によって異なる

ゆで方

塩ゆでするという単純な料理だが、カニの状態によって、塩分濃度や、ゆで時間などに細かな調節がなされている

自慢のカニ料理

基本となるゆでガニの他、各店は、濃厚な旨味を持つ『竹崎カニ』を使った自慢の料理を提供している

語り 海上館 坂口真吾の「竹崎カニ」

坂口真吾さん

「有明海は内海だからおだやかですよね。夏場は、すぐ目の前の海に、『竹崎カニ』を獲る網がしかけられるんですよ」と、ご主人・坂口真吾さん。『海上館』は有明海に臨む温泉宿。料理のメインとなるのは一年を通して『竹崎カニ』だ。

生簀の中で大きさごとに分けられた『竹崎カニ』

「夏はオスが美味しくて、冬は卵をもったメスが美味しいですよ。このあたりでは、夏のオスが好きな人も多いですね。オスとメスの違いは…実際見ていただいたほうが早いです(笑)」。 ということで、厨房に案内していただいた。

メスの『竹崎カニ』とオスの『竹崎カニ』 左がメスです

「丸みを帯びている方がメスで、手が長い方はオスです。裏側の腹の模様も違うのですぐに見分けが付きますよ。黄色いのが見えるのは、卵が入っている印ですから、それでもメスだとわかりますね。色の具合で卵の詰まり具合もわかりますよ」。
ずんぐりとした釣り鐘模様があるのがメス、ひょろながい釣り鐘模様があるのがオスだ。

腹を指で押さえることで身の詰まり具合がわかる

「カニを持つ時は、裏側からおしりを持つようにすれば、ハサミも届かないので危なくはないですよ。腹の部分を指で押してかたい場合は、大体身が詰まっていますが、やわらかくへこむようだと身が入っていません。そういうのはフライにしたり出汁をとるのに使ったりしますね。身が詰まっている一番いい状態のものだけをゆでガニにするんです」。

口から目打ちを刺して締める

カニはゆでる前に締める。
「口のところから目打ちを刺して、腹の真ん中あたりの急所を突くと簡単にしめることができます。

洗ってアクを抜く

水につけてアクを取った後、ゆではじめます。ゆで汁は、カニからとった出汁に粗塩を加えたもの。海水くらいの塩辛さが基本です。獲れる場所や時期でカニの状態が違うため、それに合わせて塩加減やゆで時間も変えています。シンプルな料理だからこそ、ちょっとしたことで味が変わってしまいますね」。

ゆで汁に背中の方から入れる

ゆで汁に甲羅から入れられたカニは、色が徐々に鮮やかな赤色に変わっていく。ゆで時間は10〜20分だ。

ふたをしてゆでる

「メスはゆですぎると卵がかたくなってしまいますので、私は卵のやわらかい部分が残るようにしています。鍋から出してできあがりではありません。甲羅の中の身とカニミソを余熱で蒸す感覚です。

鍋から出したあと、7〜8分後が食べ頃だ

ですから、鍋から出して7〜8分後が食べ頃ですね。お客様の前に運ばれた時にちょうどいいというわけです」。

食べ頃にゆであげた『竹崎カニ』をいただく。身もカニミソも絶妙な火の通り具合でやわらかい。カニの甘味と旨味がしっかりと感じられる。
「『竹崎カニ』の味は濃厚ですよね。全国を回って様々なカニを食べましたが、『竹崎カニ』はとにかく味が濃いです。焼酎に合います(笑)。『竹崎カニ』、つまりワタリガニは、全国で獲れるカニです。けれど、他の地域は砂地で有明海は干潟。棲んでいる場所が違うんです。干潟は太陽の光を浴びて、ミネラル分も豊富、だからプランクトンなども栄養豊富で、それをエサにする『竹崎カニ』も濃厚で旨いんです。有明海で獲れる魚も、それで身が甘いのだと思いますよ。『竹崎カニ』はそこまでメジャーではないので、もっと食べていただいて、旨さを感じていただけるとうれしいですね」。

最高の素材である『竹崎カニ』を最高の状態でお客さんに食べていただくため、試食は欠かせないのだそう。
「見た目や触った感触に過去の知識を合わせて美味しくゆでるようにしているわけですが、食べてみないと分からないこともあります。自分が考えて料理したことと、実際の味の答え合わせが必要ですね。『思ったより甘味が少なかったな』とかですね。小さい頃はあまり食べていませんでしたが、今はいつも食べています。そして、もっと好きにならなきゃいけないですね。そうじゃないと、『竹崎カニ』を本当に好きなお客さんに負けてしまいますから(笑)。ゆでガニ、焼きガニ、カニ刺しといった昔からあるカニ料理を提供する一方、パスタに使うなど、ランチで食べられるメニューにも今後チャレンジしていきたいです」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

カニの下ごしらえ

指を腹で押さえた時に硬いカニ=身の詰まっているカニを選び、口のところから目打ちを入れて締めた後、水洗いする

ゆで方

身の詰まっていないカニでとった出汁に塩を加えて、海水程度の塩分濃度にしたゆで汁を使う。鍋からあげた後、余熱で仕上げる感覚

自慢のカニ料理

冬場は『カニ刺し』の季節。軽く湯通しすることで身がほぐれやすくなっている。身もカニミソも卵も濃厚な旨味を持つ

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海上館 カニからとった出汁を使うゆでガニ

有明海に面した温泉宿で、各部屋で海を見ながら、一年中竹崎カニを使ったコース料理をいただくことができる。ゆでガニに使うゆで汁は、身の詰まり具合が少ないカニからとった出汁に塩をくわえたもの。店主・坂口真吾さんは、日々状態の違うカニを、最も美味しい状態でゆであげるため、塩加減とゆで時間に細かな気を配っている。

『ゆでガニ』1匹2,500円前後。このゆでたカニを取り寄せることもできる。『ゆでガニ』も付く昼のコースは1人5,250円〜(2名以上より)。夕食にゆでガニが付く1泊2食付き平日13,800円〜(休日前15,800円〜)
『カニ刺し』2,500円〜3,000円
部屋からは有明海が見える
露天付きの部屋もある『海上風呂館』

海上館

住所 藤津郡太良町大浦丙976-12
電話 0954-68-3506
営業 (食事休憩)11:00〜15:00
定休日 なし
15室
カード
駐車場 あり
URL http://kaijyoukan.com
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