九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

シロウオ

店舗に生きたまま届くシロウオは、生簀(いけす)の中に入れられる。シロウオは高温になると弱るため、水温調節が重要だ

踊り食いのポン酢

シロウオと一緒に口に入れて飲み込むため、通常のポン酢よりも酸味や塩分を抑えたマイルドな味わいにつくられているようだ

その他のシロウオ料理

踊り食いの他にも、天ぷら(かき揚げ)、佃煮、卵とじなど、淡白な身の味わいを生かした、様々な料理を楽しむことができる

語り 博多 割烹 かじ 加治冨美子の「シロウオ」

女将・加治冨美子さん

昭和34年創業の中洲の入口にある老舗割烹。下関南風泊(はえどまり)市場から届く天然とらふぐを一年中食べられるお店として知られている。その他にも玄界灘のヤリイカやオコゼ、関アジ・関サバなど新鮮な魚介を楽しめる。

シロウオ料理は2〜4月の季節限定メニュー。二代目となる女将・加治冨美子さんも毎年心待ちにされているとのこと。
「梅の花が咲き、菜の花が咲き、川の水が少しぬるみ始めた頃、産卵のために海から川にのぼってくるシロウオを捕まえる漁が始まり、私たちのところにも届きます。まさに、春の訪れを告げる季節の便りですね。ファンの方も多くて、時期になると、『シロウオ料理はもう始まりましたか?』というお電話もよくいただきますよ。シロウオが入ると、店の表に『白魚』と書かれたのぼりを出すようにしています。

シロウオ料理が始まったことを知らせるのぼり

昔は多々良川でもたくさん獲れていたようですが、今、福岡では室見川だけで、希少な魚になりつつありますね」。

お店の1階は円形のカウンター席の内側に生簀、その奥に厨房がある。生きたままお店に届くシロウオは、すぐに生簀(いけす)の中のザルに放たれる。

シロウオは生簀のザルの中に入れられる

「ザルに入れて別にしておかないと、他の大きな魚のエサになってしまいます(笑)。よく見るとかわいいし、愛らしいし、透き通っていてしなやか。女性っぽいイメージですよね(笑)」。

生きたシロウオと水を器に入れてポン酢で食べるのが『踊り食い』だ。底の浅い器の文様の上を透き通ったシロウオが泳ぐ様は見ていても飽きない。添えられている菜の花も春の雰囲気を高める。

菜の花も添えられた『白魚のおどりぐい』

「透き通っていてきれいですよね。シロウオの季節はつくしも顔を出し始める時期。泳いでいるシロウオが『つくし』の文字に見えることもあるので、シロウオのことを『つくしうお』と呼ぶこともあるんですよ。『キズ』を使った踊り食い専用の特製ポン酢は酢がたっていなくてやわらかい味わいです。さらに、うずらの卵も落としていますのでまろやかなあじわいを楽しんでいただけます」。

『キズ』とは福岡県や佐賀県の一部で栽培されている珍しい柑橘で、爽やかでまるみのある酸味が特徴だ。

服が汚れないようにと用意されている紙製のエプロンをつけ、網ですくったシロウオをポン酢の中へ。泳いでいる時以上にはねまわる。
「器の中にあまり多くいれないほうがいいですね。いっぱいいれるとはねまわってポン酢が飛び散ります(笑)。2〜3匹ずつたべるのが上手な食べ方ですね。口の中へ入れると口の中でくねくねと踊りますが、それを楽しんでください。くねくねとした感触がいいんです(笑)。喉で遊んでいただいた後は、噛まないでごくりと飲み込むのがいいですね。私は初めは1匹ずつしか食べきれませんでした(笑)。初めて食べる方からは、シロウオが飛び跳ねるのを見て、わーっといった歓声があがりますね。みなさん、とまどいながらも召し上がっています。中には体長が10cmくらいにもなる大ぶりのシロウオもいるんですよ。それは踊り食いではなくて他の料理に使います。飲み込みにくいですからね(笑)」。

まろやかな味わいのポン酢とともに飲み込むシロウオは、他にはない珍味と言えそうだ。

シロウオを使った『卵とじ』も作っていただいた。

シロウオを使った『卵とじ』

みつば、菜の花、アスパラ、たらの芽など、春の食材が使われている。
「卵とじは季節の野菜の緑もあり、白魚も見えてきれいですよね。シロウオはかき揚げなどにしても美味しいですね」。

創業から半世紀以上、ずっと変わらないのは料理に対する想いだ。
「一年中食べられる天然とらふぐ、季節の魚介や野菜を使ったお料理を楽しんでいただいて、感動していただけるのがなによりの喜びです。シロウオは食べられる期間が特に短い食材ですが、ぜひ召し上がっていただきたいですね。シロウオには、“味としての美味しさ”とは違った感動もあると思いますよ(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

シロウオ

生きたままお店に届くシロウオは、すぐに生簀(いけす)の中のザルに放たれる。他の魚に食べられないよう、ザルに入れておく

踊り食いのポン酢

珍しい柑橘である『キズ』を使ったまろやかな踊り食い専用のポン酢。うずらの卵を溶くことでさらにまろやかな味わいになる

その他のシロウオ料理

『シロウオの卵とじ』。みつば、菜の花、アスパラ、たらの芽など、春の食材を使い、春のイメージを高めている

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博多 割烹 かじ 天然とらふぐで知られる中洲の老舗割烹

昭和34年創業、中洲の入口にある老舗割烹で、下関南風泊(はえどまり)市場から届く天然とらふぐを一年中食べられる店として知られている。その他にも玄界灘のヤリイカやオコゼ、関アジ・関サバなど新鮮な魚介を食べられるお店だ。シロウオ料理は2〜4月の季節限定メニューで、踊り食いは『キズ』を使った特製ポン酢とうずらの卵と一緒に食べる。

『白魚のおどりぐい』1,620円(税込)
『卵とじ』1,296円(税込) ※メニューには書かれていないが、注文すればつくってもらえる
『天然とらふぐコース』は1人7,560円~27,000円(税込) ※写真は『天然とらふぐコース 松』1人18,360円(税込)。小鉢、ふぐ刺(大)、ふぐちり、白子焼、ふぐ唐揚げ、雑炊、香物、デザートが付く
円形のカウンター席の内側に生簀がある1階。2階は座敷

博多 割烹 かじ

住所 福岡県福岡市博多区中洲2-3-11
電話 092-291-2219
営業 11:00〜OS23:00
休み 元旦
100席
カード
駐車場 なし
URL http://www.kaji-fuk.jp/
※記載した内容は2017年2月20日現在のものです。
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■お取り寄せ情報
http://www.kaji-fuk.jp/
※天然ふぐ料理等を取寄せ可能