一口大に切った鶏肉、根菜類〜ゴボウ、ニンジン、サトイモ、レンコン〜、水で戻した干しシイタケ、コンニャクなどを使う
煮汁のベースはカツオ出汁やコンブ出汁等。干しシイタケの戻し汁も欠かせない。調味料は砂糖、酒、醤油、ミリンなど
鶏肉をはじめ、すべての具材を炒めてから煮込むのが『がめ煮』の特徴。根菜類やコンニャクは炒める前に下ゆですることも多い
博多に住み始めて25年経ちますが、がめ煮はとても好きです。今はお酒と一緒に(笑)。うちの『がめ煮』を焼酎のお湯割りと一緒にいただくと、とても幸せな気持ちになれます(笑)」。
『博多うまか遊び庵』の店主・森温子さんが自らも大好きだというがめ煮を作っているのは、料理長の下条文夫さん。使う材料は、鶏肉、ゴボウ、サトイモ、ニンジン、レンコン、タケノコ、干しシイタケを水で戻したもの、コンニャク。味付けは白だし、酒、砂糖、ミリン、薄口醤油、濃口醤油だ。
「材料はざくざくと切ります。分量は目分量ですが、バランスがいい具合の分量にしています。鶏肉は他の具材よりも小さく、一口大よりもやや小さく切ります。うちでは地鶏のもも肉を使っています。もも肉のほうが味わい深いですからね。鶏肉を炒め、それから残りの材料をすべて入れて強い火で一緒に炒めます。
サトイモの色が変わってきたら味付け開始です。まず砂糖を入れて混ぜ、それから、シイタケの戻し汁、白だし、酒、ミリンと入れていきます。
一煮立ちしたら出汁を追加して、アクをとり、再び煮立ったところで2種類の醤油を入れます。濃口だけだと色が黒くなってしまいます。野菜の色も見せたいので、うす口醤油も使っているんです。おとしぶたをして中火で20分ほど煮込み、最後にミリンと熊本の料理酒である赤酒を入れて一煮立ちさせてテリをつけて仕上がりです。鶏肉からもいい出汁が出ますね。『がめ煮』は職人が作る料理というよりも、おふくろの味というイメージですかね。私は、小さい頃はあまり食べてなかったけど、大人になってから美味しいと思うようになりました」。
いい香りが漂う具材の上に、ゆでたサヤインゲンがのせられてできあがり。醤油の風味とほどよい甘味が具材にしっかりと染み込んでいる。ほくほくのサトイモ、歯応えのいいゴボウやレンコンなど、食感の違いも楽しめる。
こちらのお店は博多を代表する祭『博多祇園山笠』の決勝点にあたる『廻り止め』に近い古門戸町にある。
「山笠の時はワイワイにぎわってるわよ。この街にはこんなに男がおったのかという感じですね(笑)。山笠のシーズンはもちろんのこと、県外の方にたくさん来ていただいています。『博多らしい味を食べたい』と頼まれれば、がめ煮、ゴマサバ、おきゅうとをまずおすすめしますね。あと、明太子卵焼きかな」。
では、『がめ煮』のことはどのように説明されているのだろうか?
「がめ煮について尋ねられたら、まず、一般的には筑前煮と呼ばれるもので煮付け料理であることをお話します。そして、名前の由来については博多弁の『がめくりこむ』〜取り込む、集める〜からきているとお話します。地鶏も入るし、根菜類たっぷりだし…欲張ってるし、がめくってますよね(笑)。がめ煮は、お正月とか、特に冬になったらよく食べる郷土料理で、博多のどこにでもあるオーソドックスな味ですね。店でも家でも作る人によって味は違うけど、うちのも美味しいですよ(笑)。自信をもっておすすめしています!!」
カウンターの裏側には『笑顔よ〜ん!!』と書かれた紙が貼ってあった。
「私のモットーは、日々おもしろおかしくなんです(笑)。来ていただける方にも、美味しいものを食べて楽しんでいただきたいですね」。
元気で明るい森さんは、『がめ煮』のこと、『博多』のことを、多くの方に伝えているに違いない。
地鶏のもも肉、ゴボウ、サトイモ、ニンジン、レンコン、タケノコ、干しシイタケを水で戻したもの、コンニャク、サヤインゲンを具材として使用する
砂糖、シイタケの戻し汁、コンブ出汁(写真)、濃口醤油、薄口醤油、酒で煮込む。最後にミリンと熊本の料理酒である赤酒も加える
まず鶏肉を炒め、それから残りの材料をすべて入れて強火で一緒に炒める。その後、出汁と調味料を入れて中火で20分ほど煮込む
甘めの味付けをした『運動会卵焼き』など、卵焼きは4種類…。「ベースは魚を使った和食ですが、洋風もあったり、いろんな食材を使ってちょっぴり遊んだ料理もお出ししています(笑)」と店主・森さん。『がめ煮』他、野菜を使ったヘルシーな料理や、やさしい味わいを求めて、男性客も女性客も多い。お昼は品数も豊富な『日替御膳』800円が人気。