細かなウロコを取り、さばいた後、片栗粉をまぶす。この段階で塩をふるなどして下味をつける場合もある
中まで火が通った後も少し長めに揚げたり、二度揚げしたりと、表面がカラリと揚がるような工夫がなされている
揚がったものに、柑橘類の絞り汁をかけ、塩をふりかけて食べる。シンプルな調味料が『めひかり』の美味しさを引き出す
取材の時間に合わせて、自転車で来てくださったのは、店主・坂本大介さん。
「いつも自転車で回って食材を買ってから店に来るんですよ。
今日の『めひかり』は鹿児島に近い海で獲れたもののようです。ちょっと小さいですね。初夏から夏にかけては、30cmくらいになる、大きいやつもいるんですよ。基本的には生の『めひかり』を使いますが、禁漁の時もあるので、その時は冷凍ものを使うこともあります。県外の方にも『めひかり』が浸透しているみたいで、せっかく来ていただいたのにお出しできないと申し訳ないですから」。
唐揚げ作りは下ごしらえから。
「まずウロコと頭を落とします。ウロコが細かいので取るのがなかなか大変なんですよ。加工業者で大量に扱うところは、洗濯機のような機械でウロコを落としていると聞いたこともありますよ(笑)。内臓を出してよく洗って水を切った後、表面に片栗粉をふります」。
下ごしらえされた『めひかり』が丁寧に揚げられていく。
「180度くらいの油で揚げています。3分くらい揚げると、中まで火は通るのですが、すぐに取り出さずに、ここからもう少しだけ揚げます。できるだけカラッと揚げたいからです。唐揚げは、食感が大事ですからね。衣に片栗粉を使うのも、カラッと揚げたいからです。表面がカリッとしていたほうが美味しいですからね」。
カラッと揚がった唐揚げは、塩で食べる。
「シンプルな食べ方が一番美味しいので、岩塩とカレー塩をお付けしています。イタリア産の岩塩は、塩の味がとんがってなくて、ツンとこない、まろやかな味わいですね。カレー塩は『めひかり』の甘味を引き立ててくれますよ。今日は日南産のレモンを添えています。外国産のものとは違って味も香りもやわらかいですね。宮崎特産の柑橘『平兵衛酢(へべす)』を使ったりもしますよ」。
表面がカリカリの『めひかりの唐揚げ』。坂本さんが言われるように、塩味が身の旨味を引き立てている。骨まで丸ごと食べられた。
「さっき、大きいものもあるとお話しましたが、唐揚げにするには、小さめの方が向いていますね。小さいものは骨がやわらかいですが、大きいものは骨が堅くなりますからね。唐揚げには焼酎がとてもよく合います。冬はお湯割と合わせる方が多いですね。『めひかり』は、焼物や南蛮漬けにしても美味しいですよ。
私は、焼物にする時は幽庵焼きです。醤油・ミリン・酒・柑橘などを合わせたものに『めひかり』を1時間ほど漬けてから焼いてます。南蛮漬けは、唐揚げにした『めひかり』を、三杯酢に漬け込んでいます。刺身にもできますが、小骨が多いので、骨切りみたいな処理をして皮目を炙ってお出ししますね」。
どの『めひかり』料理も美味だが、大きな文字で書かれたお品書きには、他にも宮崎の食材を使った料理が並んでいる。
「基本的に宮崎の食材を使っていますが、それは宮崎の食材にこだわっているということではありません。生の食材を自分で買って料理を作ろうとすると、自然と宮崎の食材になりますからね。普通に美味しいものを出そうとすると、宮崎の食材になるし、地産地消になるのは当然なんです。『めひかりの唐揚げ』は宮崎らしい料理でもありますし、宮崎の定番料理といえるものです。地元の年配の方は、『めひかりの唐揚げ』、地鶏焼き、イワシやアジなどの青物の刺身と焼酎があれば、“ごきげん”っていう感じですからね。3人で来たら、全員が同じものを注文されたりするんです(笑)。みなさん、地元のものが好きなんですよ。メニューの字が大きいのは、うちのお客さんは年配の方も多いからなんです。手書きで、毎日2〜3コずつ変えているんですが、季節が変わると全く違うものになってますね。宮崎には素晴らしい食材がたくさんあります。宮崎の方でも、あまり知らない物もあったりするんです。そんな食材を少しでもお伝えしていければと思っています」。
新鮮な『めひかり』のウロコと頭を落とし、内臓を出す。よく洗って水を切った後、表面に片栗粉をまぶしたら、すぐに揚げる
180度くらいの油で揚げる。中まで火が通った後、すぐに取り出さずに、もう少しだけ揚げ、表面をカリッとさせる
宮崎産のレモンや、ヘベスなどの柑橘類を絞り、まろやかな味わいを持つ岩塩と、カレー塩で食べる
芋焼酎を片手に気軽に楽しめる居酒屋。手書きのメニューに並ぶのは、旬の魚介や野菜、宮崎の牛肉・豚肉・鶏肉など、宮崎の食材を中心に使った料理の数々。中には、川南町で獲れるノドグロ(アカムツの別称)など、宮崎でもあまり知られていない魚介を使ったものもある。『めひかりの唐揚げ』は、添えられる岩塩とカレー塩で旨味が引き立つ。