臼杵のとらふぐを使う。『ふぐちり』に使うのはアラで、主に頭の部分と中骨の部分。新鮮なふぐをさばいたら、すぐに準備する
コンブ出汁、カツオ出汁などふぐの味を邪魔しないもの。ふぐの味を引き立たせるため、出汁そのものに塩などで少し味をつける店もある
爽やかな香りを持つ大分特産のカボス、醤油などを合わせて作る。酸味、甘味など、作り手の個性が現れる。薬味はもみじおろし、ネギなど
「私は日本料理の職人だったんです。臼杵で仕事することがあって、話には聞いていたんですが、その時に臼杵のふぐの旨さを知りました。普通はふぐはさばいてから一日ねかせて刺身にします。そうしないと身が動いて薄く切れないからです。けれど、臼杵は厚めに切って新鮮なその日のうちに食べる。そんなふぐ料理は魅力があると思って、ふぐ料理を手がけるようになりましたね」。
カウンターの内側からお話してくださるふぐ料理の専門店『味ふく』の店主・加嶋剛二さん。
「ふぐをさばくところを見たほうがよくわかるでしょう(笑)」と、水槽の横にある仕事場に案内してくださった。
水槽で泳いでいるのは臼杵から取り寄せたとらふぐ。加嶋さんはその中の一匹を取り出し、素早くさばいていく。
「暴れるふぐの頭をコンとたたくと静かになるので、一気にさばきます。“裏肝”と呼ぶ毒のある部分を取り除きます。それに目玉は猛毒。目玉1コで牛3頭殺せるよ。脳みそもだめだね。血も水で流し洗ってきれいにして、それから3枚におろして表面の皮をはぎます。私が思うに、刺身はこの状態から4時間後に切って食べるのが一番美味しいと思いますよ」。
『ふぐちり』に使うのは、ふぐの頭の部分と3枚におろした中骨の部分だ。
「中骨の部分は4つに切ってたたきます。“たたく”とは、流水にあてながら、たてにしてまな板の上にトントン当てるんです。完全にきれいにするためにね」。
『ふぐちり』に使うふぐのアラはただ切っているだけではなく、細かな仕事がなされているのだ。
具材を煮込んでいく出汁にも食べるだけではわからない手間が加えられている。
「コンブ出汁に、米を炒ったものも一緒に入れておきます。こうすると出汁の味がやわらかくも甘くもなります。味に深みが出るんです。うちで使う水はすべてミネラルウォーター。出汁を取るのにも、もちろん使いますよ。ちょっとしたことだけど、美味しさのためにね」。
さらに、ポン酢もまた然り。
「ポン酢の味を作り上げるのに4年もかかりました(笑)。材料はカボス、醤油、酒、ミリン、カツオブシなどで、毎年10月くらいに大量に作ります。収穫されたカボスが届いたら、苦みが出ないように皮をむいて、1コずつ絞ります。毎年500kgくらいは絞りますね。カボスの絞り汁とその他の材料を合わせて17〜18度で1週間ほど熟成させたらできあがり。これを2階にあるポン酢専用の冷蔵庫で保存するんです。カボスの甘味はその年によっても異なるし、配合を調節するとこが難しいね」。
2階におじゃまして、冷蔵庫も見せていただいた。冷やし過ぎもよくなく、10度前後で保存するのがいいとのこと。扉を開けると、ポン酢の爽やかな香りが漂ってきた。この冷蔵庫のある部屋には、エアコンも設置されているようだが…。
「ちょっとせまくなるけど、冷蔵庫を置くことだけはゆずれないと思って導入したんです。夏場は冷蔵庫が加熱してしまわないように、エアコンで冷蔵庫を冷やすんですよね。おかしいでしょ(笑)」。
まずは、出汁がはられた土鍋にふぐのアラを。それから白菜、シイタケ、もち、春菊、豆腐、ネギ、えのきなどの具材を入れていく。ぐつぐつと煮立ち、いい香りが漂ってきたら食べ頃だ。
「ふぐの味は繊細だから、ロックとか水割りとか冷たくして飲む焼酎がいいと思うよ」。
身の歯応えはプリプリ、『うぐいす(唇の部分)』はさらに歯応えがいい。バランスのいいポン酢は奥の深い味わいだ。具材を食べ切ってしまったら、〆は雑炊。
「ふぐの身はあっさりしたものだけど、身と骨から、他の魚からはとることのできない出汁がとれるからね。野菜の旨味も加わっとるし。ふぐちりの後の雑炊は最高ですよ。ふぐは刺身も唐揚げもいいけど、なんといっても雑炊ですよ(笑)。ポン酢を少しかけても美味しいよ」。
とても上品な雑炊の味わい。この雑炊を楽しむために『ふぐちり』を食べるといっても大げさではない。
ふぐの頭の部分と3枚におろした中骨の部分を使う。中骨の部分は、4つに切って流水にあてながら特によく洗う
コンブ出汁に、米を炒ったものも一緒に入れることによって、出汁の味に深みを出す。使っている水はミネラルウォーターだ
毎秋に旬のカボスを絞り、醤油、酒、ミリン、カツオブシなどを加えて1週間ほど熟成させる。できあがったら専用冷蔵庫で保存する
臼杵産の新鮮なふぐは水槽に入れられ、お客さんの口に入る時間を計算して、大将・加嶋剛二さんがさばく。『ふぐちり』にも『ふぐ刺し』にも使われるポン酢は、毎秋に旬のカボスを手絞りし、醤油やみりんなどを加えて熟成させたもの。ふぐの身を存分に引き立てる。年季の入った包丁さばきを見せてくれる大将、その人柄にひかれて訪れる人も多い。
住所 | 大分市中央町3-2-28 |
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電話 | 097-535-0123 |
営業 | 17:00〜22:00 |
休み | 不定 |
席 | 55席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://websp01.com/ajifuku/topics.html |