『かっぽ鶏』だけに、鶏肉は必須。その他はきのこや野菜など、季節によって、作り手によって様々なものを使う
シンプルに塩とコショウだけのものもあれば、味噌を使ったり柚子こしょうを使ったりと様々な味わいがある
竹で作った器に味付けした素材を詰め込み、竹のふたをしたら直接火にかける。時間をかけて蒸し焼きにする
『天岩戸神社』のすぐ近く、高千穂の街を望む高台に建つ『民宿 神楽の館』。元々は神楽の練習場として日之影町にあった建物を移築した築150年の趣ある空間だ。囲炉裏のむこう側には神棚と、神楽を舞う空間があり、神楽を見ながら食事を楽しめる時もある(要問合せ)。囲炉裏を囲んで食べられるのは、高千穂牛の炭火焼や、煮しめなど地元の方が作る地元の味。『かっぽ鶏』も炭火でじっくりと作り上げる。
料理を作るメンバーのお一人、工藤サヨ子(くどうさよこ)さんにお話をうかがった。
「『かっぽ鶏』に使う竹の器は、私たちのメンバーが切り出して作っています。竹の節の一部をくりぬくようにして作るんです。くりぬいたものの中央に小さな穴をあけて、細い竹をはめて、ふたを開けやすいようにつまみもつけています。料理には1度しか使いません、使い捨てですね。本当は生の竹を加工してすぐに使うのが一番なのですが、間に合わない時は、竹の器にした後、冷凍保存しておきます。そうしないと、竹の香りや油分が抜けてしまうし、色も変わってしまうんです。竹は、昔から刈干切(かりぼしきり/牛や馬の冬場の餌にするため、秋に草を鎌で切って保存する作業のこと)の時とか山仕事のときに器として使っていたようです。湯を沸かして山茶をいれたりしてね」。
こちらの『かっぽ鶏』の具材は、地鶏、生シイタケ、ニラ、ニンニク。切った具材をボールに入れて味付けする。
「塩コショウをして、秘伝のタレとたっぷりの酒を加えます。よくもみこんでから竹に詰めてふたをして炭火にかけます。蒸し焼きするようにして全体に火が通るまでには、少し時間がかかりますが、ゆっくりと待っていてくださいね」。
しばらくすると竹の器全体から湯気があがり、周囲にだんだんといい香りが漂ってくる。
ふたについている竹のつまみをつまんで中を見てみると、ぐつぐつとしていて見た目にも美味しそう。竹の皿に入れていただくと、深い味わいに焼酎もすすむ。
「切った竹の中に焼酎を入れて燗をする『かっぽ酒』を、竹のぐい飲みに入れて飲みながら食べるのが一番美味しいですよ」。
ということで、『かっぽ酒』もいただくことに。
「生(き)の焼酎を切った竹に入れて炭火にかけます。湯気が立ってきたら飲み頃です。焼酎を飲むのも竹のぐい飲みで、竹の香りを楽しめます。この器も一度しか使いません」。酒を注ぐときに鳴る“かっぽかっぽ”という音も風情がある。
竹の器の中の具材を食べ尽くしたら、最後のお楽しみもある。
「最後に、残った汁の中におにぎりやごはんを入れて雑炊みたいにしても美味しいんですよ。『かっぽ鶏』は私たちもよく食べますよ。自分たちで言うのもなんだけど、美味しいですもんね(笑)」。
汁まで残さずいただいた。
『かっぽ鶏』を食べる方は、竹の器にも驚くし、ふたを開ける時も楽しそうとのこと。
「来ていただくお客さんも喜んでくださいますよ。普段、店で食事する時は注文した料理が出るけれど、ここでは、出てくる料理に対して、『これどんな料理だろう?』と思うのが楽しいのだそうです(笑)。『かっぽ鶏』は、料理に使う竹の器も料理の一部なんで、おもしろいですよね。それに、竹の器も、中に入っている具材も、火を起こす炭も、竹の皿もすべて高千穂のもの。完全な地産地消の料理なんです。それもいいのかもしれないですね」。
同じように地場の食材で作られた地場の味が『しょうけ盛り』。煮しめ、いなり寿司、巻き寿司、芋の天ぷらなどをざるに盛った料理だ。
「『しょうけ盛り』は夜神楽の時に食べる料理ですね。ごはんもつきたて(精米したて)の米を使ってますよ。高千穂の味を食べていただいて喜んでいただいて…作りがいがありますね」。
郷土に根付いている味であるほど、その土地に訪れた人々には最高のごちそうになる…。
地鶏、生シイタケ、ニラ、ニンニク。食べやすい大きさに切って使う。すべて地元産の新鮮な素材だ
塩コショウをして、秘伝のタレとたっぷりの酒を加えてよくもみこんでから、竹の器にぎっしりと詰める
竹のふたをして炭火にかける。蒸し焼きにするようにして全体に火が通るまで、じっくりと時間をかけて熱する
神楽の練習場として日之影町にあった建物を移築した築150年の趣ある空間で食事をいただくことができる。提供される料理は、『かっぽ鶏』、『高千穂牛の炭火焼』、『煮しめ』など、地元の方が地元の食材で作る地元の味だ。宿泊は、1泊2食付8000円〜。すぐ近くにある『天岩戸温泉』にある姉妹店には、自家製うどんがついた『おいなりセット』(800円)などもある。