ニンジン、シイタケ、サトイモなど阿蘇で収穫される野菜が中心で肉類は入らない。仕上げにはネギがちらされることが多い
小麦粉と水で作る“だご”が主流。水加減、生地のこね方、切り方やのばし方など、様々な種類の“だご”がある
出汁は昆布やいりこをベースにしたものが多い。味の決め手となる味噌には作り手の好みや工夫が反映されている
『だご汁街道』とも呼ばれる国道57号線沿いで、『だご汁』、『高菜めし』、赤牛を使った料理など阿蘇ならではの料理を食べられる『阿蘇郷土料理 ひめ路』。
「昔、阿蘇のお姫様が店の横にある道を通ったということが、店名の由来なんですよ」と、店主・田添勝明さん。寒い時期には特に人気の『だご汁』についてうかがった。
「『だご汁』の具材は、シイタケ、サトイモ、ニンジン、ゴボウ、カボチャです。自家製の野菜もありますし、それ以外もすべて地元の野菜ですね。出汁は、ラウス昆布の出汁が一番よく出る部位と、銀ダレ(長さ10cm程度の大きめのいりこ)を使って毎日とっています。ここらあたりは水が良いのでいい出汁がとれますね。町の水道は蛇口をひねると天然の湧き水が出てきます(笑)。ごはんもお茶もコーヒーも美味しくなりますね。“だご”も小麦粉と、この水で作りますから美味しくなるのです」。
田添さんが作る“だご”は、1つずつまさに“手作り”だ。
「小麦粉と水をこねて丸一日ねかせます。そうすると生地に粘りが出てきますね。注文が入ったら鍋に出汁を入れて温め、そこに生地をスプーンですくっていれます。生地は、そのままでは小さなかたまりですが、鍋底に沈んだ生地をヒノキの棒で突いてのばして平べったくするんです。大きさもまちまちですが、1コずつ突くことで厚みにも、ばらつきが出ます。こうすることで、味噌の味がよくからむし馴染むんですよ。生地のかたまりをちぎって手でのばしていたこともありますし、いろいろやってみたんですが、このやり方に決めました。1人前の『だご汁』には“だご”が8コ入るので、1コずつ突いてのばすのは、なかなか大変です」。
出汁と“だご”が入った鍋に野菜を入れ、火が通ったら味噌を溶く。
「味噌は米と麦の合わせ味噌ですね。1人前40gずつに丸めて準備しています。3人前120gの味噌を丸めたものもあります。味が一定になるように、1つの鍋では3人前までしか作らないようにしていますね。味が整ったら器に入れ、うちでは色味が鮮やかな長ネギをちらしています」。
田添さんが言われるようにデコボコした“だご”には味噌の味がよくからんでいる。そして味噌の風味の中にそれぞれの野菜の旨味が広がる。
自家製の柚子こしょうを入れると爽やかな香りとピリリとした辛味がさらに箸をすすめる。
「柚子こしょうは柚子を収穫するところからやっています。作ったら1年ねかせてから使います。今年作った柚子こしょうは1年後に使うためのものということですね。香りが良い黄色い柚子で作っていますよ」。
やさしく懐かしい味わいの『だご汁』。田添さんも小さい頃からよく食べていたのだそうだ。
「今は味見ぐらいで、たまにしか食べませんが(笑)、子どもの頃は母親がよく作ってくれていました。私が作っている『だご汁』は、私の母親の味ですね。私の家だけではなく、各家庭で母親が作っていましたから、『だご汁』は“阿蘇のおふくろの味”の一つだと思います。作り方も少しずつ違うし、味噌味もあれば醤油ベースの味もありますしね。そうそう、『だご汁』を作った翌日は、『だご汁』の残りに、ごはんをいれて水分がなくなるくらいまで炊いて食べてましたよ。“だご”のまわりにごはん粒がついていて、それも美味しかったですね。雑炊がなまったのだと思いますが、『ずーしーめし』と呼んでいました。それから、うちの母親は、小麦粉で作った“だご“が入っているのは『だご汁』、もち米で作った丸い“だご”が入ったものは『だんご汁』と呼んでいましたね」。
“だご”の材料である小麦についても興味深いお話をうかがった。
「私の家もそうだったんですが、昔は家々で小麦を栽培していたんですよ。製粉もしていました。ただ、製粉した後の管理が難しくて、だんだん作らなくなっていきましたね。今も、このあたりで栽培されてはいるのですが、量はとても少ないです。私も今は取り寄せています」。
『だご汁』は自給自足の中から生まれた郷土の味とも言えるようだ。
煮込む具材はシイタケ、サトイモ、ニンジン、ゴボウ、カボチャ。できあがった『だご汁』を器に盛った後、切った長ネギをちらす
小麦粉と水をこねて丸一日ねかせる。熱い出汁の中に生地をスプーンですくって入れ、鍋底に沈んだ生地をヒノキの棒で突いてのばす
出汁の材料は、ラウス昆布の出汁が一番出る部位と、銀ダレ(長さ10cm程度の大きめのいりこ)でとる。味噌は米と麦の合わせ味噌
『だご汁街道』とも呼ばれる国道57号線沿いにある。『だご汁』、『高菜めし』、赤牛を使った料理といった阿蘇ならではの料理や、熊本名物の馬刺しなどを食べられる。『だご汁』には自家製野菜や地元産の野菜がたっぷり。手間のかかる作り方がされた“だご”には、合わせ味噌の味わいがよく馴染む。敷地内に『民宿乙姫の里』を併設。
住所 | 阿蘇市乙姫1732-1 |
---|---|
電話 | 0967-32-4252 |
営業 | 11:00〜OS20:00 |
定休日 | 火曜(火曜祝日の場合変更あり) |
席 | 100席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.aso.ne.jp/himeji/ |