ボラの真子の表面に残る血を針で取り除く。この作業が出来上がりの色や香りに大きく影響する。その後、たっぷりの塩で塩漬け
塩漬けした真子を、水、日本酒、焼酎などに漬けて塩抜きする。塩抜きが終わったら形を整えて何度もひっくり返しながら干す
スライスした『からすみ』はスライスした大根と合わせて食べることが多い。ごはんやパスタと合わせても美味。炙っても旨い
お店の入口には、『くじらあります』の暖簾。寿司カウンターもある和食の店では、長崎の新鮮な魚介を使った料理はもちろん、長崎の郷土料理や卓袱(しっぽく)料理などを手頃な価格で食べられる。『はりはり鍋』や鯨肉などの鯨料理も長崎ならではの味わいだ。
寿司職人として修行を積み、経験を重ねてきた統括料理長の谷井清一郎さん。豊富な経験を活かして、訪れる方々の様々な要望をお受けしている。
「『からすみ』はボラの卵巣がふくらんでくる秋から冬にかけて、通常は10〜11月くらいに作ります。『からすみ』作りの手順を大きく分けると、(真子の)血抜き、塩漬け、塩抜き、干しになります。とても手間のかかる料理です。作る時の勘も必要な料理ですね」と言う谷井さん。手順ごとに詳しいお話をうかがった。
●血抜き
「私たちは地産地消を目指しているので、長崎県野母崎(のもざき)で獲れるボラの真子を取り寄せています。真子の表面にある血を針で取り除いていきます。血が残っていると、できあがりの見た目が悪くなるとともに、生臭くなってしまうのです。大きさにもよりますが、大体1つにつき30分くらいかかります。地味で、根気がいる仕事ですね(笑)」。
●塩漬け
「血抜きをした真子を水でよく洗って、大量の塩の中に入れて1週間ほど塩漬けします。真子がだんだんと締まっていき、水分が出てきますね」。
●塩抜き
「塩漬けが終わると、真子を日本酒に漬け込んで一晩ほどおいて塩抜きします。芯の部分に塩が残っている程度に塩抜きするのです。手でさわって塩抜き加減を判断します。勘がとても必要ですね」。
●干し
「形を整えて干します。重しをして干すというやり方もあるのですが、私はあまりかたくならないように重しをせずに干しています。日本酒を表面に塗りながら干さなければなりませんし、天気の悪い日や夜は中に入れないといけないので手間がかかりますね。網をしておかないと鳥が食べてしまいますし(笑)。店の前にある中庭の、お客様の見えないところで干しているんですよ(笑)。できあがった『からすみ』はきれいなべっこう色になります。表面を見てもわからない血が内部に残っていた場合、色が悪くなってしまうものもあるんですよ。冷たい風で干すことも大切ですね」。
できあがった『からすみ』は、注文が入ると表面の薄皮をはいでからスライスする。
「私は薄く切るようにしています。中央のふくらんでいるところが特に美味しいと思いますね。『からすみ』は塩分が高いので、一緒に添える大根ではさんで食べるとちょうどいいですよ。焼酎のつまみに最適ですね」。
口の中に運ぶと、やわらかさともっちり感を持つ『からすみ』の旨味が広がり、焼酎がとまらなくなりそうだ。
「『ここの《からすみ》はやわらかくて食べやすい』という言葉をよくいただきます。そのまま食べる他、ほぐしてイカや白身魚にまぶしたり、タイの刺身で巻いて食べてもおいしいですね。干す前に薄皮がやぶれてしまったものは、そのまま『生からすみ』としてお出しすることもありますよ。『からすみ』は長崎の伝統的な味。県外の方などまだ知らない方には、ぜひ、食べていただきたいと思います。そして『からすみ』をはじめ、多くの方に長崎の良さ、長崎の食材の良さ、長崎の料理の美味しさを知っていただきたいですね」。
獲れるボラの真子を取寄せる。丁寧に表面の血抜きをした後、たっぷりの塩で塩漬けする
日本酒に漬け込み、芯の部分に塩が残る程度に塩抜きする。形を整え、表面に日本酒を塗りながら外で干す
切った大根と一緒に食べる。ほぐしてイカや白身魚にまぶしたり、タイの刺身で巻くという料理で提供することもある
長崎市内中心部、ホテルの5階にある広く優雅な和食の店。地産地消を基本に、長崎ならではの旬を生かした会席料理や寿司、郷土の味などが手頃な価格で楽しめる。『からすみ』も、地元長崎県野母崎から取り寄せるボラの真子で作る。もっちり感とほどよい塩加減は、日本酒を塗りながら干すなどいくつもの丁寧な仕事の賜物だ。
住所 | 長崎県長崎市宝町2-26 ベストウエスタンプレミアホテル5階 |
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電話 | 095-829-2909 |
営業 | 11:30〜14:30/17:00〜22:00 |
休み | なし |
席 | 140席(80名収容の大広間あり) |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://n-kaname.com |