九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

豆腐

豆乳濃度の高い木綿豆腐で、材料としては嬉野産大豆フクユタカなどの国産大豆と天然にがりを使ったものが多い

炊き方

嬉野温泉の温泉水で炊く。豆腐が溶けて角がとれ、全体が白濁したら食べ頃。炊き続けると豆腐は豆乳に戻ってしまう

タレ・食べ方

醤油をベースにして、すりゴマなどが入ったさっぱりとしたタレが主流。豆腐が溶けて白濁した温泉水も全て味わうのが嬉野流

語り 宗庵 よこ長 小野原健の「温泉湯豆腐」

小野原健さん

昭和32年創業。温泉湯豆腐発祥の店として知られているのが『宗庵 よこ長』だ。現在は3代目となる店長・小野原健さんが、当時から変わらない温泉湯豆腐の味を守っている。

温泉湯豆腐の原型とも言える温泉みそ汁。『とんかつ定食』などの定食類に添えられる

「私も小さい頃から食べていましたし、今も週に何度も食べています。味は変わっていないはずです(笑)。嬉野では温泉水を使った味噌汁が食べられていて、その味噌汁に入っている豆腐がトロトロになることは分かっていたようなんです。つまり、温泉水に豆腐を入れて炊くと、豆腐がやわらかくなり、とろけるということは経験的に知られていたんですね。それをうちの初代が料理に取り入れて、商品にしたのが温泉湯豆腐です。温泉水を使った味噌汁が温泉湯豆腐の元かもしれません。先代の実家は豆腐屋さんだったので、豆腐を使った名物料理を作ろうとしていたこともありますね。このあたりは、温泉だけでなく、水も良いので豆腐屋さんもたくさんあったようですよ」。

湯豆腐は、注文が入ってから炊き始める。こちらで使う豆腐は『豆匠よこ長』のもの。小野原さんのお父様の小野原博さんが丁寧に手作りされている。
「嬉野産の大豆・フクユタカを使って、湯豆腐に最適な固さになるよう調節した木綿豆腐です。京都などで知られる湯豆腐に使う豆腐とはちょっと違いますね」。

手の上で豆腐を切り、一丁を8等分にする

手に乗せた特製豆腐を切って鍋に入れ、温泉水を注いで火をつける。
「一丁を8等分して4個が一人前。一人前が半丁ですね。温泉水は、ひたひたになるくらいに入れます。豆腐の量と、温泉水の量の割合というのも大切で、丁度いい量じゃないと、豆腐がうまくとろけないんですよ」。

温泉水を張った鍋に、くずれないようにそっと豆腐を入れる

炊いていくと、表面にはアクのような泡が出始める。
「これが重要なんです。アクではないので、すくってはいけません! これは旨味なんです」。

全体がとろけて角がとれるまで煮込む

豆腐がとろけ始め、温泉水が徐々に白濁していく。
「炊きあがりは、豆腐のとろけ具合で判断しています。炊きすぎて、とろけ過ぎないようにしなければなりません。一人用の土鍋に移して、お客様にすぐに食べていただける状態でお出ししています。豆腐がとてもやわらかくなっているので、移し替える時はとても気をつかいますね」。

一人前は土鍋に4コ(半丁分)。おたまで崩れないようにそっと入れる

一番シンプルな『湯どうふ』はこれでできあがり。『寄せ湯豆腐』には、エビなどの具材がのる。

『寄せ湯どうふ』は具材を最後にトッピングする

「上にのせる具材は、一緒に鍋で炊くのではなくて、最後にトッピングしています。きれいになりますし、『湯どうふ』そのものの味を楽しんでいただきたいからです。一緒に炊くと味や香りが豆腐に移ってしまいます。まず、土鍋に薬味を全部入れてください。タレもお付けしていますが、まずは、そのまま食べてみてください」。

土鍋のふたを開けると、ふわりといい香りが漂う。薬味を入れて、トロトロの豆腐を温泉水と一緒にレンゲですくって口へ運ぶ。クリーミーな口あたりの中、塩加減も含めほどよい味わいが広がる。
「あらかじめ煮込む時の温泉水に味を付けているんです。詳しい作り方は秘密ですが、先代から続く変わらない味なんですよ。そのまま食べていただいて、後はお好みでタレも使ってみてください。ポン酢のようなものですが、これも特製です。上にのせている具材には味を付けていないので、タレに付けてどうぞ」。

豆腐はもちろんのこと、味を付けた温泉水と、溶けた豆腐がからみあった“スープ”も旨い。
「嬉野の温泉水は胃腸にもいいですからね。みなさん、残さず召し上がってくださいますよ。温泉湯豆腐は身体にも良いし食べやすいので、あらゆる世代の方に食べていただいてます。私の11カ月になる子どもも食べていますよ」。

一人前の豆腐の量は半丁だが、するりとお腹におさまった。まだまだ食べられそうだが…。
「おかわりはありませんが、大盛りはご用意しています。温泉湯豆腐は、お豆腐は半丁だけど、安い、旨い、健康に良いということで、一石二鳥ならぬ三鳥なんです!(笑)」。

美味しくて身体にも良い湯豆腐を求めて、週末は開店と同時に満席になることもあるのだそうだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

豆腐

嬉野産の大豆を使い、湯豆腐に最適な固さになるよう調節した木綿豆腐。系列店『豆匠よこ長』で手作りされている

炊き方

嬉野の温泉水にあらかじめ味を付けたもので豆腐を煮込む。炊きあがりは、豆腐のとろけ具合で判断する

タレ・食べ方

温泉水に味が付いているので、鍋に薬味をすべて入れ、白濁した“スープ”ごと味わう。添えられている特製タレを付けるのもいい

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宗庵 よこ長 温泉湯豆腐の提供を始めた元祖の店

“嬉野温泉水で豆腐がとける”ことに着目した初代が温泉湯豆腐を商品化。豆腐を炊く温泉水に味を付けているので、豆腐がとろけた“スープ”まですべて美味しく食べられる。メニューには当時と変わらない味の湯豆腐料理が並ぶが、クジラ肉を使った平日限定の『ふるさと湯どうふ』などもある。その他、手打ちのうどん・そばや定食類も豊富にそろう。

『寄せ湯どうふ』580円。これにごはん、小鉢などが付いた『湯どうふ定食』790円。上に具材がのらない豆腐のみの『元祖湯どうふ』は420円
テーブル席、小上がり席、団体席があり100席以上ある店内
週末はお店の前に行列ができることもある

宗庵 よこ長

住所 嬉野市嬉野町下宿乙2190
電話 0954-42-0563
営業 10:00〜OS21:00
定休日 水曜(祝日の場合は営業)
102席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.yococho.com/
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