店舗に生きたまま届くシロウオは、生簀(いけす)の中に入れられる。シロウオは高温になると弱るため、水温調節が重要だ
シロウオと一緒に口に入れて飲み込むため、通常のポン酢よりも酸味や塩分を抑えたマイルドな味わいにつくられているようだ
踊り食いの他にも、天ぷら(かき揚げ)、佃煮、卵とじなど、淡白な身の味わいを生かした、様々な料理を楽しむことができる
室見川の河畔に臨んだ、数寄屋造りの全部屋から川を眺められる日本料理店。水炊き料理に加え、春のシロウオ、夏のオコゼと稚鮎、秋の松茸、冬のふぐなど四季折々の旬の素材を使った料理を美しい器とともに楽しめる。
春、シロウオ料理が始まると、玄関に『白魚』の文字が入ったまねき旗や提灯が軒下に出される。
三代目の下で四代目修行中である専務兼料理長・穐吉喜一郎(あきよしきいちろう)さんにお話をうかがった。
「毎年豊漁祈願をして、シロウオが入ってくると『春が来たな』という感じになりますね。シロウオ料理は毎年2月から4月中旬までご提供する期間限定の味わい。漁が終わった後は、生簀(いけす)の中に入れているシロウオがなくなるまでですね。シロウオは水の温度が高くなるとすぐに死んでしまいます。水温を低めに保ち、酸素をしっかりと与えることが大事ですね。シロウオは他の川でも獲れるのですが、室見川のシロウオは少し大きいように感じます。見ただけでは雄雌の見分けはつかないですが、ゆでるとよく曲がるのが雄、お腹に子を持つのであまり曲がらないのが雌と言われています」。
シロウオ料理のメインともいえる『シロウオの踊り食い』を出していただいた。
「シロウオが泳ぐ器は伊万里陶苑さんの青白磁の鉢、ポン酢用は源右衛門さんの染付のつくしの絵の小鉢、『踊り食い』用に特注で焼いて頂いたものです。踊り食いの鉢は高台が大きくて安定感があり、どっしりとしています。深さもありますから上から見るときれいですね。
食べなくてもいい景色を楽しめますが(笑)、ぜひ、活きのいいうちにお召し上がりください。器にまずシロウオを入れ、踊り食い専用の特製ポン酢を少したらしてどうぞ。服が汚れないように紙ナプキンも用意していますのでご利用ください」。
口の中に入れると、ポン酢の爽やかな酸味とともに、シロウオが口の中ではねまわるのを感じる。
「透明でまわりの部分がよく見えないから小さい魚と思われることが多いですが、口に入れると思ったより大きいですね(笑)。しばらく喉で遊ばせて、プルプルバタバタという感じを楽しんでください(笑)。少し噛んで召し上がると一段と美味しいですよ。踊り食いを食べられると、会話も弾みますね。春を楽しむ料理、みんなで和気あいあいと食べる料理だと思います。私が踊り食いを初めて食べたのは幼稚園の頃。味や食感についてはよく覚えていませんが、『楽しい』と思ったことはよく覚えています(笑)。生きている魚まるごと一匹食べる料理は他にはないでしょうね」。
その他のシロウオ料理もつくっていただいた。
「吸物は、シロウオを出汁で火をいれて、最後に吸物地とあわせています。シロウオからいい出汁も出るんですよ。佃煮は生きたシロウオと合わせた調味料を沸かした中に一気に入れてアクを丁寧に取りながらじっくり煮詰めていきます。透き通った飴色になりますしツヤ感もでますね。玉子とじには「つくし」を入れますので、より季節感を楽しんでいただけると思います」。
いずれも『シロウオ料理(前菜、踊り食い、吸物、造り、焼物、天ぷら、玉子とじ、止椀、山椒煮のせご飯、デザート・10,692円〜税サ込)』で食べられる。
『とり市』がこの地に移転し開店したのは昭和9年。以来、先代が考案した『シロウオの踊り食い』は変わらない春の看板料理となっている。
「ご年配の常連の方でシロウオがお好きな方がいらっしゃいます。昔から食べられていて、毎年『シロウオがはいったら電話してください』と言われていますね。食べると元気になられるようです。私見ですが、シロウオを毎年食べられる方は元気に長生きされている方が多いみたいです」。
桜の名所である愛宕神社の麓という場所柄もあり、花見の後、入学式の後などにも利用される方も多く、お店は長きに渡って愛され続けている。多くの文化人や著名人も訪れたとのことで、床の間にも俳人・高浜虚子本人が書いた白魚の句の掛軸が掛けられていた。
『網の目に 消ゆるおもひの 白魚哉』
お店に入ってすぐの場所には、シロウオ漁を行なう『梁(やな)』の模型が展示されている。
「『梁』は竹とカヤ(すすき)を編んでつくられたもの。小さなすきまがあるのはすべてをとりつくさないためです。シロウオ漁はいつまでも続けていかなければならないものですから」。
シロウオ料理はずっと昔から、自然を大切にしながら続いているのだ。4月末、供養祭を行なってシロウオのシーズンは終わる。
シロウオは温度が高くなると弱って死んでしまうため、生簀(いけす)の中の水温を低めに保ち酸素をしっかりと与えているとのこと
『踊り食い』専用の特製ポン酢。爽やかな酸味で、シロウオとともにそのまま飲み込むのもいいし、身をかんだ時のほろ苦さとも合う
『シロウオ料理』として、吸物、玉子とじ、佃煮(写真)、天ぷらなどで様々なシロウオの味わいを楽しむことができる
室見川の河畔に臨み、数寄屋造りの全部屋から川を眺められる日本料理店。水炊き料理に加え、春のシロウオ料理、夏のオコゼと稚鮎、秋の松茸、冬のふぐなど四季折々の旬の素材を使った料理を、美しい器とともに楽しめる。隣接する姉妹店の『三四郎』では、シロウオ料理(3,780円〜税込)を気軽に味わうことができる。
住所 | 福岡県福岡市西区愛宕3-1-6 |
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電話 | 092-881-1031 |
営業 | 11:30〜22:00 |
休み | なし(年末年始は除く) |
席 | 個室11室、最大100席 |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.toriichi.jp/ |