豚骨や豚の三枚肉からとった出汁に、昆布やカツオ節からとる出汁、鶏ガラ出汁などが加わる。味付けは塩や少しの醤油のみ
醤油や砂糖などを合わせた煮汁で煮込んだソーキを中心に、昆布、冬瓜、大根、島豆腐、チンゲンサイなどの青菜が入る
あらかじめ作っておいた“汁”に青菜以外の具材を合わせて煮込む。最後に青菜を入れて一煮立ちさせればできあがり
国際通りから少し入ったところにある沖縄家庭料理の店で、創業は1995年。いつも、元気に明るく迎えてくれるのは店主・仲間テリーさんだ。
「初めは『ソーキそば』だけを出していたんですが、お客さんに『焼くだけだからポークたまご(沖縄の食堂の定番メニューの1つ。スライスして焼いたランチョンミートに卵焼きを添えたもの)もできるだろ?』と言われて、メニューが1つ増え、また1つ増え…どんどん増えていきました(笑)」。現在は、昼は沖縄ならではの多彩な定食を中心にしたメニューで、夜は沖縄料理などの一品メニューをつまみとしても楽しめる。
「本当に沖縄の家庭で食べられている基本的な家庭料理で、オシャレなことはやってないんです。まだ沖縄料理を食べたことがない方は、『こってりしているのでは?』と敬遠することも多いと思うのですが、まず食べてみて! 全体的にさっぱりした味付けですよ。全国から来ていただくのですが、移動時間は長いし、暑いし、疲れて来られると思うのです。だから、すっと食べられるように、薄味に仕上げているんです。薄味なので、あとはみなさんで好みの味に整えていただけるように、テーブルの上には調味料をたくさん用意していますよ!」。
テーブルには、塩、コショウ、一味唐辛子、醤油、ソース、酢、コーレーグース(島唐辛子を泡盛に漬け込んだ調味料。ピリリとした辛みと独特の香りをもつ)が置かれている。
『ソーキ汁』についてのお話をうかがった。
「『ソーキ汁』はちょっと地味なので…知らない人も多いかもしれないですね(笑)。『ソーキ汁』のメインとなるのは…なんといっても“そば出汁”です! 『ソーキそば』にも使うものですね。鍋に豚骨、鶏ガラ、長ネギ、ニンジンの皮、キャベツの芯などを入れてグラグラと炊きます。まめにアクを取らないといけないですね。そこに、豚の三枚肉のゆで汁を加え、さらに違う寸胴鍋で作った昆布とカツオの出汁を合わせます。醤油を少し足して味を整えて“そば出汁”のできあがりです。塩を少しだけ加えることもありますね。鶏ガラがオスのものかメスのものかでも味が違うので、なかなか繊細なんですよ」。
開店当初から変わらない“そば出汁”を使う『ソーキ汁』作りを見せていただいた。「鍋に“そば出汁”を入れ、ソーキと島豆腐を入れて火を入れます。小松菜を入れて一煮立ちさせればできあがりです。ソーキはよく洗って下ゆでしてアクをとり、さらに洗ってから甘辛く煮付けていますよ」。
あっさりとしながらも奥深い“そば出汁”はそれ自体でも美味。大きく切られた島豆腐と甘辛いソーキの味を引き立てる。すっとお腹に入ってくるさっぱりした味わい。イメージするこってり感も脂っぽさもない。
「コーレーグースを入れても美味しいけど、まずそのまま飲んでよね(笑)。3日かけて作った“そば出汁”を味わってください!お店が休みの日も私は“そば出汁”を仕込んでますから(笑)。『ソーキ汁』に使う“そば出汁”もソーキも大量に作らないと美味しくならないかもしれませんね。沖縄では、お祝いごととかお盆のときとか人が集まる時によく作られていた料理ですからね」。『ソーキ汁』にはお願いすればフーチバー(ヨモギ)を添えてもらうこともでき、違った味わいを楽しめる。
地元の方はもちろん、多くの観光客が訪れる『なかや食堂』。「全国から来てくださって、マラソン大会の時など、毎年来てくださる方も多いんです。そんなみなさんは『ただいま』と言ってくれます。私は『おかえりなさい』と迎えます。うれしいですね。料理もだけど、みんな私に会いに来てくれるのかな?(笑)。お店が続いている理由は私かな?(笑)」。行けば元気になれるお店、ほっとできるお店だ。
豚骨、鶏ガラ、長ネギなどを炊き、豚の三枚肉のゆで汁と昆布カツオ出汁を合わせる。醤油と塩で味付け。“そば出汁”と呼ぶ
ソーキ、島豆腐、小松菜。ソーキはよく洗って下ゆでしてアクをとり、さらに洗ってから甘辛く煮付けている
“そば出汁”にソーキと大き目に切った島豆腐を入れて少し煮込む。小松菜を入れて一煮立ちさせてできあがり
国際通りから少し入ったところにある沖縄家庭料理の店。昼は沖縄ならではの多彩な定食を中心にしたメニューで、夜は一品メニューをつまみとしても楽しめる。『ソーキ汁』は鶏ガラ、豚骨を野菜と炊き、豚の三枚肉のゆで汁や昆布カツオ出汁も加わった奥深い味わい。甘辛く味付けたソーキ、大きく切られた島豆腐ともよく合う。