九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

具材

一口大に切った鶏肉、根菜類〜ゴボウ、ニンジン、サトイモ、レンコン〜、水で戻した干しシイタケ、コンニャクなどを使う

味付け

煮汁のベースはカツオ出汁やコンブ出汁。干しシイタケの戻し汁も欠かせない。調味料は砂糖、酒、醤油、ミリンなど

作り方

鶏肉をはじめ、すべての具材を炒めてから煮込むのが『がめ煮』の特徴。根菜類やコンニャクは炒める前に下ゆですることも多い

語り 口八丁手包丁 米澤由美子の「がめ煮」

米澤由美子さん

細長いカウンターは10席。そこには大皿料理がずらりと並べられている。17時の開店と同時に、男性客が一人、二人、カウンターはすぐに満席になってしまう。
「女性一人でも来れる店にしたいなぁと思って開店しましたが、男性がよく来てくれますね(笑)。みんな、食べに来るんだか、しゃべりに来るんだか(笑)」

女将・米澤由美子さんは、作務衣の上に割烹着姿。その気風の良さから“博多のごりょんさん”の雰囲気だが、実は北九州の方。1986年、中洲に店を開いた。

カウンターには大皿料理が並んでいる

大皿の上に並ぶのは、おひたし、白和えなど家庭的な雰囲気のもの。その他の一品料理としては男性が大好きな肉じゃが、ポテトサラダやポテトコロッケなどもある。そんな中、『がめ煮』も人気の品とのこと。
「素朴な味だからか、『家で作ってくるの?』とよく尋ねられますよ(笑)。お店で、月曜、水曜、金曜と週に3回ほど作ってます」。

鶏肉を炒めた後、他の具材を入れて炒める

厨房はカウンターの内側。一番奥にあるガスコンロで『がめ煮』も調理される。

出汁を入れて一煮立ちさせる

「具材は、地鶏、ゴボウ、サトイモ、ニンジン、コンニャク、干しシイタケを戻したものです。まず、さいのめ切りした地鶏の四つ身を炒めます。そして、下ゆでしておいたその他の具材をすべて入れて炒めます。下ゆでは、コンニャクとサトイモだけは別にやりますが、それ以外のものはまとめてゆでます。軽く炒めたら、鍋に干しシイタケの戻し汁とシイタケを入れ、その後、コンブとカツオの一番出汁をひたひたになるくらいに入れます。そしたら、薄口醤油、酒、ミリン、三温糖を入れて、煮汁が1/3くらいになるまで中火で煮るだけです。コンニャクの歯応えが少し残るくらいに煮るのがいいですね。私はふたはせずに煮込みますね〜。お家で作る時は、地鶏と干しシイタケさえあれば出汁はなくてもできますね。あまり濃くしないでゆっくり炊くといいと思いますわ」。

薄口醤油、ミリン、三温糖などを入れる

白和えを作りつつ、途中でアクをすくったり、鍋をあおったりしながら20分で煮込み終了。最後にゆがいたサヤインゲンをちらしてできあがりだ。
「作った次の日のほうが味が染みていて美味しいですね」。

煮込みながらアクを取る

今では1年中食べられる『がめ煮』だが、元々は根菜がそろう冬の料理だった。
「根菜が美味しくなる冬の料理ですよね。夏はレンコンも手に入りにくいので、私は夏には作りませんね。やっぱり寒くなってからの料理だと思いますよ。いろんなものが一つのお皿に入っていますし、身体もあたたまりますし、とてもバランスがとれた料理だと思います。野菜不足の方にはもってこいです。でもね、がめ煮は1月はあまり出ないんですよ。みなさん、お正月に家で食べるから、しばらくは欲しくならないんでしょうね(笑)」。

煮汁が1/3くらいになったらできあがり

県外の方に『博多らしいものを』と頼まれると、まず『がめ煮』を食べていただくという米澤さん。
「がめ煮は長い歴史もあるし、博多の一番の料理だと思いますよ。ラーメンやもつ鍋は戦後からですものね。私は北九州出身ですが、『がめ煮』という名前で呼んでいたし、よく食べてましたよ。私が作る『がめ煮』のルーツは、おばあちゃんが作ってくれていた味です。少し薄味なのもおばあちゃんの味ですね。ただ、最近はあまり食べないんですよ。もう一生分のがめ煮を作っちゃったからかな(笑)」。

湯気がたちのぼるできたてのがめ煮!!

具材の味と煮汁の味が重なった旨味は、寒い時期に恋しくなるやさしい味わい。多くの人の心をとらえて離さない。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

具材

地鶏の四つ身、ゴボウ、サトイモ、ニンジン、コンニャク、干しシイタケを戻したもの。ゆがいたサヤインゲンは彩り添えに使う

味付け

干しシイタケの戻し汁コンブとカツオの一番出汁(写真)がベース。そこに薄口醤油と酒とミリンを加え、さらに三温糖を入れる

作り方

鶏肉を炒め、下ゆでしておいたその他の具材をすべて入れて炒める。出汁をひたひたになるくらい入れ、調味料を入れて中火で煮込む

このページを共有・ブックマークする

口八丁手包丁 やさしい味の大皿料理が並ぶ小料理屋

女将・米澤由美子さんが「女性一人でも気軽に入りやすい和食の店を作りたかったのです」と始めた小料理屋。カウンターには彩りも豊かな20種類ほどの大皿料理が並び、どれも一人前400円。旬の野菜を使ったものが中心だが、その中でも『がめ煮』は夏以外は置かれている定番の一品だ。男性客にはポテトサラダやポテトコロッケが大人気。

定番で人気も高い『がめ煮』。1皿400円
こちらも定番の『鶏肝の山椒和え』。1皿400円
1階はカウンターのみで、米澤さんとの会話も弾みそう。2階には座敷もある

口八丁手包丁

住所 福岡市博多区中洲4-5-2
電話 092-291-1402
営業 17:00〜OS22:30(土曜〜OS21:30)
休み 日祝日
30席
カード 不可
駐車場 なし
お店情報をプリントする