身が厚く脂がのった大きなアラが使われることが多い。皮をはぐことでウロコも一緒に取り除いてから下ごしらえする
ベースとなるのは昆布出汁。具材を加える前にアラの骨を入れて一緒に少し煮ることで、骨からの出汁をとることもある
出汁の入った鍋にアラのぶつ切りや野菜を入れ、各店独自のポン酢で食べる。薬味はネギやもみじおろし。締めは雑炊だ
昭和55年に福岡市中央区長浜で創業した『たつみ寿司』。現在は総本店のほか3店で営業している。こちらのお寿司の特徴は、醤油をつけて食べるという通常の寿司のスタイルとは異なり、あらかじめ味付けされた状態で提供されるということ。玄界灘をはじめ、日本中から取り寄せた旬の魚を使い、素材の味を最大限に活かすための工夫が施された“創作寿司”を食べられる。
総本店の料理長・陣内博さんにお話をうかがった。
「料理が美味しいのは絶対に必要なことです。それにプラスして、感動していただけるような料理にしないといけないですね。寿司に関しては、上にのせるトッピングなども変えていますし、日々進化・変化していると思います」。
寿司とあわせて、あら料理とふぐ料理も『たつみ寿司』の看板メニュー。『あら鍋』にも進化はあるのだろうか?
「『あら鍋』は、完成している料理ですから、下手に手を加えないことが大事ですね。素晴らしい素材の味わいを、まっすぐにお伝えできればと思っています。秋から冬にかけて、脂がのってきて、アラが美味しい季節になります。脂がのってくると、仕込みをしている時からよくわかりますね。うちでは例年11月〜2月に、あら料理をお出ししています。アラは、九州から関西あたりではけっこう食べられていますが、関東ではあまり流通していないようですから貴重な魚とも言えます。特に県外の方はよく召し上がられますし、喜んでいただけますね」。
アラは、市場に近い旧本店の長浜店でウロコを取るなどした後、総本店に届き、それから下ごしらえする。
「さばいたり、霜降り(軽く熱湯に通す)などをして準備します。鍋に使うのは、頭の部分、胸びれの部分、かまの部分などの部位をぶつ切りにしたものです。常々、食材はすべて使わなければならないと思っていますが、アラは身を食べるだけではなく、本当に残すところがない魚です。内臓は、ゆでて酢の物にしますし、皮は揚げて“皮せんべい”になります。えらや、ひれも食べられます。さらに骨から出る良い出汁は『あら鍋』に欠かせませんからね」。
『あら鍋』の具材は、骨付きのアラのぶつ切りと豆腐や野菜。野菜類にも細かな下ごしらえがなされている。
「白菜は何枚かを巻きすで巻いて軽くしぼり、一口大に切ります。この方が食べやすいですからね」。生しいたけは、石突きの下の部分を斜めに切って皿の上に立てる。
ニンジンは、葉の形に細工される…そうやって皿の上にすべての具材が美しく盛りつけられる。
『あら鍋』を注文すると、コンロと鍋、具材が盛りつけられた皿が運ばれてくる。鍋のふたをあけると同時に、アラの良い香りがまわりに漂う。湯気の中、鍋の中には澄んだ出汁と、アラのぶつ切りが見える。
「まず昆布で出汁をとり、塩で少し味付けします。そこに、アラのぶつ切りを入れて火を入れることで、アラからも良い出汁が出ますね。昆布は入れたままにすると、溶けて出汁にとろみが出てきますので、途中で取り除いておきます」。
アラの身は、脂がのってやわらか。自家製ポン酢がその旨味を引き立てる。さらに皿に盛りつけられたぶつ切りを入れ、野菜を入れて食べ進む。
「ぶつ切りは骨付きですが、身もたっぷりついていますから、食べごたえがあるでしょう?どの部位も美味しいのですが、私は目のまわりのところが好きですね。1匹に2つしかないし(笑)、歯応えが独特ですからね」。
すべての具材を食べ終わっての締めは雑炊。アラと野菜の旨味が溶け出した出汁が染み込んだ雑炊も、“あら鍋のメイン”と言っても過言ではない。
総本店の1階には広い厨房があり、厨房を取り囲むようにしてカウンター席が設けられている。
「オープンキッチンで、常にお客様の目がありますから、気が抜けないですね」。
開店準備や営業時間中も、厨房の職人さんたちの立ち振る舞いは凛々しい。その姿も、味への期待を膨らませてくれるものだ。
「基本を大切にしながら工夫を重ねて、美味しいものをお客様に提供していきたいと思っています。それが私たちの“おもてなし”なのです」。
脂ののりがいい大型のアラを使う。ぶつ切りにした骨付きのアラの身は霜降りに(軽く熱湯に通す)しておく
まず昆布出汁をとり、塩で味付けした後、骨付きのアラのぶつ切りを入れてしばらく煮る。昆布は途中で取り除く
ほどよい酸味を持つ自家製ポン酢に、薬味はネギと、もみじおろし。締めは雑炊にして出汁も残さず食べる
醤油をつけて食べるという通常の寿司のスタイルとは異なり、寿司はあらかじめ味付けされた状態で提供。玄界灘をはじめ日本中から取り寄せた旬の魚を使い、素材の味を最大限に活かすための工夫が施された“創作寿司”を食べられる。秋から冬にかけては、あら料理とふぐ料理も看板メニュー。雑炊まで付く『あら鍋』でアラの美味しさを堪能したい。
住所 | 福岡市博多区下川端町8-5 |
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電話 | 092-263-1661 |
営業 | 11:00〜OS21:30 |
定休日 | 年末年始 |
席 | 118席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | ※総本店のほか、長浜店(旧本店)、岩田屋(本店新館)7F店、岩田屋(本店本館)B2F店もあります。 詳しい情報は、下記URLをご覧ください。 http://www.tatsumi-sushi.com/ |