エビのすり身がベース。そこに魚のすり身、タマネギ、つなぎにヤマイモや卵などを入れる場合もある。パンは薄めのものを使う
エビを粗みじん切りにしたり、エビのすり身と、ざく切りを合わせたり、さらに魚のすり身を加えたりと、すり身の作り方は様々だ
エビのすり身をパンに挟んだ後、蒸してから揚げる。蒸し方や揚げ方により食感にも作り手の個性が生まれる
『銀鍋』は創業1952年(昭和28年)。現在は1〜3階が大小宴会向きの『銀鍋』、4階はバーカウンターもある『酒庵』。メニューは全館同じで、壇一雄の小説『火宅の人』に登場した『アラ煮』等のアラ料理をはじめ、様々な長崎の魚介を楽しめる。
メニューの『長崎名物』の欄に書かれているのが『長崎ハトシ』。
「以前は今のように『ハトシ』はメジャーでなかったのですが、ランタンフェスティバル(1993年スタート)の出店で売られ始めた頃から、有名になったようですね。それまでは、卓袱料理の一品などで、料理屋さんで出されていたものが中心でした。今では惣菜屋さんやスーパーで揚げたものも売られていますよ」。と、三代目・新ケ江拓哉さん。
厨房に案内していただき、料理長・田中真一郎さんと一緒に作り方を教えていただいた。
材料は食パン、エビ、魚のすり身、タマネギのみじん切り、卵白。まず、エビの下ごしらえから始まる。
「エビを洗って殻と背わたを取り、身を包丁でたたきます。粗めに切る感じですね。あまり細かくしたり、すりつぶさないのは、プリプリとしたエビの食感を残すためですね」。
次に、すり鉢にほどよい塩味がついている魚のすり身(エソのすり身)を入れて、すりこぎで練るようにしてすりつぶしていく。
卵白を入れてさらに練り、先ほどのエビの身とタマネギのみじん切りを入れて軽く混ぜる。これを食パンにはさむ。
「はさんで揚げたものを食べていただくのでサンドイッチ用の薄いパンを使っています。
パンの表面に刷毛で片栗粉をはたきます。これはパンとすり身がはがれにくくするためですね。一枚のパンにすり身を均一に塗って、もう一枚のパンを重ねますが、パンはあまり高級過ぎないほうがいいようです。高級だと柔らか過ぎて、パンがへこんですり身を塗りにくいんですよ。表面を少し乾かしてから塗ったりもしますよ」。
すり身をパンで挟んだら側面をヘラできれいにならす。
「側面がデコボコしていて隙間があると、揚げる時にそこから油が入ってしまい、全体が油っぽくなってしまうんですよ」。
丁寧に形づくられた後、蒸してから揚げる。
「7〜8分蒸すことで中の具材に火を通し、表面だけを揚げるという感覚ですね。きつね色になって表面がカリッと揚がったら、8等分に切ってできあがりです。
食パンではなく、すり身を丸くして5mm角くらいのサイコロ状のパンをまわりに付けて揚げるものもあるんですよ。『あじさい揚げ』とか『コロコロハトシ』と呼ばれています。他にも、炒り玉子とエビを粗く切ったものを入れる『たまごハトシ』や、エビの代わりに肉を使う『肉ハトシ』という『ハトシ』もありますよ。本来は“ハ”がエビで“トシ”がトーストなので、ハトシにはエビが入っていないといけないのですが、パンで挟んで揚げる料理を長崎では『ハトシ』と呼んでいます。『肉ハトシ』にはエビは入っていませんからね(笑)」。
できたてのハトシは何もつけずにそのまま食べる。表面のパンは天ぷらのようでもありホットサンドのようでもあり、サクサク感が香ばしい。中はほどよく塩味がついたエビ入りのフワフワのすり身だ。
「フワフワのすり身の中にあるエビの甘味が美味しくて、飽きのこない味ですよね。私も大好きです。あらゆる世代の方に食べていただきやすい味ですね。焼酎のつまみにもなりますし。揚げる前に蒸しているし、中はエビの風味がするカマボコのようでもあります。長崎人はカマボコが好きですからね。カマボコ屋さんも多いし、スーパーでもカマボコの種類が多いんです。長崎では、カマボコをたくさん使う『長崎おでん』も売り出し中みたいです。長崎ではカマボコのことを“カンボコ”と呼んでいますよ」。
一度蒸すので、まさにカマボコとも言えるパンに挟まれたすり身。白いすり身の中に散りばめられた赤いエビの色は、見た目にも美味しそうだ。
「エビだけの『ハトシ』もできますが、うちは高級店ではないので、安くご提供できるようにすり身も使っています。美味しいものをリーズナブルにご提供しますので、長崎の味をたくさん食べていただきたいですね!」
サンドイッチ用の食パン、エビ、ほどよく味がついている魚のすり身(エソのすり身)、タマネギのみじん切り、卵白
エビの食感を残すため、エビの身を包丁でたたき粗めに切る。魚のすり身をすりつぶした後、卵白、エビの身、タマネギを入れて混ぜる
食パンにすり身をはさみ、側面をきれいにして約7〜8分蒸して火を通す。その後、表面だけを揚げるという感覚でカラリと揚げる
1〜3階は大小宴会向きの『銀鍋』、4階はバーカウンターもある『酒庵』。どちらでも、壇一雄の小説『火宅の人』に登場した『アラ煮』等のアラ料理をはじめ、長崎の魚を食べられる。うちわエビなど長崎特産の新鮮な魚介を使った刺身もおすすめの一品だ。つなぎに卵白を使う『長崎ハトシ』は、エビのプリプリとした食感が残るよう、エビを粗く切っているのがポイント。
住所 | 長崎市銅座町7-11 |
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電話 | 095-821-8213 |
営業 | 11:30〜14:30/17:00〜23:00(日祝日〜21:00) |
定休日 | なし |
席 | 銀鍋100席、酒庵56席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.ginnabe.com/ |