田芋、シイタケ、カマボコ、豚の三枚肉。田芋はゆでてつぶし、それ以外の材料は小さく切って醤油ベースの甘辛い味付けをする
ラフテーを作る時の煮汁から作られる、煮こごりのような特製調味料で味付けする。出汁、塩、醤油を加えて味を整える
ゆでてつぶした田芋にあらかじめ味付けしたその他の材料を合わせ、特製調味料などを加えて練り上げる
のれんをくぐると、土壁に囲まれた落ち着いた空間。『うりずん』は1972年の創業以来、伝統的な琉球料理を作り続けている。『うりずん』とは、旧暦2、3月ごろの季節を表す沖縄の言葉。山の草木が芽吹き、大地がうるおってくる季節を表す、抱擁感のある言葉だ。
沖縄の料理は料理名だけを聞いても想像できないものがほとんどだが、こちらのメニューには、料理名、写真、簡単な説明などが明記してあってわかりやすい。『ドゥルワカシー』も、名前だけ聞いてもどんな料理かまったくわからないものの一つ。メニューには「田芋(ターンム)を根気よく練り、豚肉、カマボコ、シイタケと混ぜたもの。コクと独特の甘みはやみつきになる味」と書かれている。
まず、厨房におじゃまして『ドゥルワカシー』の作り方を見せていただいた。あらかじめ醤油ベースで甘辛く味付けしたシイタケ、カマボコ、豚の三枚肉を切ったものを鍋に油をひいて炒める。
厨房にいい香りが漂ってきたら、ゆでてつぶした田芋を投入する。
焦げないように混ぜながら、味付けとして、煮こごりのようなものが入れられる。この素はラフテーを作る時の煮汁とのことで、豚肉の旨味も含む特製の“調味料”と言えそうだ。
その後は火を入れながら素早く練る。さらに出汁、塩、醤油で味を整えてほどよく練ったらできあがり。
器に盛りつけ、グリーンピースをのせる。『ドゥルワカシー』は手間も力も必要となるので料理人泣かせの料理だと言われているそうだ。
メニューに書かれているようにコクと独特の甘みを持つ田芋の風味の中、その他の具材が食感や味わいにもいいアクセントとなる。いくらでも食べることができそうなやさしい味わいだ。
店長・下地信幸(しもじのぶゆき)さんに『ドゥルワカシー』についてさらにお話をうかがった。
「『ドゥルワカシー』は一年中メニューにありますが、縁起物として沖縄ではお盆とお正月によく食べられているようです。ですから、農家さんもその時期に合わせて田芋を栽培しているようですね。現在、私たちは定番75種類、プラス季節限定のもの10種類ほどの琉球料理をご提供しています。開店当初は5種類ほどのメニューからスタートしたと聞いていますが、その時から『ドゥルワカシー』はメニューにありました。まさに沖縄を代表する料理の一つなんです。琉球料理は味が濃くて油っぽいというイメージを持っていらっしゃる方もいるかもしれません。でも、昔から続く琉球料理は味付けも見た目もシンプルで、素朴なもの。作るのに手間がかかりますし見た目は地味なものもありますが、食べれば美味しいやさしい料理なのです。私たちはそんな素晴らしい琉球料理をたくさんの方にお伝えしたいと願っています。先代も『琉球料理を世界に広めたい』という想いで当店を開いたのです」。
海外からのお客さんを含め、初めて『うりずん』に訪れる方におすすめするのは、まず『ドゥル天』(ドゥルワカシーをまとめて揚げたもの)、『ラフテー』、『ジーマーミー豆腐』(落花生の絞り汁と葛を練り上げた料理)とのこと。『ドゥル天』は『うりずん』発祥で、広く知られるようになった料理だ。
「今から30年ほど前まで『ドゥルワカシー』は売れ残ることが多く、スタッフがよくまかないで食べていたそうです。ある時、料理人が衣をつけて揚げてみたら美味しくて、それからメニューになったのです。今では『うりずん』を代表する料理の一つになりましたね」。
実は『ドゥルワカシー』としてメニューに出されるものと、『ドゥル天』の中身は全く同じではない。『ドゥルワカシー』はやわらかく、『ドゥル天』の中身はややかために仕上げているとのこと。そんな細かな仕事が半世紀に近い『うりずん』の歴史を支えている。
田芋、シイタケ、カマボコ、豚の三枚肉。田芋はゆでてつぶし、それ以外の材料は小さく切って醤油ベースの甘辛い味付けをする
ラフテーを作る時の煮汁から作られる、煮こごりのような特製調味料で味付けする。出汁、塩、醤油を加えて味を整える
ゆでてつぶした田芋にあらかじめ味付けしたその他の材料を合わせ、特製調味料などを加えて練り上げる
のれんをくぐると、土壁に囲まれた落ち着いた空間が広がる。1972年の創業以来、伝統的な琉球料理を提供。ラフテーの煮汁で味付けし、シイタケ、カマボコ、豚の三枚肉が入った『ドゥルワカシー』をはじめ、定番75種類、季節限定10種類ほどのメニューが並ぶ。代表的な沖縄の味を一通り楽しめる『うりずん定食』3240円がお得。
住所 | 那覇市安里388-5 |
---|---|
電話 | 098-885-2178 |
営業 | 17:30~24:00 |
休み | なし |
席 | 110席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://urizun.okinawa/index.html |