身が厚く脂がのった大きなアラが使われることが多い。皮をはぐことでウロコも一緒に取り除いてから下ごしらえする
ベースとなるのは昆布出汁。具材を加える前にアラの骨を入れて一緒に少し煮ることで、骨からの出汁をとることもある
出汁の入った鍋にアラのぶつ切りや野菜を入れ、各店独自のポン酢で食べる。薬味はネギやもみじおろし。締めは雑炊だ
昼間は静かな街だが、日が沈むと細い路地に多くの灯がともり、名店が軒を連ねる福岡市中央区西中洲。『飯家 くーた』は、福岡市南区大楠で1996年にオープン、2007年に西中洲店が生まれた。
「私たちは食材に妥協はしません。最高のものをお客様に提供することを心がけています。美味しい物を探して全国へ出かけるオーナーからも『高くてもいいけん、一番美味いものを買ってこんといかんよ』と言われているんです(笑)。その時に一番いいものを取り寄せています。」と、店長・樋口俊史さん。玄界灘の魚介をはじめ、北海道や東京築地から取り寄せられた旬の味を、刺身、寿司、天ぷらなどで堪能することができる。
『あら鍋』に使われるアラも厳選されたもの。料理長・内野勇己さんにお話をうかがった。
「アラは1年中扱っているのですが、特に冬場は脂がのっておいしくなりますね。アラは岩場にいるのですが、冬は、ほとんど動かなくなるようです。餌を取りに行くということもなく、目の前に泳いできたものを食べるという具合です。ですから、冬は獲れにくくなり、値段も上がっていきますね。冬場は大体ご用意できますが、天候の具合などで、ご用意できない時もありますので、できるだけ早くご予約いただくのが確実です。私たちは漁師さんから直接取り寄せているのですが、重さにして10kg以上のアラを仕入れています。大きいアラは身も厚くなりますし、脂ののりも良いです。魚体を見ただけでも脂ののりはわかります。尾から腹まわりの肉の付き方がいいんですよね。特に対馬から揚がったアラはいいですね。アラが食べる餌がいいのでしょう」。
厨房に届く新鮮なあらは、丁寧に下ごしらえされる。
「通常の魚はウロコを取ることから始めるのですが、アラはウロコがかたいので、“すきびき”という方法を使います」。
“すきびき”は包丁を寝かせるように使い、ウロコが付いている皮をはいでいく手法。皮にも旨味があるので、できるだけ薄く切らなければならない細かな仕事なのだそうだ。
「脂ののっているアラは、包丁を入れた時にも絡みつくようですし、包丁にも脂がつきますね。内臓を取り出し、刺身などに使う部位と『あら鍋』に使う部位を分けます。『あら鍋』に使う部位はぶつ切りにし、塩でぬめりを取ってから霜降り(軽く熱湯に通す)にしておきます。アラは捨てるところがない魚です。ウロコも揚げて、せんべいのようにすると美味しいですね」。
骨は『あら鍋』の出汁作りに使われている。
「水に昆布とアラの骨を入れて炊き、出汁をとります。昆布はある程度で取り出します。そしてアクをすくっていきます。この出汁は、作り置きはしていません。注文が入ってから作り始めます。食材もですが、出汁も新鮮なもののほうが美味しいと思います」。
この出汁が入った土鍋を温め、まず、アラのぶつ切りを鍋の中へ。次いで野菜を入れ、煮えたらポン酢で食べる。
「ポン酢は、ダイダイ、薄口醤油、濃口醤油、昆布で作った自家製です。1度に3升ほど作り、少し寝かせたものをお出ししています。寝かせると角がとれてまろやかになりますね」。
脂ののったアラの身は弾力があり、やわらかい。身と皮の間にあるゼラチン質はプルプルとした食感だ。さっぱりとした酸味のポン酢が食をすすめてくれる。そして、あらの旨味と野菜の甘味が凝縮した出汁で作る雑炊も旨い。
「アラにはゼラチン質があってコラーゲンもたっぷりなので女性にも人気ですね」。
『あら鍋』以外にも、身を薄く切ったあらを食べる『あらしゃぶ』、甘辛い味わいの『あらすき』も食べられる。さらに「薄造りも美味しいですし、身の表面を軽く炙った『あら炙り刺し』や、身がついている中骨を焼く『中落ち焼き』も絶品ですよ」。
しっとりと落ち着いた空間が“大人”の雰囲気の『飯家 くーた 西中洲店』。食に関しての様々なお願いにも応えてくれる。
「『あら鍋』は一人前からでもお作りします。2人で来ていただいて、いろいろ楽しんでいただいた後、最後に『あら鍋』一人前でも大丈夫です。通常、一人前の『あら鍋』には、アラのぶつ切りが4切れ入っていますが、例えばお一人の方が『1切れだけ食べたい』と言われれば対応いたします」。
その心遣いもあり、地元のお客さんはもちろん、県外のお客さんも多い。
「特に遠方の方には、福岡らしい味を楽しんでいただければと思っています。アラ、フグ、サバは、ぜひ食べていただきたいですね」。
漁師から直接取り寄せる重さ10kg以上のアラを使う。皮と一緒にウロコを取って切り分け、『あら鍋』用のぶつ切りは軽く湯通しする
水に昆布とアラの骨を入れて、炊いて出汁をとる。昆布は途中で取り出す。出汁は作り置きせず、注文が入ってからとり始める
ダイダイを使った特製ポン酢にネギと、もみじおろしを合わせて食べる。最後はアラの旨味と野菜の甘味を含んだ出汁で雑炊を作る
玄界灘の魚介をはじめ、北海道、築地など全国から取り寄せられた旬の魚介を、刺身、寿司、天ぷらなどで食べることができる。『あら鍋』は重さ10kg以上の身が厚く、脂がのったアラだけを使う。魚介類は時価だが、「一人で食べられる小さな『あら鍋』を」といったお願いにも丁寧に応えてくれる。
住所 | 福岡市中央区西中洲2-8 |
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電話 | 092-739-0102 |
営業 | 18:00〜OS翌3:00 |
定休日 | なし |
席 | 60席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | ※西中洲店のほか、東京・銀座店もあります。詳しい情報は、下記URLをご覧ください。 http://www.ku-ta.net/ |