豆乳濃度の高い木綿豆腐で、材料としては嬉野産大豆フクユタカなどの国産大豆と天然にがりを使ったものが多い
嬉野温泉の温泉水で炊く。豆腐が溶けて角がとれ、全体が白濁したら食べ頃。炊き続けると豆腐は豆乳に戻ってしまう
醤油をベースにして、すりゴマなどが入ったさっぱりとしたタレが主流。豆腐が溶けて白濁した温泉水も全て味わうのが嬉野流
嬉野の街に流れる嬉野川。この嬉野川にまたがる三万坪という広大な敷地を持つ宿が『和多屋別荘』。長崎街道を往来していた薩摩藩の宿泊施設に端を発している。温泉は『日本三大美肌の湯』と言われるやわらかな湯。まずは湯の成分について、女将・小原真弓さんがお話してくださった。
「嬉野の温泉の泉質は、正確に言うと炭酸水素塩・塩化物泉というものです。弱アルカリ性でトロリとした感触で、お肌をきれいにしてくれます。嬉野の源泉は95度位で高温ですが、当館は、これを冷まして使っていますので、水を加えていない源泉100%のお湯につかっていただけるんですよ」。
肌にやわらかなこの温泉水は、嬉野の温泉湯豆腐にも欠かせないものとなる。
「温泉水は、重曹と、ナトリウム分である塩分を含んでいます。この重曹とナトリウムの絶妙なバランスで豆腐が溶けるのです。ですから、他の温泉水では豆腐はうまく溶けないようですね。嬉野では温泉水を使って料理するというのは昔からあったようです。その一つとして温泉水を使った味噌汁に豆腐を入れると、豆腐が溶けてまろやかになることが知られ、それが応用されて温泉湯豆腐が食べられるようになったんです。嬉野の名物ですし、みなさんに食べていただきたいと、夕食でも、朝食バイキングでもお出ししています。初めての方は『豆腐を温泉水で炊いただけでどうして豆腐が溶けて、こんなにやわらかな味になるのですか?』と、見た目にも、味わいにもびっくりされますね。そこからお客様と私たちの話が弾んだりもします。特に海外からのお客様の中には、不思議そうに、じーっと見つめていらっしゃる方も多いですね」。
『和多屋別荘』では、温泉湯豆腐は併設のレストラン『佐賀牛賓館』で味わうこともできる。『佐賀牛賓館』で温泉湯豆腐を作っていただいた。
「豆腐はフクユタカを使った豆腐です。甘味も旨味もしっかりしている豆腐ですね。鍋に温泉水と豆腐を入れてコトコトと炊いていきます。こちらでは、厨房で6割方炊いた状態で、お客様にお出しします。あとはテーブルの上で火を加えて仕上げるというわけです。
トロトロに溶けてやわらかな食べ頃になったら、ネギ、ショウガ、もみじおろしといった薬味を入れて特製のタレでお召し上がりください。タレは醤油をベースに、柚子コショウ、すりゴマも加えたすっきりとした味です」。
薬味とタレの風味の中に、豆腐の旨味が広がる。トロトロとした豆腐が口の中でとろけるようだ。
「炊きすぎると溶けてなくなってしまうので注意していただかないといけないですね。お豆腐を追加される方や、温泉水を追加される方もいらっしゃいますね」。
『佐賀牛賓館』は“美味しい佐賀牛を食べていただきたい”という発想から生まれた場所。豆腐を食べ終わった後は、鍋に残った白濁したスープでしゃぶしゃぶを楽しめる。
「佐賀牛の肉自体も、とてもやわらかいものなのですが、お豆腐がとけて白濁したスープが、さらにお肉をやわらかくしてくれます。味わいもまろやかで深い味になりますね。美味しい温泉湯豆腐と美味しい佐賀牛、美味しいもの二つをかけあわせたお料理ですね。消化にも良いようです。牛肉だけではなく、豚肉もよく合います。当館では佐賀県産で肉のキメが細かくソフトな触感が特徴の、若楠ポークのしゃぶしゃぶもご用意していますよ」。
しゃぶしゃぶにした牛肉はポン酢で食べる。こちらも口の中でとろけていく。そして、肉を食べ終わったら、豆腐と牛肉の旨味が凝縮されたスープでうどんを食べ、締めには『湯豆腐粥』をいただく。
「白濁したスープもすべて楽しんでいただけます。嬉野の温泉水は飲用すると胃腸にも良いんですよ。私も仕事柄、お酒を飲み過ぎてしまうこともあるのですが、翌朝温泉水を一杯飲むと本当にすっきりしますね。温泉湯豆腐の白濁したスープは美味しいし、身体に良いものでもあるんです。温泉につかった後は、温泉水を使った温泉湯豆腐…嬉野の湯を身体の外側でしっかりと感じていただいて、その後は身体の内側からも吸収して、美しくなっていただきたいと思っています」。
温泉湯豆腐と、しゃぶしゃぶというおもしろい組み合わせが生まれたのは、“お客様に喜んでいただきたい”という想いからだ。
「旅行されている方々は宿に泊まると思いますが、どの宿でも懐石料理が多くなります。ですから、『温泉湯豆腐』のように、途中で少し違った料理があると喜んでいただけますね。お客様が食べるものを選べる仕組みを作りつつ、そこに佐賀のいいもの、嬉野でしか食べられないものをご用意したいと思っています。お客様の喜ぶ顔を見たいので、お客様の笑顔のためにがんばります!」。
温泉湯豆腐に使う豆腐は、フクユタカを使ったもの。甘味も旨味もしっかりした味わいの豆腐だ
鍋に温泉水と豆腐を入れてコトコトと炊いていく。厨房で6割方炊いた状態で提供し、テーブルの上で熱を加えて仕上げる
タレは、醤油ベースに柚子コショウ、すりゴマも加えたすっきりとした味わい。ネギ、ショウガ、もみじおろしといった薬味を入れて食べる
水を加えない源泉100%の湯につかった後は、自慢の温泉湯豆腐を。宿泊すれば夕食、朝食などでも食べられるが、併設のレストラン『佐賀牛賓館』は食事だけの利用も可。嬉野産の大豆・フクユタカで作られた豆腐を温泉水で炊いた、温泉湯豆腐も食べられる。豆腐がとろけて白濁した温泉水を使う佐賀牛のしゃぶしゃぶも味わいたい。
住所 | 嬉野市嬉野町大字下宿乙738 |
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電話 | 0954-42-0210 |
営業 | 11:00〜OS14:30/17:00〜OS21:00 |
定休日 | なし |
席 | 70席 |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.wataya.co.jp/ |