九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

材料

田芋、田芋の茎、豚バラ肉と水で戻した干しシイタケ。仕上げに添えるカマボコとグリーンピースも使われる

味付け

シイタケと豚バラ肉の味付けに使うのは干しシイタケの戻し汁、醤油、ミリン、泡盛、三温糖、沖縄産の塩。練り上げる時にカツオ出汁も使う

作り方

すりつぶした田芋と細かく切った田芋の茎に味付けしたシイタケと豚バラ肉を加える。カツオ出汁などを合わせ、熱を加えながら練り上げる

語り 琉音(りゅうね) 小林清髙の「ドゥルワカシー」

店主・小林清髙さん

店主・小林清髙(こばやしきよたか)さんは会社勤めの後、「沖縄そば屋をやりたい」と出汁を学びに沖縄を訪れた。その際に琉球料理と出会い、奥深さに魅かれ修行を始めたのだそう。2012年、かつて琉球料理の名店だった場所を引き継ぎ、『琉音』をスタートさせた。

料理は品数が違う3種類のコースメニューのみ(当日の朝までに予約が必要)。
「琉球王朝の宮廷料理の流れを組んだコースです。季節に応じた県産食材を活かし、地産地消を目指しています」。『琉音』は沖縄県が認定する『おきなわ食材の店』にも認定されている。
『ドゥルワカシー』はすべてのコースで食べられる一品だ。
「豚肉料理のラフテーなどもお出ししますが、『ドゥルワカシー』はコースの中でメインとも言える料理なんです」。その理由は作り方のお話と料理風景を見るとよくわかる。
小林さんの毎日の仕事は、他の料理にも使うが、『ドゥルワカシー』にも欠かせない出汁をとることから始まる。
「本節をその日にスライスしてもらったものを取り寄せて出汁を取ります。本土の水は軟水の地域が多いですが、沖縄の水は硬水。カツオ出汁がよく出ますね」。
田芋や具材の下ごしらえも必要だ。
「ターンム(田芋)はアクを取るために皮をむいて切って蒸した後、すり鉢ですりつぶしておきます。タームジ(田芋の茎)はゆでてアク抜きした後、細かく刻みます。豚バラ肉と水で戻した干しシイタケはさいの目切りにします」。

田芋と皮をむいて蒸した田芋

そして具材の準備。
「さいの目切りした豚バラ肉と水で戻した干しシイタケを、干しシイタケの戻し汁、醤油、ミリン、泡盛、三温糖、沖縄産の塩を合わせ火を加えながら味付けします。
そして調理。すりつぶした田芋、細かく刻んだ田芋の茎を入れ、ゴマ油、サラダ油、カツオ出汁、味付けした具を加え、中火にかけながら混ぜ合わせて練っていくのです。田芋に味が染み込み耳たぶぐらいのかたさになるまで練り続けます。

味付けした干しシイタケと豚バラ肉
田芋に味付けした干しシイタケと豚バラ肉、田芋の茎を加え、カツオ出汁などを合わせて1時間ほど練り上げる

練れば練るほどかたくなっていくので、ただ練ればいいというものではありません。ほどよいかたさに練るのに1時間くらいかかるのですが地味な仕事ですね(笑)。最後にさいの目切りしたカマボコとグリーンピースを盛りつけて完成です。手間のかかる料理No1ですね(笑)」。

器の赤色とグリーンピースの緑色で彩りもある『ドゥルワカシー』。もちもちとした食感の中にカツオ出汁の旨味や田芋の風味が広がる。沖縄を感じる味わいだ。
「初めて食べた時、もっちり感と田芋の甘味に驚いたことを覚えています。大人の味、やさしい味だとも感じましたね。本土の芋料理だと裏ごしすることも多いですが、『ドゥルワカシー』はまるごとすりつぶしたものですから食物繊維もたっぷりですね。沖縄の言葉で“ドゥル”は泥、“ワカシ”は(沸かす=)煮るという意味。『ドゥルワカシー』の直訳は“泥のようなものを煮る”という意味なんです。田芋は水田で育ちますから、まさにその通りですね。金武町(きんちょう)と宜野湾市大山(ぎのわんしおおやま)とが田芋の産地ですが、味が違いますね。田芋は他にも揚げ物にしたり煮物にしても食べられています。田芋の揚げ物はコース料理でお出ししていますよ」。

コース料理では、前菜からデザートまで『ドゥルワカシー』をはじめとした様々な琉球料理を食べることができる。料理が盛りつけられる器は沖縄の焼物、琉球漆器、琉球ガラスなど。料理とともに沖縄の文化や歴史を感じさせてくれる。
「琉球王朝がなくなった時、王朝の料理人が辻町に集まり料理を出すようになりました。そして宮廷料理だったものが一般家庭にも広まっていったのです。『ドゥルワカシー』もその一つですね。『ドゥルワカシー』は、今の沖縄で60代以上の方はみなさんご存知と思いますが、若い世代では知らない方も多いようです。伝えていくためにも、たくさんの方に食べていただけるとうれしいですね」。

すべての料理を手がける小林さんは、いつも真摯な姿勢で仕事に取組まれている。「一品いっぴん、“てぃーあんだの精神”で料理をさせていただいています」。“てぃーあんだ”とは直訳すると“手の油”。転じて“愛情を込めて手作りする”という意味だ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

材料

田芋、田芋の茎、豚バラ肉と水で戻した干しシイタケ。仕上げに添えるカマボコとグリーンピースも使われる

味付け

干しシイタケと豚バラ肉の味付けに使うのは干しシイタケの戻し汁、醤油、ミリン、泡盛、三温糖、沖縄産の塩。練り上げる時にカツオ出汁も使う

作り方

すりつぶした田芋と細かく切った田芋の茎に味付けした干しシイタケと豚バラ肉を加える。カツオ出汁などを合わせ、熱を加えながら練り上げる

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琉音(りゅうね) コース料理で楽しむ王朝の宮廷料理

“てぃーあんだの精神”で手がけられるのは、琉球王朝宮廷料理の流れを組んだコース料理。前菜からデザートまで琉球漆器や沖縄の焼物などに盛りつけられた滋味深い料理を楽しめる。『ドゥルワカシー』は、田芋の茎、干しシイタケと豚肉を具材に練り上げたもの。もちもちとした食感の中にカツオ出汁の旨味と田芋の風味が広がる。

『どぅるわかしー』。コース料理3780円~で食べられる
豚肉にすった黒ゴマをのせて蒸した『みぬだる』。コース料理3780円~で食べられる
テーブル席(写真)と堀ごたつ式の個室がある
繁華街・国際通りから少し離れた静かな街の一角で営業

琉音(りゅうね)

住所 那覇市久米1-16-13
電話 098-868-3456
営業 完全予約制 当日の午前中まで予約を
入店時間は17:00~19:30
休み 水・日曜
18席
カード 不可
駐車場 なし
URL https://r.gnavi.co.jp/faud600/
※記載した内容は2017年12月22日現在のものです。
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