九州の味とともに 冬

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

ウロコを落とし、内臓をとった『このしろ』は、塩をして、甘酢に漬け込まれる。塩の仕方や漬け込みの時間で味わいが変わる

すし飯と薬味

通常のすし飯がベースだが、そこに、ショウガ、ゴマ、大葉、ネギなどの薬味が加わることで、『このしろ』の旨味が際立つ

巻き方・作り方

酢で締めた『このしろ』とすし飯は、基本的には巻きすなどを使って押し固める。固め方も作り手によって異なる

語り 和食処 千里十里 井上常次の「このしろ姿寿司」

井上常次さん

「大広間もあって宴会もできますが、定食メニューもたくさん用意していますので、ご家族連れも大歓迎です!」とご主人の井上常次さん。八代海の新鮮な魚介類を使った和食メニューを中心に、つまみ類から定食類までメニューは豊富。グランドメニューに載っている料理には番号がふられているが、その番号はなんと217番まである。さらに、テーブルの上にはプラスアルファのメニューが書かれた紙も置かれている。そんな中、『このしろ姿寿司』はメニューには載っていない特別メニューだ。
「メニューに普通は載せていません。準備に時間がかかるんですよ。2日前までにご予約いただければ食べていただくことができます」。

時間をかけて作られる『このしろ姿寿司』の作り方を教えていただいた。
「新鮮な『このしろ』を仕入れて、ウロコをとり、内臓をとり、背開きします。背開きは、背中から開く、ということですから、背骨は取りますが、腹側のところはつながったままで、そこにある小骨はそのままということですね。『このしろ』を選ぶ時は、目が赤くないものを選びます。目が赤いということは、血が回っていて、ちょっと生臭くなっているということなんです。年中食べられますが、秋から冬が大きくなって、脂ものっていいですね。

背開きして塩をした後、2日間甘酢に漬けた『このしろ』

背開きした身にたっぷりと塩をして約1時間おき、塩を落とした後、甘酢に2日間漬け込んでおきます。こうすることで、臭みもとれますし、旨味も増しますし、骨もやわらかくなります。だから2日前にご予約いただかないと作れないのです」。

『このしろ』の上にすし飯をのせる

2日間甘酢に漬けた『このしろ』の内側にすし飯をのせ、ある程度形を整えてから巻きすで巻く。

巻きすを使って巻く

「すし飯は、通常のすし飯にゴマとショウガを刻んだものを合わせています。巻いた後は、ちょうど『このしろ』が仰向けになっているような状態になりますね。仕上げに『このしろ』の表面に刷毛で“かえし”を塗ります。“かえし”とは、みりん、出汁などで作った調味料ですね」。

仕上げに“かえし”(酢や出汁を合わせたもの)を塗る

最後に大きめに切ってできあがり。腹の部分の小骨に包丁が当たると、ざくっと音がする。そのまま食べても、ショウガとゴマの香りの中に、ほどよい塩味と酸味が広がり美味しいし、醤油を少しつけて食べてもいい。腹の部分の小骨を多少感じるが、そこまで気にせず食べられる。

包丁で大きめに切る

「腹の骨は残していただいてもいいのですが、みなさん食べてしまわれますね。頭は無理して食べなくていいですが、かまの部分は美味しいので、そこだけはぜひ食べてみてください。好きな人は、頭の部分まで何も残さずに食べられますよ(笑)。姿寿司以外では、『このしろ』は、なます、南蛮漬け、酢の物にして小鉢にしたりもします。刺身でも美味しいですね。刺身は薄切りにするのではなく、小さく切って、ショウガ、ネギ、七味唐辛子を薬味にすることが多いですね」。

他ではあまり見ない『このしろ姿寿司』。井上さんも小さい頃から食べられていたのだろうか?
「『このしろ』は八代の海で豊富に獲れる魚で、姿寿司は私が物心ついた時にはありました。好きとか嫌いとかいう前に、もう食べていましたね。祭り事や盆、正月には欠かせない料理で、私が知る限りでも100年くらいは続いていると思いますよ。見た目から、苦手に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、八代の方々は、子どもでもみんな食べているんじゃないでしょうか」。

『千里十里』で提供している豊富なメニューはボリューム満点な上に値段も安い。安さは『このしろ姿寿司』も同じだ。
「どれも八代価格なんです(笑)。『このしろ姿寿司』も、一匹を使った1本は200〜300円です。八代では『このしろ』が安いことをみなさん知っていらっしゃいますしね」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

ウロコと頭を落として三枚におろし、腹側の小骨が多いところを落とす。塩をして10分くらいおいた後、酢の中に20分ほど漬ける

すし飯と薬味

通常のすし飯にゴマとショウガを刻んだものを合わせる。ゴマとショウガの香りと食感も『このしろ』の風味を引き立てる

巻き方・作り方

背開きした『このしろ』にすし飯をのせて巻きすで巻く。仕上げに『このしろ』の表面に“かえし”(酢や出汁を合わせたもの)を塗る

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和食処 千里十里 200種類以上のメニューが揃う和食店

寿司、天ぷらなど、八代海の新鮮な魚介類を使った和食メニューを中心に、つまみ類から定食類まで200種類以上のメニューが揃う。どのメニューもボリュームもあり値段もお手頃で、家族連れの食事にも宴会にも利用しやすい。さばいた後の身を2日間甘酢に漬け込む『このしろ姿寿司』は、ほどよい酸味の中に身の旨味が広がる(2日前までに要予約)。

『このしろ姿寿司』200〜300円(大きさによる)。2日前までに要予約
ランチタイム(11:00〜15:00)の『千里十里弁当』525円は大人気のメニュー。夜の『千里十里膳』2,000円なども格安メニューだ
写真のカウンター席と座敷席の他、大広間が3部屋あり、宴会にも便利

和食処 千里十里

住所 八代市田中西町4-3
電話 0965-35-8139
営業 11:00〜22:00
定休日 第1火曜
150席
カード 不可
駐車場 あり
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