九州の味とともに 夏

大分 黄飯

天保年間の倹約精神から生まれた
赤飯の代わりに食べられていた黄色のごはん

国宝の石仏で有名な臼杵市(うすきし)。江戸時代にこの地を治めていた稲葉氏(いなばし)は、財政が苦しかった天保年間(てんぽうねんかん/1830〜1844)に徹底した質素倹約を励行した。この倹約精神から生まれた料理の一つが『黄飯』だといわれている。『黄飯』はクチナシの実を水に浸しておき、黄色に染まった水で炊いたごはん。当時、小豆は貴重なものであり、祝いごとの時などに赤飯の代わりとして『黄飯』が食べられていたのだ。なお、その色から江戸時代以前に臼杵を治めていたキリシタン大名・大友宗麟(おおともそうりん/1530生〜1587没)の時代にスペイン料理のパエリアを模して作られたという説もある。

『黄飯』に添えられるのが、『かやく』と呼ばれる料理(『けんちん』と呼ばれることもある)。大根などの根菜類を中心にした具材を油で炒めた後、砂糖、醤油などと水を加えて炒め煮する。具材には豆腐や臼杵によく揚がるエソなどの魚の身もよく使われている。別々ではなく、『黄飯』に『かやく』をのせて食べるのが臼杵での食べ方。素朴な味わいだが、『黄飯』はほのかなクチナシの香りと華やかな色で祝いの席を彩る臼杵の大切な郷土料理だ。

臼杵について

『うすき街並みガイドの会』会長・石崎達雄(いしざきたつお)さんと臼杵を歩き、臼杵の歴史や街並みについてのお話をうかがった。

『うすき街並みガイドの会』会長・石崎達雄さん
石崎達雄さん

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●臼杵の街並み
「臼杵が城下町として栄えていったのは、1556年に大友宗麟が臼杵城を建城してからです。当時、城のあった場所は丹生島(にうじま)という完全な島でした。攻めにくい場所にある自然を利用した要塞というわけですね。ですから、臼杵は城を中心にしてその周囲に城下町を作ってはいないのです。寺院が非常に多く、城下町の中だけにでも50ほどありますね。関ヶ原の戦いの後から明治に至るまで、臼杵は稲葉氏が治めていました。大友宗麟はキリシタン大名でキリスト教徒も多かったのですが、江戸幕府はキリスト教を禁じましたので、弾圧を受けないように1600年から約40年をかけて仏教徒に変えていったという歴史も残っていますよ。日本各地によく知られている城や城下町がありますが、その中で、臼杵には武家屋敷が50ほど残っているのが特徴です。電線を地中に埋めるといった取組みも行なわれていて、雰囲気のいい通りがいくつもあります。CMの撮影などに使われることも多いんですよ」。

かつては断崖絶壁の島だった場所にある臼杵城址
かつては断崖絶壁の島だった場所にある臼杵城址

●臼杵の倹約精神
「天保の時代、臼杵藩の財政は悪化していました。臼杵藩は26万両の借金を抱えていたといわれています。そこで、藩の財政を立て直すために、江戸家老職にあった村瀬庄兵衛(むらせしょうべえ)が臼杵に戻り、中心となって改革を行なったのです。“入りを量りて、出るを制す”の方針で質素倹約に取り組みました。食べ物、着る物、家の門の幅や柱の太さにいたるまで、細かく決められていたのです。『黄飯』、『きらすまめし』、『茶台寿司』などもその当時に質素倹約の精神から生まれたようです。お雛様に関しても『紙雛』しか許されていなかったんですよ」。 臼杵城址、味わい深い石畳の坂道がある二王座(におうざ)など散策するだけでもおもしろいが、様々なお話を聴きながらだと「なるほど!」と思えることは倍増する。「『臼杵はいいところだね』と思ってもらえるとうれしいですね」と石崎さん。

地中に埋まっている親芋から芋茎が伸びる
古い街並みが続く二王座

●うすき町並みガイドに関する問合せ
0972-63-7898(石崎)
時間、料金等に関しては要問合せ

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「黄飯」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
クチナシ

クチナシの実を割って水につけておき、黄色に染まった水を作る。煎じるという方法もあるようだ

炊き方

研いだ米を黄色に染めた水に漬けて炊く。浸水時間が長すぎたり炊き方によっては緑色に炊きあがってしまうとのこと

かやく

大根、ゴボウなどの根菜類、豆腐、魚(エソがよく使われる)のすり身や焼いた身を炒め、醤油などの調味料と水を加えて炒め煮する

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