ド・ロ神父が外海地区に伝えた、
手延べ製法で作る太めでコシの強い麺
1868年、フランス人宣教師のマルク・マリー・ド・ロ神父が来日。1879年に長崎市西出津町(旧外海町)に赴任した際、布教活動とともに土木、医療、教育、農業、漁業などの発展に私財を投じて、住人たちの生活向上に尽力した。その業績に感謝し、地元では今もド・ロ神父のことを『ド・ロさま』と呼び敬愛している。ド・ロ神父の行なった事業の一つが製麺技術を伝え、そうめん工場を設立したこと。ド・ロ神父が製法を伝え、今もこの地で食べられているのが『ド・ロさまそうめん』だ。
材料は小麦粉・塩・水・油(当時は落花生油が使われていたが、現在は綿実油など植物油が使われている)。気温や湿度を考慮しながら手延べ製法で作られる麺の特徴は、一般的なそうめんよりもやや太くコシが強いこと。冷やしてツユにつけて食べても、熱いツユを合わせたにゅうめんにしても美味。地元では味噌汁の具材として使われることも多い。焼きそばやパスタのようにして食べられることもあるようだ。
1年を通して外海地区で食べられている『ド・ロさまそうめん』。独特の食感とすっきりとした喉越しは、ド・ロ神父にまつわる歴史から生まれたもの。深い歴史浪漫を感じながら楽しみたい。
フランスのヴォスロール村に生まれたマルク・マリー・ド・ロ神父は1868年に長崎へ渡来。
横浜転勤、長崎市の大浦天主堂付司祭を経て、1879年に外海地区に赴任し出津教会主任司祭となった。外海地区で暮らす人々の生活の困窮を救済したいと、私財を投じて様々な事業を展開した。孤児院・救助院・診療所の建設といった社会福祉事業、農地の開墾、マカロニ・そうめんの生産など産業と雇用の創出…ド・ロ神父はフランスに帰ることはなく、外海に暮らす人々のために尽くした。『ド・ロ神父記念館』『旧出津救助院』『出津教会堂』などを訪ねれば、ド・ロ神父の功績を知ることができる
現在、『ド・ロさまそうめん』を製造・販売しているのは『サンフリード』一社のみ。出津ド・ロさま麺事業部・営業課長の本多利三(ほんだとしぞう)さんにお話をうかがった。
●出津ド・ロさま麺事業部の成り立ち
「そうめんづくりはずっと受け継がれていたのですが、第二次世界大戦の混乱の中で途絶えてしまいました。その後、復活の気運が高まり、1982年に地元の団体と修道院のシスターたちの記憶を手がかりに復活したのです。しかし、なかなかうまくいかない部分も多く、旧出津農産加工生産組合だけが生産するという状況になりました。そして、2008年『出津ド・ロさま麺事業部』として私たちがその事業を継承することとなったのです。製法だけではなく、ド・ロさまやこれまで関わってこられたすべての方々の想いも引き継いでいると思っています」。
●『ド・ロさまそうめん』の材料
「小麦粉、水、塩、綿実油を使っています。ド・ロさまは落花生の油を使っていましたが、2010年から綿実油を使っています」。
●『ド・ロさまそうめん』の製造工程
「小麦粉・水・塩をこねた後、ひも状にのばします。この時に表面に油を塗っているのです。その状態で熟成させた後、さらに細くひきのばし乾燥させます」。
「温度・湿度によっても少し変わりますが、こねるところからできあがりまで3日間ほどかかりますね。機械化している部分もありますが手作業が多いですし、手延べであることに変わりはありません」。
●『ド・ロさまそうめん』の特徴と食べ方
「一般的なそうめんよりもやや太く、食感とコシが特徴ですね。一般的なそうめんのゆで時間は1分半ほどかと思いますが、『ド・ロさまそうめん』は約3分ほどゆでていただくといいかと思います。冷たくしても、地獄炊き(そうめんと湯が入った鍋を火にかけた状態で食べる)にしても、にゅうめんにしても美味しく食べていただけます。地元では、味噌汁に入れたり、お祝いの席で鯛そうめんにして食べたりもしています。炒めて食べるのも美味しいですね」。
●『長崎スパゲッチー』について
「ド・ロさまはマカロニ工場を建設し、村人とパスタの製造を始めたと言われています。当時の製法・技術を再現し、ド・ロさまが伝えたかった味わいの再現を目指して生まれたのが『長崎スパゲッチー』です」。
「こちらはデュラムセモリナ粉を使い、弾力感とモチモチ感が強くなっています。工場ではそうめんとスパゲッチーを1週間交替くらいでつくっていますが、夏場はそうめんの製造が多くなりますね」。
■(株)サンフリード
長崎県長崎市田中町584-1
TEL 095-813-8787
http://www.sunflead.co.jp/
各店で使われるそうめんは、ド・ロ神父が製法を伝え、今もこの地で食べられているもの。手延べ製法でやや太くコシが強いのが特徴
一般的なそうめんよりも長めにゆでる。ツユで食べる冷そうめんや、温かいツユと合わせるにゅうめんなどで食べる
冷そうめんのツユも、にゅうめんの温かいツユも、そうめんのしっかりした味わいを生かす味となるように工夫されてる
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