プルプルもっちりした食感の中に
トロリと広がる大豆の旨味
水に浸した大豆をすりつぶしたものは“呉”と呼ばれる。“呉”を炊いた後、それを絞って、豆乳とおからに分ける。豆乳に葛やデンプンを混ぜ、熱を加えながらゆっくりと練りあげてできあがるのが『呉豆腐』だ。豆乳にニガリを加えてつくる一般的な豆腐とは違う、トロリとしてプルプルもっちりとした食感を持つ。デンプンの加え方、練りかたが食感を大きく左右するため、作り手は工夫をこらしている。
昭和の初め、大豆の買付けに長崎を訪れた有田の豆腐屋が、中国人から葛を使った豆腐を聞き習ったのが始まりと言われている。精進料理の一品として有田で食べられるようになり、やがて呼び名は『呉豆腐』に。今では、普段の食卓にものぼるようになり、有田の郷土料理として知られるようになった。
すりゴマ、砂糖、醤油などで作る少し甘めのゴマ醤油をかけていただくのが一般的な食べ方だが、ワサビやショウガを合わせても旨い。最近では黒蜜やきなこをかけデザート感覚で食べる食べ方も広まっている。直接タレや蜜をかけて食べる以外に、天ぷらにしたりフライにしても美味しい。
佐賀県は全国でも上位に入る大豆の産地。タンパク質の含有量が高く豆腐づくりに適した『フクユタカ』を中心に大豆が栽培されている。
呉豆腐の起源には様々な説もあるが、『有田観光情報センター』では、以下のような話も聞かせていただいた。
有田町内にあった寿司屋のおばあちゃんが昭和4年10月31日に、長崎の中国人から呉豆腐の元となる作り方を教えてもらった。そして、その寿司屋で呉豆腐を提供するようになり、やがて有田の街に広まっていった。ただ、現在その寿司屋は残っていないので、詳しいことは確認できない。
佐賀県西部に位置する西松浦郡田町は、有田焼の産地として有名。ゴールデンウィークに開催される『有田陶器市』には、毎年100万人を越える観光客が訪れ街はにぎわう。『佐賀県立九州陶磁器文化館』や『有田ポーセリンパーク』などでは、常時、匠の技から作られた器にふれることができる。
呉豆腐の味の決め手となるのは大豆。各店とも厳選した大豆から美味しい豆乳をつくることを心がけている
ニガリではなく葛やデンプンを入れて練るのが呉豆腐の特徴。豆腐店では、デンプンのみを使用している場合が多いようだ
かつては完全な手づくりだったが、今ではミキサーも導入されている。しかし、重要なポイントでの手作業は欠かせない
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