江戸時代の倹約令が生んだ
質素倹約を今に伝える臼杵の味
“きらすま・めし”ではない。語感から想像するような、ごはんを使った料理ではないのだ。臼杵の方言で“きらす”はおからを、“まめし”はまぶすを意味している。“きらす・まめし”つまり、“おからをまぶす”料理が『きらすまめし』だ。
江戸時代の『天保の大飢饉』の後、倹約令が出された。臼杵藩でも徹底的な倹約が行なわれた時に生まれた料理で、魚をおろした後の中落ちや、刺身にした後の切れ端に、おからをまぶして食したというのが始まりだ。そんな臼杵の先人たちの食べ物を無駄にしない知恵は、今も引き継がれている。
ブリ、マグロ、アジなど季節の魚の切り身を醤油や三杯酢などのタレにしばらく漬け込んだ後、おからをあわせ、さらに刻んだネギやしょうがを混ぜ入れる。仕上げに大分特産のカボスを絞ればできあがり。素朴なおからの味わいと魚に染み込んだほどよい醤油の風味がとても合う。香味野菜と爽やかなカボスがその味をひきしめる。
単純な料理だけに、旨さを知ると目から鱗。臼杵の先人たちの発想に、さらに驚く。決してメインとなる料理ではないが、臼杵には欠かせない味だ。
国宝『臼杵石仏』で知られる街。キリシタン大名・大友宗麟(おおともそうりん)が1562年に丹生島に臼杵城を築いたところから、城下町の歴史が始まった。豊後水道に面しており新鮮な魚介に恵まれている。
江戸時代の天保4年(1833年)から6年間続いたと言われる飢饉。洪水と冷害が東北地方に甚大な被害をもたらし、それが全国へと伝播した。この飢饉が原因となり、天保8年には大阪で大塩平八郎の乱が起こった。
刺身や焼き魚にかけたり、ポン酢の素にしたりと、大分県全体で様々な料理に使われている柑橘。熟す前の緑色のものを収穫してしぼり汁を使う。爽やかな酸味と香りが特徴だ。臼杵市は大分県の中でもカボスの収穫量が多く、“市の木”にもなっている。
家庭ではブリ、マグロ、アジなど季節の魚を一口大に切ったものを使うことが多いが、飲食店ではマグロの赤身を使うことが多い
おからと一緒にまぜられるのは、刻んだネギやすりおろしたショウガ。カイワレ大根を入れる店もある。カボスの絞り汁も欠かせない
きらすまめしに使われる唯一の調味料で、この中に魚を入れてヅケにする。醤油のみ、三杯酢など、各店・各家庭ならではの味だ
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