九州の味とともに 夏

長崎 皿うどん

パリパリの細麺にかかる甘い五目あん
ソースもかけていただく長崎の中華料理

油で揚げられたパリパリの細麺にかけられているのは、豚肉、魚介、野菜などがたっぷりのとろりとした五目あん。そこにウスターソースをかけていただく…それが長崎ならではの『皿うどん』だ。

『皿うどん』のルーツは、やはり長崎で生まれたちゃんぽん。ちゃんぽん発祥の店『四海楼』の創始者・陳平順氏が、ちゃんぽんをベースに、汁なしの焼きそばのような料理を生み出し、それが『皿うどん』と呼ばれた。さらにパリパリの細麺に五目あんをかけた料理を生み出し、それも『皿うどん』と呼ばれるようになったのだ。現在、前者を『太麺皿うどん』、後者を『細麺皿うどん』と区別している店も多い。

ソースをかけると美味しいのは、砂糖が入っている五目あんが甘いから。江戸時代、砂糖が手に入りやすい長崎では、砂糖を使う料理は最高のぜいたく品だった。そんな歴史もあり、いまだに長崎の料理には砂糖が入る甘口のものが多く、皿うどんも然りだ。ちゃんぽん麺と同様、『唐灰汁』が入り独特の風味を持つ細麺と五目あんのハーモニーが美味。しかし、時間が経ちやわらかくなった麺を好む人も多い。

鎖国時代、唯一の貿易港として中国を初め異国の文化を受け入れ栄えた長崎。中華料理が、長崎の風土と出合って生まれた皿うどんは、長崎ならではの中華料理だ。

金蝶ソース

長崎市民で知らない人はいない皿うどんに欠かせないウスターソース。昭和初期には長崎市内の幾つもの醤油店がウスターソースをつくっていたが、今でも残っているのはこのソースだけだ。現在では、『チョーコー醤油』が製造・販売している。大村市の工場で年間8万リットル以上製造されているが8〜9割は長崎市内で消費されている。

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発売当初からほとんど変わらない味の特徴は、ほんのり甘い香りと酸味が強いこと。ちなみに、商品に貼られているラベルの原材料名の一番目には『醸造酢』と書かれている。また、その酸味が際立ち過ぎないように香辛料も多く入っている。酸味が強いので、甘い皿うどんをさっぱり食べられるというわけだ。

長崎では皿うどんにかけるだけではなく、様々な料理に使われている。薄い生地の上に具材をのせてタコスのように折りたたむ『長崎風お好み焼き』にも金蝶ソースをかける。

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唐灰汁(とうあく)と細麺

昭和初期に中国から伝わった、ちゃんぽんや皿うどんの麺に欠かせない材料が唐灰汁(とうあく)。その成分は炭酸カルシウム90%、炭酸カリウム10%で麺に独特の色と風味を与える。現在、長崎にある4店でしか製造されていない。細麺の材料は小麦粉、水、唐灰汁で、それらをこねて細い形状にして蒸したものが“細麺の生麺”。生麺を揚げるのは各店で行なう

「皿うどん」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
スープ

ちゃんぽんや太麺皿うどんにも使う、鶏ガラスープとトンコツスープをブレンドしたスープを使う店が多い

具材

キャベツ、モヤシなどの野菜に豚肉と魚介類が入る。夏場はアサリ、冬場はカキを入れる店が多い。タマネギは好みが分かれる具材だ

作り方

具材を炒め、スープを入れ、味を整えて最後にとろみをつけるが、スープを入れるタイミングなどは各店で異なる

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