九州の味とともに 冬

福岡 柳川鍋

甘辛い味と独特の風味に焼酎がすすむ
土鍋で作るドジョウの卵とじ

川下りと北原白秋(きたはらはくしゅう/明治から昭和にかけて活躍した詩人・童謡作家・歌人)の生家がある街として知られる福岡県柳川市。名物の『鰻のせいろ蒸し』とともに昔から親しまれている料理が、ドジョウを使った『柳川鍋』だ。

下ごしらえとして塩揉みや水洗いをすることで表面のぬめりをよく落としたドジョウをさばいて開く。それをささがきしたゴボウなどと一緒に底の浅い土鍋に並べ、出汁・醤油・砂糖などを合わせたタレで煮込み、溶き卵をかけて卵とじにすればできあがり。やわらかなドジョウの身をふんわりとした卵と甘辛い味わいが包み込む。焼酎のつまみにも、ごはんのおかずにもぴったりの一品だ。江戸時代に生まれたと言われる『柳川鍋』の名前の由来には、柳川で焼かれた土鍋を使っていたからなど様々な説があるようだ。

決して泥臭いわけではないが、ドジョウ独特の風味が感じられる『柳川鍋』。柳川を訪れたら、鰻とともにぜひ食べておきたい郷土の味だ。脂が少なくさっぱりしていること、カルシウムを多く含み、ビタミン類も豊富であることなどから、スタミナ食としても再注目されている。

ドジョウの栄養成分について

ドジョウは水田や湿地帯など全国的に広く生息し、シマドジョウ、アジメドジョウなど10種類ほどが存在している。水田地帯では古くから食用にされていたが、現在では食用にする習慣は少なくなっているようだ。

古くから「鰻一匹、ドジョウ一匹」という言葉があり、鰻一匹とドジョウ一匹の栄養価は匹敵すると考えられていた。

ドジョウと柳川鍋の栄養成分等について管理栄養士の松隈紀生さん(中村学園大学短期大学部元教授)にお話をうかがった。

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●ドジョウの栄養成分と生理機能成分
「ドジョウの栄養成分の特徴として、カルシウム、鉄分、亜鉛、ビタミンB2、ビタミンB12が多いことがあげられます。鰻と比較すると、カルシウムは8倍以上、鉄分は10倍を超えています。タンパク質は鰻と同じくらいで、脂質が少ないためカロリーは鰻の1/3程度。ヘルシーな食材とも言えますね。他にもビタミンB2は2倍以上、ビタミンB12も2倍以上になります。」


●『柳川鍋』の栄養
「ドジョウの栄養成分に加え、ゴボウの持つ食物繊維の働き、さらに卵という良質のタンパク質が加わり、スタミナ食として有効ですね」。

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「柳川鍋」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
下ごしらえ

塩揉みや水洗いでドジョウのぬめりを取り、さばいて開く。タレで煮込む前に、下ゆでしたり、素焼きにしたりすることもある

味付け

味付けには出汁、醤油、砂糖、みりんなどを合わせた甘辛いタレを使う。仕上げに山椒や一味唐辛子をふりかけることも多い

作り方

土鍋にささがきしたゴボウと開いたドジョウを並べ、タレを注いで火にかける。溶き卵を加えて卵とじにしてネギなどの薬味をちらす

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