もちもちとした“だご”入りの
身も心も温まる素朴な汁料理
“だご”とは、小麦粉と水を混ぜ合わせてこね、のばして帯状に切ったもの(米粉や、そば粉を使ったり、手でちぎって作るだごもある)。この“だご”と野菜がたっぷりと入った味噌風味の汁料理が『だご汁』だ。簡単に作れて腹持ちがよく、栄養価も高いことから、元々は日々忙しい農家で食べられていた料理だが、今では熊本県を代表する郷土料理の一つになった。阿蘇市を東西に貫く国道57号線沿いにはだご汁を提供する店が特に多く、『だご汁街道』とも呼ばれているほどだ。
出汁の中に、サトイモやニンジンなどの野菜を入れ、煮立ったら“だご”の生地を投入。“だご”に火が通ったら、味噌を溶き入れてできあがり。野菜の旨味と味噌の風味の中にある、もちもちとした食感の“だご”は、独特な味わいだ。味噌を使ったものが主流だが、醤油ベースでも作られている。七味唐辛子や柚子こしょう、阿蘇地区で昔からよく作られている『しその実の塩漬け』などの薬味を入れても美味しい。
日々の暮らしの中で食べられ続けてきた素朴で飽きることのない『だご汁』。やはり阿蘇の素朴な郷土料理である『高菜めし』と一緒に味わいたい。
『だご汁』の“だご”の材料である小麦粉について、熊本県農林水産部生産局農産課参事・中村浩一さんにお話をうかがった。
「日本で消費されている小麦はアメリカ産やカナダ産が多く、国内産は約15%です。平成25年度(取材時は推定)ですと、都道府県別生産量の1位は北海道、2位が福岡、3位が佐賀となります。熊本は、九州の中では福岡、佐賀に続いて3位です。ちなみに宮崎や鹿児島では梅雨の訪れが早いので、小麦の生産には向かないので生産量も少ないですね。熊本で生産している小麦の種類は『シロガネコムギ』『チクゴイズミ』『ニシノカオリ』『ミナミノカオリ』です。『ミナミノカオリ』はパン作りに向いており、最近、生産量が増えています。『だご汁』に適した小麦は『チクゴイズミ』ですが、製粉によっても小麦粉の性質は大きく変わりますので、なんとも言えない部分もあります。
また、現在、熊本県産小麦粉が、どれくらい『だご汁』に使われているかについても、明確には答えられません。県内で小麦の生産が多いのは上益城、玉名、菊池、熊本市内です。しかし、『だご汁』は阿蘇地方という小麦の産地ではない場所で、昔からよく食べられてきた郷土料理です。その理由として考えられるのは、特に昔は必要なものは自給自足として家々で作っていたからかもしれません。私たちが把握しているのは、あくまでも商業ベースですから。味噌や醤油も、大豆の産地ではない場所でも作られていたわけですしね」。
ニンジン、シイタケ、サトイモなど阿蘇で収穫される野菜が中心で肉類は入らない。仕上げにはネギがちらされることが多い
小麦粉と水で作る“だご”が主流。水加減、生地のこね方、切り方やのばし方など、様々な種類の“だご”がある
出汁は昆布やいりこをベースにしたものが多い。味の決め手となる味噌には作り手の好みや工夫が反映されている
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