九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

大豆と下準備

作り手が追い求める味わいを出すために吟味した大豆を、気候・気温・湿度などを考慮しながら水に浸しておく

にがりと塩

かつて沖縄ではにがりの代わりに海水で豆腐を固めていた。そのなごりで、現在はにがりとともに塩を加え、塩味をつけている

作り方

水を含みやわらかくなった大豆をすりつぶし、豆乳とおからに分ける生絞りをする。豆乳に熱を加え、にがりと塩を入れ凝固させる

語り 池田食品 瑞慶覧宏至の「ゆし豆腐」

取締役・瑞慶覧宏至さん

昭和58年創業の『池田食品』。現在は3代目・瑞慶覧宏至(ずけらんひろし)さんを中心に沖縄ならではの豆腐づくりをすすめている。
「湯葉やがんもどきなどはあまり作られていませんが、『島豆腐』、『ゆし豆腐』、『あげ豆腐(厚揚げ)』は沖縄の文化です。若い人が食べなくなると、昔から伝わる豆腐文化がすたれてしまいます。そうならないように、私たちはがんばっていかなければと思っています。学校などで、子供たちと一緒に作って食べるといった活動も行なっているんですよ」。

昔から伝わる製法をベースにおきながら、今の時代に合わせた味わいを目指すのが瑞慶覧さんの豆腐づくり。原料から製法にいたるまでをうかがった。
「材料の大豆ですが、『島豆腐』と『ゆし豆腐』には、国産大豆である滋賀県産のタマホマレを使っています。値段はとても高いのですが(笑)糖度がとても高いのです。かつては沖縄在来種の大豆で作っていたようです。地産地消の意味からも、ゆくゆくは大豆を育てるところからやりたいと考えています」。

天候、気温、湿度などにもよるが、大豆は約9時間水に浸される。
「水は塩素を除去したイオン水を使っています」。

滋賀県産の大豆『タマホマレ』をイオン水に漬ける

「水を含んだ大豆を挽き、さらに絞って豆乳とオカラに分けます。一般的な豆腐は、水を含んだ大豆を煮込んだ後に豆乳とオカラを分離する “炊き絞り製法”ですが、沖縄では昔から炊く前に絞る“生絞り製法”なのです。効率は悪いのですが大豆の風味をより強く出す事ができます。沖縄以外では、対馬、奄美の豆腐づくりも似ているようですね。海に近い場所での豆腐づくりは似ているのかもしれません」。

豆乳を『地釜』と呼ばれる大きな鍋に入れ、50分ほど煮込む。「釜の底に少しだけお焦げができるようにしています。大豆のお焦げで風味をつくるといいますか、わざと焦がして風味を出すのです。地釜臭と言われ、地釜でつくる黒糖でも感じられる風味ですね。ただ、下からの火だけだと地釜臭がつきすぎて、今の世代にはあまり好まれません。昔から食べている方は慣れているし好きな味わいのようなのですが…(笑)。そこで、下からガスの火をあてながら、鍋の中の豆乳に蒸気を通して内側からも熱を加えるという方法をとっています」。

生絞りした豆乳にガスの火と蒸気で熱を加える

煮込んだ豆乳ににがりと塩が加えられる。
「塩はきめが細かく、まろやかな甘みを持つ沖縄県産の塩を使っています。にがりも沖縄県産です。先ほどもお話しましたが、昔は豆腐づくりに海水を使っていたので、そのなごりで塩を入れて塩味をつけているのです。昔からの味わいには欠かせないものですね。塩を入れることで保存性が高くなりますし、大豆の甘みが際立つという効果もあります。にがりと塩を入れたら、15分ほど熟成させます」。

にがりと塩を入れて15分ほど熟成させると豆腐が固まってくる

「そして、鍋の中で固まった豆腐をすくいあげたものが『ゆし豆腐』、型に入れてしっかりと水分を取ったものが『島豆腐』になります」。

『島豆腐』は型に入れ、しっかりと水分を取ってつくりあげる

『ゆし豆腐』はビニール袋に入れられ、口の部分を手作業で結んでできあがりだ。

ビニール袋に入れて手作業で口を結んで『ゆし豆腐』のできあがり

出来たての『ゆし豆腐』を試食させていただいた。とろりした食感、ほのかな塩味が大豆の甘みを引き立てている。
「塩味がついていますし、何も足さずに、そのままが一番だと思います。入れるならばネギなどの薬味を少しとかカツオ出汁を少し加えてもいいかもしれません。水気を切って味噌汁に入れたりもするようですが、『ゆし豆腐』の“汁”がもったいないです(笑)。朝ごはんにいいし、お酒を飲んだ次の朝にも最高ですね。昔は街の豆腐屋さんが朝から開いていて、出来たての『ゆし豆腐』を朝から食べる人が多かったようですよ」。

なによりも美味しい出来たてを届けたいと、『池田食品』は移動販売車で、沖縄中南部を中心に直接販売を行なっている。
「私も行商していますよ(笑)。商店にはおろしていません。出来たてに勝るものありませんから、それを私たちの手で届けたいのです」。

“豆腐で沖縄を元気にしたい!!”と瑞慶覧さんは日々奮闘中だ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

大豆と下準備

滋賀県産の国産大豆『タマホマレ』を使う。糖度がとても高く、大豆本来の甘み、旨味、コクをより感じられる大豆だ

にがりと塩

にがりは濃縮海水を原料とした沖縄県産。塩もきめが細かく、塩辛さだけではなくまろやかな甘みを持つ沖縄県産の塩

作り方

イオン水に漬けた大豆を生絞りで豆乳とオカラに分離。豆乳を地釜に入れ下からの火と蒸気で炊いた後、にがりと塩を加えて固める

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池田食品移動販売で届ける出来たての豆腐

昭和58年創業の『池田食品』。現在は3代目・瑞慶覧宏至さんを中心に沖縄ならではの豆腐づくりをすすめ、出来たてを移動販売車で直接販売している。『島豆腐』と『ゆし豆腐』は国産大豆を生絞りし、地釜で煮込んだ後、沖縄県産のにがりと塩を加えて生まれる。特製タレに漬け込み、桜のチップで薫製する『薫製島豆腐』といった商品もある。

『ゆし豆富(大)』280円(税込)(700g)
『国産島豆腐』350円(税込)〜、『薫製島豆腐』540円(税込)、『国産揚げとうふ』、『国産おぼろとうふ』、『きぬごし豆腐』、『濃厚豆乳』などを販売する移動販売車

池田食品

住所 沖縄県中頭郡西原町池田184-3
電話 098-945-0279
URL http://ikedasyokuhin.com/
※記載した内容は2016年11月21日現在のものです。
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