肉厚で香りが高い生しいたけを使う。産地、大きさ、形、色などを参考に、作り手は炭火焼きに合うしいたけを吟味する
しいたけの味付けは基本的に塩のみだが、そのかけ方が作り手によって異なる。焼き上がったらカボスをかけていただく
かさの表側から焼くのか、裏側から焼くのか、作り手が工夫している。かさの裏側に現れる水滴が出てからどうするかがポイント
「1971年に、うちの親父がだんご汁から始めた店なんです。親父も元気にやってますよ(笑)」と店長の松本宗三さん。看板、のれんなど店内のあちこちで見る“四角い輪郭に鼻ひげがついた愛嬌のあるイラスト”はお父様の似顔絵だ。メニューは徐々に増えていき、今では、関アジ・関サバ、とり天、琉球、きらすまめし…大分の郷土料理がほとんどそろう店となった。
『焼きしいたけ』も、大分を代表する大切な一品だという松本さん。シンプルな料理だけに、素材選びが重要となる。
「煮付けなどにもしますが、大分では生のしいたけを焼いて食べることが多いですね。てっとり早いし素材の味がよくわかりますしね。実物を見て、その日に一番いいものを使っています。特に、大きさ、形、乾きかたというか水分量の具合いを見ていますね。べたっとしたものとからっとしたものがあって見ればすぐにわかりますよ。雨の日に発生したしいたけは、身がやわらかすぎて、焼いて食べるには、少し水分が多すぎるようです。晴れが続いた時に発生した『日和子(ひよりこ)』が美味しいですね。今日は、臼杵のしいたけを焼きます」。
いしづきを落とし、かさの表部分には、中まで火が通りやすいように切れ目を入れる。ヒダがあるかさの裏側に塩をして酒を少しふって焼く。
「大きなしいたけは半分に切って焼くこともありますね。始めはかさの表側から焼いていきます。時間をかけてゆっくりと。包丁で入れた切れ目のところが開いてくるといい香りが漂ってきます。そうしたらひっくり返します。がっつりと火を通さないほうが美味しいですね。厚みも違いますから、しいたけに合わせて焼き加減も微妙に調整しています。特に秋から冬にかけてのしいたけは美味しいですね。椎茸のジューシーなエキスが詰まっている感じかな(笑)」。
味付けは塩だけなので、椎茸の旨味がより伝わってくる。カボスを絞ればさらにその味わいが引き立つ。
店の外にも店内の壁にもレトロな看板がぎっしり。BGMはジャズで、店内には昭和の雰囲気が漂う。
「懐かしいと感じていただけたらうれしいですね。地元の方にもよく来ていただいていますし、“大分の味が一度に楽しめる”ということで地元の方が県外から来た方を連れておみえになることも多いですね。ですから、私たちは変わらない“大分の味”を作り続けていきたいと思っています」。
大きさ、形、しいたけの持つ水分量などの具合などを吟味し、その日に一番いいものを使う
ヒダがあるかさの裏側に塩をして酒を少しふって焼く。焼けた後にカボスの絞り汁をかけていただく
かさの表側を焼き、その後裏側を焼く。じっくりと焼くが焼きすぎないことがポイントだ
店の外壁にも店内の壁にもレトロな看板がぎっしり。ジャズが流れる落ち着いた雰囲気の中、関アジ・関サバ、とり天、琉球など大分県を代表する郷土料理を安く美味しく味わうことができる。単品でも楽しめるが、多くの種類を味わいたいなら、『郷土料理コース』1,300円~5,250円がお得。地方の方はもちろん、旅行客や大分に出張で来た会社員でにぎわう。