主役である昆布に加えて、豚肉は欠かせない。その他、コンニャク、チキアギ(カマボコ)、ニンジン、切り干し大根などがよく使われる
基本的には、昆布出汁、塩、醤油などで薄味に仕上げる。昆布そのものから出る旨味も味付けの一部となっているようだ
すべての材料を一度炒めた後、塩や醤油などで味を整えた出汁を加えて、水気がなくなるまで炒め煮していくのが基本的な作り方
「毎日来る方もいらっしゃるんですよ。7時半の方とか、8時の方とか。お見えにならないと心配になったりします(笑)。台風の時にもいらっしゃって、『なんでこんな日も店をやってるの?』『あなたもなんで台風なのに来たの?』みたいな会話になったこともあります(笑)」と店主の宇栄原和美さん。
『古都里』はそれほど地元の方々に愛されている店。その秘密はカウンターにずらりと並べられた大皿料理の数々だ。常時15〜16種類の素朴な飾らない料理で、一人ならば量を調節してくれるので一品300円前後から楽しめる。野菜を使った健康的なメニューが多いのも特徴だ。
大皿料理は季節によって変わっていくが、『ラフテー』など、常に用意されている定番料理の一つが『クーブイリチー』。
「県外のお客さんで『沖縄のものを食べたい』という方には、初めに『クーブイリチー』と『パパイヤイリチー』をおすすめしますね」。
大皿からよそっていただいた『クーブイリチー』は、昆布の歯応えと中まで染み込んでいる醤油風味の味が旨い。一緒に入っているコンニャクもよく味が染みているし、豚肉にもしっかりと味がついている。
「肉は豚の三枚肉で、ラフテーの脂身が少ない部分を切ったものなんです。ラフテーは、三枚肉を泡盛1、醤油1、砂糖1の割合でつくった煮汁で煮込んだもの。昔ながらの味で、歯応えがあるんです」。
ラフテーとして味付けされた三枚肉だから、深い味わいなのだ。
旨さの秘密から作り方までを教えていただいた。
「刻み昆布を水で戻した後、よく洗ってぬめりをとります。鍋に入れ、水と泡盛を加えて火をつけます。
沸騰して吹きこぼれそうになったら、さらにサラダ油を加えて30分ほど煮込みます。泡盛を入れると味がよくなるのと、昆布がやわらかくなりますね。この30分ほど煮込んだものをポン酢で食べても美味しいんですよ」。
煮込んでいる間に、昆布以外の具材を準備する。
「コンニャクは5mm幅くらいに切ってから一度茹でておきます。ラフテーとして味付けした三枚肉も5mm幅くらいに切っておきます」。
昆布を煮始めて30分、昆布がやわらかくなったら、味付けだ。
「昆布の入った鍋の中に、みりんと醤油などを入れて味付けします。色で大体の味がわかるけど、心配だから味見します(笑)。これから煮詰めていくわけだから、この段階では薄めの味ですね。
豚肉を入れて、コンニャクを入れて、アルミホイルの落としぶたをしてゆっくりと火を通します。しばらくしたら火をとめて、後は余熱で仕上げます。冷めたら保存容器に入れて冷やしておきます。すぐに食べるのではなくて、作りおいて味が染み込んだほうが美味しいですからね」。
『クーブイリチー』以外にも、こちらでは昆布を使った料理は多い。
「昆布巻きとか、結び昆布とかいろいろな食べ方がありますね。ソーキ汁に結び昆布を入れたりもしますね。かつて、琉球を通して日本から中国に昆布を献上・輸出していました。中国には送れないB級品もあって、それを琉球で食べるようになったのでしょうね。そのため、昆布を使った料理が多いのだと思います。『クーブイリチー』もそうですが、昆布を使った料理は、身近にあったものをうまく利用した料理だと思いますよ」。
宇栄原さんも『クーブイリチー』をよく食べられるのだろうか?
「お祝いとか法事の席には欠かせないし、よく食べますよ。子どもの頃は昆布がとろけるような『クーブイリチー』が好きで、今は歯応えがある昆布の『クーブイリチー』が好きかな。お弁当にもよく入っていて、ごはんのおかずにもなるし、酒の肴にもなりますね。初めて食べた方も、気に入ってくれますよ」。
『クーブイリチー』は、沖縄の生活に根ざしている料理なのだ。
昆布、豚の三枚肉、コンニャク。三枚肉はラフテーの脂身が少ない部分を使っているので、しっかりと味がついている
調味料としてはみりんと醤油だけだが、三枚肉そのものに染み込んでいるラフテーの味、昆布そのものの味も加わる
まず水で戻した昆布をやわらかくなるまで煮て、味付けした後、あらかじめ茹でたコンニャクと三枚肉を加えて煮込む
カウンターには琉球料理を中心とした大皿料理がずらり。「初めは3皿だったが、お客さんから『他には?』とか『この前のは?』とか言われて、30年でだんだん増えました(笑)」とは店長の宇栄原和美さん。どれも愛情こめた手づくりで、『クーブイリチー』もラフテーの脂身の少ない部分を入れるなど、時間と手間をかけて作られる。