スープは牛骨と鶏ガラをベースにしたもの。各店が時間と手間をかけて作る深みのあるスープだ
豚の頭肉、エビ、タマネギ、ニンジン、キクラゲ、キャベツ、すりおろし、またはみじん切りにしたショウガ
具材をラードで炒めた後、スープを入れて塩とミリンで味付け。うどん麺を入れて一煮立ちさせる
国道34号線沿いに建ち、裏手にはJR佐世保線が走る『家族庵』は1985年オープン。現在は2代目店主・鈴山謙介(すずやま けんすけ)さんと奥様・明美(あけみ)さんがお店を切り盛りされている。
「父が、家族みなさんで楽しんでほしいからとこの名前をつけたようです。家族経営というのもありますが(笑)」と鈴山さん。人気の『おじやうどん』をはじめとしたうどん類、定食類、月替りの御膳などが気軽に食べられるお店だ。
『たろめん』は大町町で『たろめん』が復活した2010年から提供されている。
「食べたことのない方に、『どんな味ですか?』と聞かれたら…食べてみたらわかりますと答えてます(笑)。見た目はチャンポンなのですが、他にはない味なんですよ。うどん麺を使い、スープはあっさりしたショウガ風味という感じでしょうか。町内で『たろめん』を提供している店が何軒かあります。材料も基本的な作り方も同じなのですが、やはり店ごとに味は違いますね」。
鈴山さんの『たろめん』作りはスープ作りから始まる。
「スープの材料は牛骨と鶏ガラ。寸胴鍋に入れてじっくりと12時間以上かけて炊き、スープを取ります。牛骨を使うのは『たろめん』の大きな特徴ですね」。
チャンポンのスープは豚骨スープと鶏ガラスープを合わせたもの。『たろめん』はチャンポンとは異なる味わいをもつ麺料理なのだ。
『たろめん』の注文が入ると、使いこまれた中華鍋を火にかけ、ラードを入れ、サイコロ状にカットした豚の頭肉(かしらにく)を炒める。「『たろめん』の炒め油にはラードを使うんです。豚肉に香ばしさとカリカリ感を出すためですね」。
続いて、タマネギ、ニンジン、キクラゲ、ショウガ、エビを入れてひと炒め。
さらにキャベツを入れて炒める。
そこにスープを加えて塩とミリン少々で味つけ。
あらかじめゆでておいた乾麺のうどんを入れて一煮立ちさせればできあがりだ。
しっかりとしていながら、さっぱりとした味わい。牛骨スープの深みと絶妙なショウガの風味はやはり“他にはない”ものだ。牛、豚、鶏、魚介(エビ)、野菜の旨味が重なったぜいたくな味わいともいえる。
「ショウガは、最初の頃はすりおろしていたものを使っていたんですが、かんだときにショウガの風味がふわりと広がるのがいいかなと思い、今は細かなみじん切りのものを使っています。食欲がない時とか、二日酔いの時にも食べやすくていいですね。僕もよく二日酔いになるので…よく食べてます(笑)。手軽に食べられて野菜がたくさん摂れるし、スタミナもつく。だから炭鉱マンに愛されていたんでしょうね。『たろめん』は炭鉱マンのソウルフードだったんです」。
現在、大町町で食べられる『たろめん』の元となっているのは、2000年に閉店した『たろめん食堂』の味。鈴山さんも一度だけ『たろめん食堂』の『たろめん』を食べたことがあるのだそうだ。「炭鉱マンでいつもにぎわっているお店でした。『たろめん』の具にポン酢をかけてつまみにしたりして、仕事が終わった炭鉱マンは昼間から飲みながら食べてましたね。なので、“大人の店”という感じで、子どもだけでは行けませんでしたね(笑)」。
2010年に復活した『たろめん』。その広がりをどのように感じられているのだろうか?「『たろめん』を注文される方は、地元の方と観光の方でちょうど半々ぐらい。町の方にも愛され、町外の方にも少しずつですが知っていだたいているようでうれしいですね。もっとたくさんの方に知っていただけるようにがんばります!」。
スープの素は牛骨と鶏ガラ。寸胴鍋に入れてじっくりと12時間以上かけて炊きあげ、スープを作る
豚の頭肉、エビ、タマネギ、ニンジン、キクラゲ、キャベツ、ショウガ。ショウガは細かなみじん切りのものを使う
ラードで具材を炒めた後、スープを加えて塩とミリンで味付け。ゆでておいたうどん麺を加えて一煮立ちさせる
国道34号線沿いに建つ『家族庵』は「家族みなさんで楽しんでほしい」という想いのもと、1985年にオープン。鍋焼きうどんの中にごはんが入った『おじやうどん』をはじめとした麺類や定食類などが気軽に食べられる食事処だ。2代目店主・鈴山謙介さんが作る『たろめん』は、みじん切りにしたショウガがふわりと香り、さっぱりとしていながらしっかりとした味わいだ。