角切りにされる具材は、大根、人参、さつまいも、豚肉、マグロなど。最後に、すりおろしたサツマイモを入れる
昆布出汁、鰹出汁などを使う。煮物料理なので二番出汁を使うことも多いが、一番出汁を使うこともある
調味料は酒、醤油、ミリンなどとてもシンプル。さつまいもの甘味と、素材そのものが持つ旨味を引き出したいからだ
建物は築120年。『和食 よひら』ではしっとりとした雰囲気の中で丁寧に作られた和食をゆっくりと楽しめる。
「手作りで、素直に真直ぐに。嘘偽りのない料理を作っています」という料理長・安藤豊彦さん。長崎伝統の卓袱料理や南蛮料理をベースにした月替りの会席料理で、長崎の風情と四季の移ろいを表現している。
『ヒカド』も、安藤さんが大切にしている長崎ならではの料理。
「『ヒカド』は秋にしか出さない卓袱料理の一品です。『ヒカド』にはサツマイモとマグロが入ります。秋はサツマイモが美味しい時期ですし、マグロも脂がのってきますからね。長崎仕立てのスープという位置づけになります。ごはんと一緒に出しますよ」。
素材は、大根、人参、コンニャク、マグロ、サツマイモ、キヌサヤ。キヌサヤ以外は、1.5cm角ほどの大きさにそろえて切っていく。キヌサヤも1.5cm程度の長さに切られる。
「『ヒカド』はポルトガル語で“細かく刻んだ”を意味する“ピカド”が語源ですからね。きれいに切ることが大切です。使う素材の大きさをそろえることで、口の中に入れた時に違和感なく食べることができますね」。
刻まれた大根、ニンジン、キヌサヤ、コンニャクは下ゆでしておく。マグロは、軽く湯に通してすぐに冷水につけ、ザルにあける。
そして、キヌサヤとマグロ以外の材料を出汁に入れて煮込む。素材の味がよりしっかりと伝わるようにと、出汁は鰹の二番出汁だ。
煮込んでいる間に、おろし金で角切りにしたものとは別のサツマイモをおろしておく。
「サツマイモをおろして使う料理はあまりありませんね。宮崎県串間産の“備中いも”を使っていますが、特に秋はとても甘いサツマイモですね」。
そして、薄口醤油で味付けし、全体の8割くらい火が通ったところでマグロを入れる。
「マグロは刺身でも食べるものです。火をいれすぎるとぱさつきますから、コツはマグロにあまり火を通しすぎないようにすることですね。ヒカドに入れるマグロの身には多少スジが入っているほうがいいと思います。そこはゼラチン質で、熱が加わるとやわらかくなりますから」。
鍋の中で踊る角切りのサツマイモの色がきれいな黄色になってきたところで、おろしたサツマイモを加える。
「火をいったん止めてからおろしたサツマイモを入れてまぜ、もう1回火をつけます。こうするとダマができにくいんですよ」。
とろみがついたら、キヌサヤをちらしてできあがり。使う調味料は薄口醤油だけというとてもシンプルな味付けだが、その分、素材の味とサツマイモの甘味が引き立っている。
「とろみをつけるだけなら、デンプンでもよかったのかもしれませんが、栄養を取るために、栄養価の高いサツマイモを使ったのではないかとも思いますね」。
身体もあたたまり、とろみ感も絶妙。一口いただけば、先人たちの知恵に驚くばかりだ。
大根、人参、コンニャク、マグロ、サツマイモ、キヌサヤ。キヌサヤ以外は、1.5cm角ほどの大きさにそろえて切る
素材の味がよりしっかりと伝わるようにするため、素材を煮こむ出汁には、鰹と昆布の二番出汁を使う
使う調味料は薄口醤油だけというとてもシンプルな味付け。その分、それぞれの素材の味とサツマイモの甘味が引き立っている。
建物にも中の空間にも風情があり、ゆったりとした時間を過ごすことができる。料理長・安藤豊彦さんが作るのは、長崎伝統の卓袱料理や南蛮料理をベースにした月替りの会席料理。その時期に旬を迎えている長崎の素材を使った、手間ひまかけた料理を食べられる。夜の会席コース5250円~、昼は『籠盛り膳』1890円など。
住所 | 長崎市船大工町5-7 |
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電話 | 095-824-3450 |
営業 | 11:30~15:00(金・土曜は~14:00)/17:00~22:30 |
休み | なし |
席 | 140席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | https://www.nagasaki-wasyoku-yohira.com/ |