ヤギの骨付き肉を水に入れてじっくり炊いてスープを作る。初めに湯通ししたり丹念にアクを取り除くことで食べやすくする
味付けは主に塩。醤油や味噌を使う場合もある。スープを作る段階では味付けはせず、注文後に味付けして提供することが多い
添える具材はネギやニラなどでいたってシンプル。ヤギの肉や骨から生まれる独特の香りや旨味がストレートに伝わってくる
メニューには、『もものひらき』や焼鳥といった鶏肉を使った料理や、『鶏飯』『油ぞうめん』といった島料理(奄美の郷土料理)が並ぶ。もちろん『やぎ汁』もメニューに書かれているが、その横には他のメニューにはない“スタミナ”という文字が置かれている。
「『やぎ汁』はスタミナ料理。疲れた時はやぎ汁をごはんと一緒に食べるのが一番です。『今日は疲れたからやぎ汁でも食べよう』という人が多いんですよ。夏に疲れた時や、風邪をひいた時、風邪の予防で食べる方も多いみたいですね。夏も冬も年中よく出ますよ(笑)。焼肉は“元気をつけよう”という感じですが、本当に疲れていて元気がない時に食べるのが『やぎ汁』かな(笑)」。
『やぎ汁』のことを語ってくださるのは店主・手島慎二さん。作り方も教えていただいた。
「うちでは島で生まれて島で育った『島山羊』を使っています。自然に生えている薬草を食べているので、よくイメージされているような独特の香りは少ないんです。骨も肉も内臓もすべて使うのですが、下ゆでしてから煮込む二度炊きをやっています。煮込む時はニンニクとゴボウを入れますし、アクを丹念にすくっています。すべてはあっさりしたクセのない味にするためですね。それから3時間ほど煮込んでいきます。しっかり煮込まないと美味しくならないですね。味付けはほのかな甘味を持つ奄美の自然塩と醤油だけです。味噌を使う作り方もありますが、私はシンプルな味付けが美味しいと思っています。ヤギ1頭で80杯分くらいできるかな」。
「作っておいたスープに豆腐、ニラ、キャベツを入れて煮立て、最後にネギと一味唐辛子をちらしてできあがりです」。
やや白濁したスープは独特の旨味を持ちつつあっさり食べやすい。具材も多いので食べにくさは感じない。
「昔ながらの『やぎ汁』には食べにくいものもありますが、クセを抑える料理法ならば美味しく食べられます。身体が大きいヤギのほうが味はよく出ますね。けれども、メスのほうが美味しくて、オスは匂いがちょっときつかったりするんです(笑)。旧暦の6月頃、新葉が出てそれをヤギが食べている頃は、『やぎ汁』が美味しくなりますね」。
手島さんも、やはり疲れた時は『やぎ汁』をよく食べるそうだ。
「『やぎ汁』をよく食べてますから、元気です(笑)。鶏のスープや魚を入れた味噌汁もよく食べますね。医者がいない頃は様々なスープに薬の役目があったのかもしれません。『やぎ汁』は本当に好きな方は家でも作りますし、運動会やなにかの集まりなど集落ごとの行事の時に大きな鍋で作られています。奄美地方の大切な島料理の一つですね」。
飾らない盛付けの器の中にある力強い味わい。島の歴史と知恵が詰まった一杯だ。
島で生まれ島で育った『島山羊』の骨、肉、内臓を下ゆでしてから、ニンニクとゴボウを加えて3時間ほど煮込む
煮込んでできあがったスープに奄美の自然塩と醤油を加えて味付けする。自然塩はほのかな甘味を持ち、やわらかな味わいをつくる
スープに豆腐、ニラ、キャベツを入れて煮立て、最後にネギと一味唐辛子をちらす。具材の旨味もスープの味を高める
看板料理の『もものひらき』や焼鳥といった鷄肉を使った料理に加えて、スープが自慢の『鶏飯』など奄美の郷土料理を味わえる。ヤギの肉や内臓をゴボウやニンニクと一緒にじっくり煮込み、塩と醤油だけで味付けする『やぎ汁』はあっさりでクセのない味わい。豆腐、ニラ、キャベツなどの具材も入り食べやすい。
住所 | 鹿児島県奄美市名瀬伊津部町12-6 |
---|---|
電話 | 0997-53-6515 |
営業 | 11:00〜23:00 |
休み | なし |
席 | 56席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.torishin.co.jp/ |