九州の味とともに 秋

この料理の"味のキーワード"

素材

高森の田楽には、つるの子いもと豆腐は必ず入る。その他は、コンニャク、季節の野菜、ヤマメなど家や店で異なる

味噌

基本は、仕込んでから3年熟成させる『三年味噌』。山椒や柚子を入れたり甘さを変えたりと、作り手が一番工夫するところだ

焼き方

高森の店では、囲炉裏の炭火で焼くことが多い。まず素材だけを焼き、表面が色づいたら味噌を塗って焼き、香ばしさを出す

語り 高森 田楽の里 工藤八重子の「田楽」

工藤八重子さん

オープンは1979年。元は庄屋だったという築200年の茅葺き屋根の民家を移築した建物には落ち着いた空気が流れている。その中で囲炉裏を囲んで田楽をいただけば、古き良き日本の情緒を感じることもできる。
「初めて囲炉裏を体験する人も多いみたいですが、みなさん楽しそうですね。外国の方も楽しくしてくださってるみたいですよ。何を話しているのかはわかりませんが(笑)」。
女将の工藤八重子さんはお客さんの笑顔に触れつつ、田楽の楽しみ方を伝えている。
「両面に軽く焦げ目がついてきつね色になるくらいあぶってから、味噌を塗って焼きます。串をひっくり返したり味噌を塗ったりするのをお手伝いもしますね」。

炭火に近いところにさして焼く

『田楽定食』に付く田楽の串は、つるの子いも、ヤマメ、豆腐、沢ガニ・ナス・シシトウが1本の串にささったもの、コンニャクの5串。
「元々、田楽の中心はつるの子いもです。里芋の仲間で、つるの頭のような形をしているからそう呼ばれています。火山灰のやせた土地でしかつくることができないんですよ。他の場所で作ると、大きくなってしまうようです。近くの含蔵寺(がんぞうじ)では、12月8日に、つるの子いもを炭火で焼いてみんなで食べるという習わしがありますね」。

表面が焼けたら、味噌をたっぷりと塗って焼き上げる

塩だけで焼いていただくヤマメ以外は、自慢の味噌をつけていただく。こちらで用意されている味噌は1種類ではなく、田楽の素材毎におすすめの味噌がある。
「つるの子いもは季節の味噌、豆腐は柚子味噌、ナス・カニ・シシトウ(季節によって変わる。春はタラの芽が使われることも)は山椒味噌でどうぞ。出汁でしっかりとゆでたコンニャクは鶏味噌を添えていますので、焼かずにそのままお召し上がりください」。
いずれも工夫を凝らし手間をかけて作られる味噌だ。
「季節の味噌は、今日は大葉の入った味噌ですが、季節毎に新茶、よもぎの味噌などがあります。柚子味噌は、柚子の皮をすりつぶしたものを米味噌に加えて作ります。山椒味噌は山椒の実をすり鉢ですりつぶして、大豆と麦のブレンド味噌に混ぜます。鶏みそは地鶏をミンチにして麦味噌と合わせ、砂糖、みりんなどを入れて炊きあげます。4種類の味噌の味も楽しんでください」。

自分で焼くのもいいが、やっていただいたほうが美味しくなるような気も…

焦げ目が付いた後に味噌がたっぷりと塗られ、再び炭火のそばに。だんだんといい香りがしてくる。
「田楽を食べる順番は、焼ける順番でもありますが、いも、豆腐、ナス、ヤマメの順番でどうぞ。コンニャクはそのままで良いですからいつでもどうぞ。沢ガニはカリッと焼けますから丸ごと食べられますよ」。

炭火でじっくりと焼く牛肉や地鶏の耕焼(こうやき)も旨い

この地方にしかないというつるの子いもはもちろん、どの素材も味噌も高森の自然から生まれたもの。田楽以外の生揚げ、だご汁、きびめしも、身体にしみわたる味だ。
「夏から秋口までのナスビは肥後ムラサキといって、生でも食べられるものです。ヤマメは生簀の中でさっきまで泳いでいたもので、生簀の水は阿蘇の豊かな地下水ですよ。豆腐もコンニャクも阿蘇の美味しい水で作られています。沢ガニは取りにいったりもするんですよ。ちょろちょろと逃げるのをザルですくうんです。地元で採れた自然のものを、この空間の中で美味しく提供したいと、いつも思っています」。

10~11月はつるの子いもの収穫の時期。
「通常は、皮をむいて生の状態で冷凍したものを使っているのですが、10~11月は生のつるの子いもをお出ししています。そのことを知っていて、毎年その時期にだけ来る方もいらっしゃいますね」。
田楽の追加メニューではやはり一番人気のつるの子いも。秋の穫れたてはどんな味になるのかも興味深い。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

素材

つるの子いも、ヤマメ、豆腐、沢ガニ・ナス・シシトウが1本の串にささったもの、出汁でじっくり煮込んだコンニャクの5串

味噌

季節毎に新茶・よもぎ・大葉などを使う季節の味噌、柚子味噌、山椒味噌、地鶏をミンチにして麦味噌と合わせた鶏味噌の4種類がある

焼き方

初めから炭火に近いところに串を刺して両面をこんがり焼く。味噌を塗った後も、火に近いところで焦げないように焼き上げていく

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高森 田楽の里 地元の素材を4種類の味噌と一緒に

築200年を越えた茅葺き屋根の下で、つるの子いもや豆腐、コンニャクなどが付く田楽料理を中心に高森の味を食べられる。田楽に使う自慢の味噌は、季節の味噌、柚子味噌、山椒味噌、鶏味噌の4種類。素材の味に加えて味噌の味も食べ比べられる。囲炉裏の炭火で焼く阿蘇の赤牛や紅う地鶏(あこうぢどり)、好きな味噌を塗ってこんがり焼く『焼きおにぎり』も楽しみたい。

『田楽定食』1790円。田楽5種、きび飯、だご汁、付け出し、生揚げ、漬け物が付く。田楽単品は1300円。田楽の追加はヤマメ1本450円、その他は1本250円
阿蘇の赤牛、阿蘇紅う地鶏、串にささっているのは牛小枝。
それぞれ、だご汁やきび飯が付くセットがある。『阿蘇の赤牛耕焼(こうやき)定食』2500円。『地鶏定食』1690円、『小枝定食』1890円。
焼き目が香ばしい『焼きおにぎり』。定食のごはんは焼きおにぎり1ケに変更可能。
※焼きおにぎりが付く平日限定のメニュー
『田楽みそ焼きおにぎり定食』1390円、『地鶏焼きおにぎり定食』1390円
床と同じ高さの囲炉裏と、テーブルに組み込まれて少し高さがある囲炉裏の2種類がある
緑の中に建つ風情のある建物

高森 田楽の里

住所 阿蘇郡高森町高森2685-2
電話 0967-62-1899
営業 3月~11月は10:00~OS19:30、12~2月は10:00~OS19:00
休み なし
160席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.dengakunosato.com
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